歯列矯正で支払った治療費は、「医療費控除(いりょうひこうじょ)」の対象です。医療費控除とは、確定申告の際、医療費控除の申告を行うことで、前年に支払った治療費の一部を、還付金(かんぷきん)というカタチで取り戻せる制度のことです。
ただし、この医療費控除の還付金については、治療費の支払い方法によって、還付金の額が大きく違ってきます。なぜなら、支払い方法によって、申告する金額がちがうからです。
そのため、できれば矯正治療を開始する前に、医療費控除についても、ある程度理解し、支払方法を検討する必要があるのです。
ここでは、矯正治療費の支払い方法によって、医療費控除で申告する金額、および還付金の額がちがう理由について説明します。
矯正治療費の支払方法によって異なる医療費控除額
矯正治療の支払い方法については、大きく2つのパターンがあります。それは、「一括払い(いっかつばらい)」と「分割払い(ぶんかつばらい)」です。
治療費を一括で済ませた場合、当然、支払った医療費の全額を申告することができます。そのため、還付金の額も最大です。
一方、矯正治療費を分割払いで支払った場合では、すこし状況が異なります。なぜなら、治療費を分割払いで支払った場合、分割払いの方法によって、医療費控除で申告する金額も違ってくるからです。
分割支払いの方法によって異なる医療費控除額
分割支払いの方法については、支払いをする相手によって、大きく2つに分類することができます。それは、信販会社に対して支払いを行う場合と、歯科医院に対して分割払いを行う場合の2種類です。
同じに感じるかもしれませんが、実は、両者ではまったく異なるのです。そのため、医療費控除で申告する金額、および還付金の額も異なってくるのです。
歯科クレジットやデンタルローンを通して治療費を支払った場合
歯科クレジットおよびデンタルローンなど、信販会社を利用して治療費の分割払いを行う場合、信販会社は、すぐに治療費の全額立替払いを歯科医院に対して行います。
そのため、デンタルローンを利用した後、患者さんが支払いを行うのは、歯科医院に対してではなく、治療費の立替払をしている信販会社に対してです。
これは、普段から使用しているクレジットカードを利用して、治療費を分割払もしくはリボ払いする場合も同様です。
このように、信販会社もしくはカード会社を利用した場合、治療費はすでに全額が歯科医院に支払われています。そのため、信販会社もしくはカード会社が立替払した分の治療費の全額が、その年の医療費控除の対象になります。
つまり、確定申告の際に医療費控除として申告する金額は、一括払いした時と同じ金額ということができます。そのため、還付金の額も最大となります。
ただし、注意すべきことがあります。それは、医療費控除を受ける際の添付書類についてです。添付書類として歯科医院からの領収書を提出する場合、まったく問題ないのですが、信販会社の領収書で添付するケースでは、かなり面倒な計算が必要になるからです。
なぜなら、信販会社が発行する領収書に記載された額面には、金利および手数料相当分が含まれているからです。そして、信販会社に支払う金利および手数料は、医療費ではないため、医療費控除の対象にはならないからです。
そのため、添付する書類として、信販会社からの領収書を提出する場合、領収書に記載してある額面から、利息部分および手数料部分を除く必要があります。あやまって、利息および手数料が含まれる金額を申告しないように、くれぐれも注意する必要があるのです。
歯科医院との間で、分割払いの契約をしている場合
信販会社やカード会社を通さず、分割払いを行った場合、実際に歯科医院に支払った治療費の合計が、医療費控除の対象となります。つまり、1月1日~12月31日中に支払った治療費の合計を、医療費控除として申告するのです。
そのため、年をまたいで分割払いした場合、支払った暦年ごとに、医療費控除の確定申告が必要になります。
たとえば、80万円の治療費を2年間に分けて30万円、50万円と分割払いする場合です。この場合、1年目は30万円を、2年目は50万円を支払った医療費として、それぞれ確定申告する必要があるのです。
このように、信販会社やカード会社をとおさず、歯科医院に対して直接分割払いするケースでは、当然、手数料や利息は発生しません。そのため、手数料部分や利息部分を除いて申告したり、そのための面倒な計算を行ったりする必要もないのです。
ただし、支払った治療費が同じでも、複数年に分けて医療費控除するため、還付金の額は減少してしまいます。
まとめ
矯正治療で支払った治療費は、確定申告にて医療費控除の申告を行うことができます。そして、支払った治旅費の一部を還付金として取り戻すことができます。
ただし、治療費の分割払いを行っている方は、その際、注意が必要です。なぜなら、選択する分割払いの方法によって、支払った費用と、申告する金額が異なる可能性があるからです。
そのため、確定申告で医療費控除の申告を行う際には、必ず、歯科医院が発行する領収書を添付することが大切です。信販会社やカード会社が発行する領収書ではなく、歯科医院が発行する領収書を添付する領収書を提出することで、間違いのない申告が簡単にできるはずです。