「前歯が出ている」「前歯を引っ込めたい」という希望があっても、歯列矯正の費用は高価です。
そのため、「お金をかけずに、何とか治したい」「自力で、治すことはできないだろうか」と、自力矯正を考える方が少なくありません。
実際、小学校低学年までの上顎前突症については、自力で改善することが期待できます。しかし、それ以外については、自力矯正など考えたりせず、迷わず矯正歯科に治療相談に行くべきです。
なぜなら、むやみに自力矯正に手をだすと、後悔する結果になる可能性が高いからです。実際の歯列矯正より、むしろ自力矯正の代償の方が高く付くというケースも考えられるからです。
そのため、ここでは自力矯可能な子供の上顎前突については説明します。
これを読むことによって、上顎前突の自力矯正について有効な方法を知ることができるだけでなく、無謀な自力矯正を試みようと考えなくなるはずです。
自力矯正で上顎前突は治せる?
上顎前突を、自力で改善することは可能です。
ただし、「すべての上顎前突ではなく、小学校低学年までの上顎前突症については、自力矯正が可能である」と限定する必要があります。
なぜなら、永久歯が生えそろった状態の歯を動かすことは困難だからです。また、非常に危険でもあるからです。
自力矯正できる上顎前突症のタイプ
小学校低学年までの上顎前突は、自力で改善することが可能です。
たとえば、指しゃぶりや口呼吸など上顎前突症をつくる原因がはっきりしているケースです。
このようなケースでは、歯並びに悪影響を及ぼす原因を取り除くことで、自力矯正することが可能です。
なぜなら、この時期の口の中の状態は、自力矯正にとって非常に有利に働くからです。
口で呼吸する習慣、指しゃぶり、舌を突出する癖、口唇を噛む癖、爪を噛む癖、おしゃぶり、など
小学校低学年までの上顎前突は、自力矯正できる理由
歯根が短い
小学校低学年における前歯の歯根は、成長中の段階であり、極端に短いことが特徴です。そのため、ほんのわずかなチカラを加えるだけで、前歯を動かすことができます。
つまり、舌から加わる異常なチカラを取り除いたり、口唇から適切なチカラが加わるようにしたりするだけで、前歯を適切な位置に誘導することができるのです。
隙間が多くある
小学校低学年の口の中は、隙間がたくさんあることが特徴です。
なぜなら、永久歯に交換する途中段階だからです。 そのため、その隙間を利用して、前歯を引っ込めることができます。
場合によっては、舌から加わる異常なチカラを取り除いたり、口唇から適切なチカラが加わるようにしたりするだけで、前歯を適切な位置に誘導することが可能です。
自力矯正
上顎前突症の原因になる癖を取り除く
指しゃぶり、爪噛みなどの癖は、小学校低学年のうちに卒業すべきです。
その際、「指しゃぶりを我慢する」「爪噛みを堪える」ことを意識するだけで、癖が改善するケースが多くあります。
指にバンドエイドを貼ったり、包帯を巻いたりするとさらに効果的です。女の子の場合、爪にネイルをしてあげることも有効なようです。ぜひ、試してください。
鼻呼吸を意識する
鼻呼吸も意識的に行うことで、鼻の通りが良くなることが分かっています。
ぽかんと開いた口を注意するのではなく、鼻から息を吸い込む動作を子供と一緒に練習するようにしましょう。
もちろん、鼻に疾患がある場合は、意識するだけで改善することはできません。その際は、耳鼻咽喉科にいって治療を行うようにしてください。
舌や口唇の筋機能訓練
舌や口唇の正しい動きには、筋機能訓練が必須です。
できれば、機能訓練は専門家の指導のもと行うのが理想的です。しかし、簡単なものは家庭でもできるので、試してみてもよいでしょう。
自力で上顎前突を治す際の注意点
厳しくなりすぎない
保護者は神経質になりすぎないことが大切です。なぜなら、神経質に接すると、子供は新たなチック症を発症してしまう心配があるからです。
チック症とは、幼児期から学童期にみられることが多い、心因性の癖のことです。顔をしかめたり、肩上げしたりなどが挙げられます。
そのため、指しゃぶりや爪噛みの癖をとる際は、このようなチック発症しないように気をつけながら、子供と接することが大切なのです。
強いチカラを歯に加えてはいけない
小学校低学年における前歯の歯根は、成長中の段階であり、極端に短いことが特徴です。
そのため、指で押したり、装置を自作したりして、前歯に強いチカラを加えることは非常に危険ですなぜなら、歯を脱臼したり、歯根の成長を止めてしまったりする心配があるからです。
市販の矯正装置を試すのは危険
市販のマウスピース型矯正装置を用いて、上顎前突を治そうとする行為は非常に危険です。
なぜなら、マウスピース型矯正装置を使用できるのは、噛むチカラが強いタイプの子供だけだからです。
日本人に多いとされる噛むチカラが弱いタイプに用いた場合、前歯の噛み合わない噛み合わせ、つまり開咬症の噛み合わせになる心配があるからです。
現在、ディスカウントストアやインターネットストアで、海外製のマウスピース型矯正装置を簡単に購入することができます。
そのため、今後、「市販の矯正装置を用いて、自力矯正に成功した」というブログ投稿も増えてくるはずです。
しかし、このような情報を鵜呑みにすることは非常に危険です。マウスピース型矯正装置を使用して、安易に自力矯正してはいけないのです。
永久歯の自力矯正できない理由
歯が動きにくい
永久歯の自力矯正できない理由として、歯が動きにくいことが挙げられます。なぜなら、前歯の歯根はすでに成長し、非常に長くなっているからです。
また、永久歯が生えそろった隙間のない歯並びでは、個々の歯を動かすことは非常に困難です。そのため、上顎前突症を自力矯正しようとする場合、全部の歯を動かして治す必要があるのです。
歯にチカラを加え続けることが難しい
永久歯の自力矯正できない2つ目の理由として、歯に適切なチカラを加えることが難しいということが挙げられます。
実際に歯を動かすためには、100グラム以下のチカラを、1日10〜12時間以上加え続ける必要があります。
実際に、指で押したり、口唇で押さえたりするくらいでは前歯を引っ込めることはできないのです。
まとめ
上顎前突症を、安易に自力で治そうとすることは非常に危険です。
なぜなら、装置を自作したり、前歯を指で強く押したりすると、前歯を壊したりするなど深刻なトラブルを招く心配があるからです。
ただし、舌や口唇のトレーニングについては、比較的安全に行うことができます。適切に行えば、前歯に深刻なトラブルを招いたり、上顎前突を悪化させたりする心配がないからです。
よって、上顎前突の自力改善を行う場合はかならず、舌や口唇のトレーニングだけにとどめるようにして下さい。