意外に思うかもしれませんが、歯の矯正治療では、「手のレントゲン写真」を撮ることがあります。
なぜなら、手のレントゲン写真を見ることで、身体の成長具合を正確に知ることができるからです。
そして、矯正治療を適切に行うためには、身体の成長状況について、正確に把握することが非常に重要だからです。
ここでは、矯正治療において成長具合を調べる理由と、その診断方法について説明します。
第二次性徴とアゴ骨の成長
矯正治療において、第二次性徴の状況をしっかりと把握することが非常に重要です。
なぜなら、第二次性徴の時期には、身長が急激に伸びるのと同時に、下アゴも大きく変化するからです。
たとえば、下アゴが小さいことが原因で、出っ歯(または、上顎前突症)の状態になっていたとします。そのようなケースでは、第二次性徴の時期をねらって矯正治療を開始することで、下アゴを前方に成長誘導することができます。
そして、小さい下アゴを積極的に大きくし、根本的な原因を解決することで、出っ歯を改善することができるのです。
一方、受け口(または、下顎前突症)のケースでは、第二次性徴が終了したことを確認してから、矯正治療を開始する必要があります。
なぜなら、矯正治療でせっかく噛み合わせを整えたとしても、第二次性徴によって下アゴが伸びる心配があるからです。
そして、下アゴが伸びると、噛み合わせが再び崩れるリスクが高いからです。
このように、矯正治療では、患者さんの第二次性徴の時期や状態を、しっかりと把握する必要があるケースが少なくないのです。
手のレントゲン写真で、第二次性徴を確認する
第二次性徴が始まる時期やその期間については、個人差が大きいのが特徴です。そのため、第二次性徴が始まる時期やその期間、お子さんの年齢や学年とは完全に一致しません。
まして、第二次性徴が始まる時期を正確に予測したり、第二次性徴のピークや終了のタイミングを確認したりすることは非常に困難です。
しかし、手のレントゲン撮影を行うことで、第二次性徴の状態について正確に知ることができるのです。
第二次性徴の開始を予測する
手のレントゲン写真をみると、人の手にはたくさんの骨があることが分かります。
特に、手首の部分は、手根骨(しゅこんこつ)と呼ばれる8つの骨が集まってできています。
しかし、小さなお子さんの手のレントゲン写真をみても、8つの手根骨をすべて確認することはできません。なぜなら、それぞれの石灰化が不十分で、レントゲン写真には写らないからです。
しかし、石灰化が未熟な骨も、身体の成長が進むにつれて、確認できるようになります。
そして、どの骨がレントゲン写真に写るようになったのかを確認ことで、身体の成長がどの段階にあるのかを確認することできるのです。
たとえば、豆状骨(とうじょうこつ)は、第二次性徴がはじまる時期に現れる骨です。そのため、豆状骨の有無を確認することで、第二次性徴の開始を知ることができます。
また、種子骨(しゅしこつ)は、身長やアゴ骨が最も伸びる時期に現れる骨です。そのため、種子骨の存在を確認することで、第二次性徴のピークが過ぎたことを知ることができるのです。
このように、手のレントゲンを撮影することで、第二次性徴の開始やピークの到来を、正確に知ることができるのです。
第二次性徴の終了を確認する
手根骨以外にも、手のレントゲン写真をとった際に注目する部分があります。それは、「軟骨(なんこつ)」です。
なぜなら、成長中の軟骨のレントゲン像と、成長をすでに終えた軟骨のレントゲン像では、まったく違うものに写るからです。
手や指の骨は、軟骨部分が骨に置き換わることによって、その長さを増します。
そして、軟骨から骨に置き換わる部分は、石灰化の程度が低いため、レントゲン写真には写りにくいのです。
そのことによって、成長中のレントゲン写真をみると、軟骨と骨の間に一層のすき間があるように見えるのです。
一方、成長を終えた骨のレントゲンをみると、軟骨との間にすき間はなく、軟骨と骨の区別がつかない格好に変化していることが分かります。
このように、手のレントゲンを撮影することで、第二次性徴が終了したことを確認することができるのです。
まとめ
矯正治療を適切に行うためには、患者さんの第二次性徴の状態を、正確に把握することは非常に大切です。
なぜなら、第二次性徴の時期に下アゴが大きく成長するため、噛み合わせの状態も変化する可能性があるからです。
よって、矯正治療を考えている方は、第二次性徴について配慮できる歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。