「歯並びの、この部分だけが気になる」「ここだけ治すだけでも、十分満足なのに・・・」
気になる部分の歯並びが、ほんのわずかな異常と思われる場合、「できれば、お金をかけずに治したい」「なんとか、自力で治す方法はないのだろうか」と、考えるヒトも少ないないのではないでしょうか?
実際に、ネットを検索してみると、自力で歯列矯正した人のブログや動画を見つけることができます。歯型をとる材料を手に入れたり、3Dスキャナーや3Dプリンターなどの機械をいじったりすることが簡単にできるようになったからです。
しかし、誰でも自力矯正ができる、もしくは安全にできるとは限らないので注意が必要です。むしろ、安易に自力矯正することは、危険である可能性が非常に高いのです。
ここでは、動画投稿で話題になった自力矯正と、自力矯正の危険性について説明します。
これを読むことによって、安易に自力矯正を試みる危険性について理解できるようになるはずです。
自作した矯正装置で歯並びを治した大学生
海外の大学生が投稿したある動画に、世界がざわめきました。なぜなら、彼の動画が非常にショッキングだったからです。
その動画は、大学にある精密な3Dプリンターを用いて、自力で歯列矯正するという内容のものでした。しかも、わずか数千円(およそ60ドル)しかかからなかったというのです。
そして、この大学生は、以下の手順を12回繰り返すことによって、わずか16週間で自力矯正を完了しています。
ステップ①:自分の歯型をとる。
ステップ②:歯型をスキャンする。
ステップ③:スキャンしたデータに、歯並びを改善する修正をくわえる。
ステップ④:3Dプリンターで、模型を複製する。
ステップ⑤:複製した模型を用いて、マウスピースを作製する。
ステップ⑥:作製したマウスピースを、1〜2週間ほど使用する。
ステップ⑦:ステップ③からステップ⑥の行程を、繰り返す。
動画を見て、歯科医療関係者が感じたこと
歯科医療関係者である私たちも、この大学生の動画を見て、非常に衝撃を受けました。なぜなら、比較的ひどいデコボコの歯並びが、キレイに治っていたからです。
それと同時に、「日本人でも、自力矯正することがかのうだろうか?」と心配するようになりました。
なぜなら、日本人などモンゴロイド系と呼ばれる人種の歯列矯正は、西洋人などコーカソイド系人種の治療と比較して、非常に難しいことが分かっているからです。
そのため、日本人が安易に自力矯正を試みることは、非常に危ないと言えるのです。
日本人にとって自力矯正が危険であると考える理由
日本人の骨格的は貧弱
日本人の顎(あご)の骨格は、西洋人と比較して非常に華奢です。つまり、噛むチカラが弱いタイプの骨格が多いということです。
このことは、歯列矯正において非常に不利に働きます。なぜなら、不適切に歯列矯正を行うと、前歯を噛み合わせることができない開咬症(かいこうしょう)の格好になりやすいからです。
日本人の歯根は短い
日本人の歯は、西洋人の歯と比較して歯根が短いのが特徴です。中には、前歯の歯根が極端に短いケースも少なくありません。
そのため、自力矯正で安易に歯にチカラを加えと、歯根を壊してしまったり、歯が抜け落ちてしまったりする危険があるのです。
日本人の口には奥行きがない
日本人のあご骨は、西洋人と比較して横幅が広く、奥行きがないのが特徴です。そのため、動画の大学生ように、あご骨を横方向に拡大して歯を並べることは危険であるといえます。
あご骨を広げてガタガタ歯並びを並べる際には、精密検査を行って、安全に拡大できる限度を必ず測定して治療を行う必要があるのです。
日本人には重症ガタガタ歯並びが多い
日本人のデコボコ歯並びは、西洋人と比較して重症である場合が多いです。なぜなら、骨格的に不利なだけでなく、歯の頭部が非常に大きいからです。
そのため、あご骨と歯の大きさやバランスを無視して自力矯正した場合、歯根が骨から露出したり、歯ぐきから歯根が露出したりするトラブルが起こる心配があるのです。
まとめ
日本人が、自力で歯列矯正を試みることは、非常に危険です。
なぜなら、西洋人の歯列矯正に比べて、日本人の歯列矯正は非常に難しいからです。そのため、自力で歯列矯正しようとしても、トラブルになる可能性が高いからです。
そのため、歯並びをキレイにしたい、できるだけ安く治したいと考えても、決して自力で歯列矯正しないことが身のためです。