受け口は、「反対咬合(はんたいこうごう)」または、「下顎前突症(かがくぜんとつしょう)」と呼ばれる噛み合わせ異常のことです。
実は、わたしの長女も受け口でした。しかも、重度のタイプの受け口です。
一般歯科で働くわたしは、矯正治療について知識があまりなかったので、ひどく心配したものです。ただし、わたしの場合、矯正歯科に勤める先輩にいろいろ相談することができたので、非常に助かったのを覚えています。
受け口の噛み合わせをみつけた親はどなたでも、「この子の受け口は、大丈夫だろうか?」「いつ頃から、治療をはじめたらいいのだろうか?」と、きっとわたしと同じように心配になっているはずです。
その不安を少しでも軽くするため、ここでは、お子さんの受け口治療と、それを開始する適切な時期について説明しています。これを、読むことによって、きっと、あなたも安心できるはずです。
受け口のお子さんに必要な治療と、その治療を開始する時期
幼児期に行う受け口治療
口の周りの筋肉をトレーニングする
小さなお子さんで最初に行うのは、口の周りの筋肉をトレーニングする治療(または、MFT)です。たとえば、食べ物の食べ方や舌を動かし方について練習します。
それと同時に、保護者の方にたいしては、「食事の内容」や「食事の与え方」などについて正しい知識を身につけてもらうことが大切になります。
このように、幼児期に積極的に口の筋肉や舌のトレーニングをすることで、このあとに行う受け口治療が確実なものになります。
マウスピースで受け口治療
お子さんが4〜5歳になると、ムーシールド®などのマウスピース治療が可能になります。ムーシールド®を用いることで、受け口の噛み合わせが改善することも期待できます。
ただし、一番の目的は、口の周囲の筋肉をトレーニングしたり、舌の動きを訓練したりすることです。なぜなら、口の周囲の筋肉や舌が正しく機能することが、受け口治療では必須だからです。
そして、口の周囲の筋肉や舌の正しい機能を獲得するには、この時期が最適でもあるからです。
小学生に必要になる受け口治療
上あごを広げる
小学校にあがる頃には、矯正装置をつけて、受け口の改善を行います。最初に行うのは、上あごを大きくすることです。
なぜなら、受け口のお子さんの上あごは、極端に小さいことが多いからです。そのため、積極的に上あごを大きくする必要があるのです。
前歯の噛み合わせを改善する
上あごを拡大したあとに行うのが、上あごを前方に引っ張ったり、ブラケットをつけて前歯を押し出したりすることです。
そして、前歯の噛み合わせを、正常な状態にするのです。そうすることによって、お子さんの受け口が悪化することを、効果的に予防することができるのです。
中学生以降に必要になる受け口治療
本格的な歯列矯正
全体的にブラケットをつけて歯列矯正を行うのは、第二次性徴(だいにじせいちょう)による成長が終わってからです。
なぜなら、第二次性徴の時期に、下あごが極端に大きくなるからです。そのため、本格的な歯列矯正は、第二次性徴が終了するのをまって加療開始する必要があるのです。
早い時期に受け口をはじめるメリット
正しい口の機能を獲得することができる
早期に受け口治療をはじめることで、しっかりとした口の機能を獲得することができるようになります。なぜなら、受け口のお子さんの場合、「噛む」「発音する」などの機能が合格点に達していないからです。
たとえば、食事の際、ペチャペチャと音をたてながら食べたり、食べるのがひどく遅かったりする傾向がありませんか?
なぜなら、受け口の噛み合わせでは、食べ物を噛みきったり、噛みくだいたりするのが苦手だからです。そのため、できるだけ早く、正しい口の機能が営める状態にしてあげることが大切なのです。
受け口が悪化予防
受け口のまま放置すると、受け口はさらに悪化することになるでしょう。なぜなら、受け口の噛み合わせでいることは、下あごを大きくするための矯正装置を24時間つけ続けているのと全く同じことだからです。
実際に、お子さんの口を観察してみてください。口をゆっくり閉じると、最初に前歯が接触した後、次には大きく前方に下あごが移動するはずです。
そのため、受け口が悪化する原因を、できるだけ早く取り除く必要があるのです。
顔への影響を予防
受け口が悪化すると、顔の様子にも悪影響を及ぼします。なぜんら、受け口がひどくなると、「しゃくれ顔」または「三日月様顔貌(みかづきようがんぼう)」の格好になるからです。
しゃくれ顔の状態にまでなると、治療はいっきに難しくなります。つまり、矯正治療を行う際にかかる「肉体的な負担」「精神的な負担」が大きくなるということです。
そのため、受け口が悪化する前に、できるだけ早く治療を開始する必要があるのです。
まとめ
お子さんに受け口の噛み合わせ異常を見つけた場合、できるだけ早期に専門家の診察を受けることがオススメです。
なぜなら、舌の訓練など簡単なトレーニングを行ったり、マウスピースを用いて早期治療を行ったりすることで、受け口の悪化を効果的に予防することができるからです。
そのため、保護者の方は、子どもの噛み合わせ育成において実績のある歯科医院を、まず探し出すことが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。