かがく
受け口の噛み合わせ異常も、「非抜歯矯正(ひばっしきょうせい)」で治すことが可能です。
非抜歯矯正とは、歯を抜かずにおこなう歯列矯正のことです。ただし、受け口の非抜歯矯正についてインターネットで調べてみると、「受け口が改善しない・・・」「噛み合わせが悪くなった・・・」など、矯正治療で失敗した方の書き込みをたくさん見つけることができます。
そのような書き込みを見て、「抜歯なしで受け口治療することは、良くないのではないか・・・」「受け口治療には、抜歯が必要なのではないか・・・」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか?
そこで、非抜歯治療で失敗した方の事例を、詳しく調べてみることにしました。すると、失敗の原因について、興味深いことがわかりました。
私が調べてわかったのは、「非抜歯矯正が、受け口治療が失敗の原因ではない」ということです。つまり、非抜歯矯正が適切であるかどうかの診断が間違っていたり、非抜歯治療のすすめ方がお粗末だったりしたことが、すべての失敗の原因だったのです。
そのため、ここでは、非抜歯矯正が可能なタイプと、非抜歯矯正におけるポイントについて説明しています。これを読むことによって、非抜歯矯正による受け口治療について十分に理解できるようになるはずです。
非抜歯矯正の失敗
非抜歯矯正で失敗した方の投稿を調べてみると、3つのタイプに分類できることがわかります。
前歯の前後関係が改善しない
「矯正をはじめて2年以上が経過しているのに、前歯の噛み合わせが治らない・・・」「下の前歯が、内側に倒れ込んだ状態になっている・・・」
噛み合わせが悪くなった
「上下の歯が、噛み合わなくなってしまった・・・」「食べものを、噛み切ることができない・・・」「噛み合わせが悪くて、顎関節症(がくかんせつしょう)が悪化した・・・」
しゃくれ顔がひどくなった
「以前より、しゃくれ顔がひどくなった・・・」「矯正治療したら、下アゴが尖ってきた・・・」
非抜歯矯正が失敗した理由
診断が間違っている
非抜歯矯正で失敗した事例を調べてみると、失敗原因のほとんどが「診断ミス」でした。つまり、本来、非抜歯矯正で治療してはいけないタイプに、あやまって非抜歯矯正を選んでいたのです。
中には、治療前に必要な精密検査を、十分におこなっていないというケースがありました。しかし、精密検査を十分にもかかわらず、間違った診断を下している事例が非常に多く見られました。
診断が間違っているのであれば、そもそもキレイに治るはずがありません。つまり、矯正治療で失敗しないためには、歯医者選びがもっとも重要であるということです。
矯正治療のやり方が間違っている
中には、診断は正しいにもかかわらず、非抜歯矯正で失敗した事例も多くあります。たとえば、「親知らずを残したまま、矯正治療をおこなっている・・・」「ゴム掛けの場所がちがっている・・・」などです。
非抜歯矯正は、決して簡単な治療ではありません。そのため、非抜歯矯正の選択が正しがったとしても、治療自体を正しくおこなわない限り、計画通りキレイに治すことはできないのです。
そのため、矯正治療で失敗しないためには、「正しい診断ができる歯医者」「正しく治療をおこなうことができる歯医者」を選ぶ必要があるということです。
非抜歯治療が可能な受け口
アゴ骨のサイズが上下そろっている
アゴ骨の大きさに異常がある場合、非抜歯矯正での受け口治療は不可能です。たとえば、上アゴが極端に小さかったり、下アゴが極端に大きかったりする場合です。
なぜなら、アゴ骨のサイズに問題がある場合、歯を抜いてアゴ骨を小さくしたり、外科手術をおこなってアゴ骨を大きくしたりする必要があるからです。
そのため、非抜歯矯正による受け口治療は、アゴ骨に大きさが正常な方に用いるべき治療法といえます。
しゃくれ顔ではない
しゃくれ顔がもともとある人には、非抜歯治療は不向きです。
なぜなら、受け口治療は、下の前歯を内側に引っこめようとする治療法だからです。そのため、歯列矯正をおこなうと、口元が引っ込み、下アゴが突き出る格好になってしまうからです。
そのため、非抜歯矯正による受け口治療は、横顔がもともとキレイな方に用いるべき治療法といえます。
デコボコが少ない歯並び
歯並びにデコボコが多くある場合も、非抜歯治療は不向きといえます。たとえば、アゴ骨が極端に小さかったり、歯のサイズが極端に大きかったりする場合が挙げられます。
なぜなら、歯とアゴ骨のサイズが合っていないと、全部の歯をキレイに並べることはできないからです。無理にならべようとすると、前歯が前方に倒れてしまったり、アゴ骨から飛び出てしまったりする心配があるからです。
そのため、非抜歯矯正による受け口治療は、デコボコがすくない歯並びの方に用いるべき治療法といえます。
非抜歯治療を成功に導くためのポイント
親知らずを抜く
下アゴの親知らずを抜歯することで、受け口治療をスムーズにおこなうことができます。
なぜなら、非抜歯矯正で受け口治療をおこなう際には、下アゴの奥歯を後方移動する必要があるからです。その際、後方に障害物があると、奥歯を後方に動かすことができません。
そのため、非抜歯矯正で受け口治療をおこなう際には、親知らずの抜歯が必要になるのです。
顎間ゴムを徹底する
奥歯を後方移動する際には、「顎間(がっかん)ゴム)」を使用します。顎間ゴムとは、小さな輪ゴムを掛ける行為のことです。
受け口治療の場合、上アゴの奥歯から下アゴの犬歯あたりに向かって、斜めのゴム掛けを行います。そうすることによって、下アゴの歯が後方移動するようチカラを加えることができます。
受け口治療において、ゴム掛けはもっとも重要です。そのため、受け口治療を成功するためには、ゴム掛けの徹底が非可決なのです。
ミニインプラントを用いる
矯正用のミニインプラント(=インプラントアンカー)を用いることで、奥歯の後方移動を確実に行うことができます。ミニインプラントとは、あご骨にネジ入れて用いる小さなボルトのことです。
実際の受け口治療では、下アゴの奥歯付近にミニインプラントを用います。そして、そのミニインプラントから、下アゴの歯を全体的に後方に引っ張るのです。
このように、顎間ゴムだけではなく、ミニインプラントを使って下アゴの歯を動かすことで、受け口治療を確実に成功できるようになります。
非抜歯矯正で受け口治療した事例(20歳・女性)
以前、私が運営するクリニックに、20歳の男性が矯正相談にきました。
その男性は、受け口の治療を希望するものの、「健康な歯は、絶対に抜きたくない」「歯を抜かずに、受け口を治したい」という強い希望がありました。
そのため、私は、非抜歯矯正をその女性に提案することにしました。
なぜなら、上下のアゴ骨のサイズが正常な大きさであり、歯並びの状態もデコボコが少ないタイプだったからです。そのため、抜歯なしでも治療できると診断したからです。
ただし、治療開始する前に親知らずを抜歯し、治療中にはミニインプラントを用いることにしました。なぜ、親知らずの抜歯とミニインプラントを用いたかというと、受け口の非抜歯治療を確実に成功させるためです。
24ヶ月間の治療期間をへて、受け口を改善することができました。健康な歯を抜かずに治療できたことで、女性は非常に喜んでいます。
まとめ
受け口の噛み合わせは、非抜歯でも治療することができます。ただし、治療を受ける際は、どの歯科医院を選択するかが非常に大切になります。
なぜなら、非抜歯矯正ができないタイプにもかからす非抜歯矯正を行っていたり、不適切な非抜歯治療を行っていたりする歯医者があまりにも多いからです。
よって、これから受け口治療を考えている方は、受け口の治療において実績がある歯科医院であることを確認したうえで、治療相談に行くようにしてください。