小児期に行う矯正治療の流れについて

これから、お子さんの矯正治療を考えている方は、矯正相談の予約を入れる前に、「矯正治療の流れ」について十分に理解しておくことは非常に大切です。

なぜなら、矯正治療の流れを理解することで、矯正治療に対する不安を減らしたり、安心して矯正相談を受けることができるようになったりするからです。

小児期に行う矯正治療の流れについては、大きく5つのステップに分けることができます。

矯正治療の流れ

ステップ１：矯正相談

矯正相談では、「お子さんの歯並びで気になっている点」や「お子さんの噛み合わせで気になる点」について、詳しくお聞きします。

実際に、口の中の様子も見て、「歯並びと噛み合わせの問題点にたいする解決法」について相談します。そのほかにも、矯正相談では、矯正治療の流れ、料金設定について十分に説明をきいて、疑問点がすべてクリアになるようにしなくてはなりません。

ただし、最終的な治療計画については、次のステップである精密検査をおこない、きちんと分析と診断をしたうえで決定する必要があります。

もちろん、この時点で、「矯正治療を希望しない」もしくは「自分には、この歯科医院は合わない」と判断した場合は、精密検査にすすむことを断ることができます。

ステップ２：精密検査

矯正相談のあとには、精密検査を行います。

一般的には、口の中の写真、顔写真、規格レントゲン写真、歯牙模型が必要です。これらをもとに、徹底的に分析を行って、あなたに最もふさわしいと思う治療計画をたてるのです。

場合によっては、その他の検査も必要になります。たとえば、永久歯に位置異常や方向異常があるケースでは、必要におうじてCTレントゲン撮影をおこないます。

このように、必要な精密検査を行い、分析することで、お子さんに必要な治療、もしくはお子さんに合った矯正治療の計画をたてることができるのです。

ステップ３：診断（詳しい治療計画）

精密検査をもとにたてた治療計画について、一緒に検討します。その際、２〜３つの案を提案するケースもあれば、１つの案だけしか提案できないケースもあります。

このとき、治療中のトラブル、治療期間、治療のリスクなどについても、再度確認する必要があります。治療方針について、納得が得られれば、いよいよ矯正治療開始となります。

ただし、矯正治療を開始するかどうかについては、その場で決定する必要はありません。詳しい治療計画をきいたうえで、「自分は、矯正治療を希望しない」もしくは「自分は、この歯科医院では治療を受けない」と判断してもかまわないのです。

相談した内容を自宅に持ち帰り、納得するまでご家族で検討することが大切です。なぜなら、矯正治療は、お子さんの協力を必須とする医療行為だからです。

たとえば、矯正治療中には、口の中の清掃をこまめにしたり、矯正装置の取り外しを患者さん自身で行ったりする必要があります。矯正治療を受ける本人にやる気がなければ、これら治療中の協力を得ることができないからです。

診断をおこなった結果、中には、矯正治療の開始をしばらく見合わせるケースもあります。たとえば、永久歯への交換が遅いタイプのお子さんです。

乳歯の生え代わりが遅いタイプのお子さんで、早期に矯正治療をはじめると、治療期間が非常に長くなってしまう心配があるからです。そのため、永久歯の生え代わり状況を確認したうえで、矯正治療の開始時期を判断する必要があるのです。

ステップ４：矯正治療開始

ここからは、治療契約にサインし、矯正治療を実際に開始する段階です。

たとえば、アゴ骨が小さく、そのため歯のデコボコが起こっているケースでは、この時期にアゴ骨を拡大することが効果的です。なぜなら、アゴ骨の形態を大きくすることで、歯をキレイに並べるためのスペースを作り出すことができるからです。

そのほかにも、お子さんの噛み合わせに骨格的な異常をまねく問題がある場合、その問題点をできるだけ早期に改善する必要があります。

たとえば、受け口（または、反対咬合）や、下アゴが横にスライドするような噛み合わせ異常があるケースです。なぜなら、これらの異常がある状態を放置すると、受け口が大きく悪化したり、下アゴが左右非対象のかたちになったりする心配があるからです。

そのため、このように骨格の異常に移行するリスクがあるケースでは、お子さんの噛み合わせの問題を早期に改善することが非常に重要なのです。

そうすることで、お子さんの噛み合わせ異常が深刻化することを予防できるだけでなく、将来、本格的な矯正治療が必要になった際に、お子さんに大きな負担をかけない格好で、矯正治療を行うことができるようになるのです。

ステップ５：成長観察

小児期の矯正治療が終了したあとは、永久歯が生えそろうまで経過観察を行います。この時、場合によっては、経過観察中であっても、何らかの矯正装置を使用するケースが多々あります。

たとえば、お子さんに出っ歯（または、上顎前突症）の傾向がある場合です。このように出っ歯傾向があるケースでは、矯正治療で一旦状態を改善しても、経過観察中に再発する心配があります。

そのため、わたしのクリニックでも、出っ歯の矯正治療を行ったあと、マウスピース型の矯正装置を用いながら経過観察を行うことも少なくありません。

そして、永久歯が生えそろった時点で、次の本格的な矯正治療の必要性について判断します。

また、永久歯が完全に生えそろった後も、第二次性徴が終了するまで、経過観察を延長して行うケースもあります。たとえば、お子さんに、受け口（または、下顎前突症）の傾向がある場合です。

受け口タイプのお子さんは、第二次性徴の時期に下アゴが極端に伸びることが特徴です。そのため、第二次性徴期に、アゴ骨や噛み合わせが大きく変化するタイプのお子さんでは、第二次性徴が終了したことを確認したのちに、次の本格的な矯正の必要性を判断する必要があるのです。

まとめ

矯正相談の予約をいれる前に、矯正治療の流れについて十分理解しておくことは、非常に大切です。

なぜなら、矯正相談を受けた時点で、もしくは矯正治療に必要な精密検査を受けた時点で、「矯正治療を、必ず開始しなければならない」と誤解している方が非常に多いからです。

実際、そのような思い込みが原因で、矯正相談の予約をいれることをためらっている方が少なくないのです。

よって、矯正治療に関心がある方は、矯正治療の流れについて、まず理解することが大切です。そして、一連の流れについて理解したうえで、適切な歯科医院を選択し、矯正相談の予約を入れるようにしてください。