お子さんの受け口(または、下顎前突症)は、1歳半検診もしくは3歳児検診で指摘されることが非常に多いです。
しかし、このように噛み合わせの異常が見つかった場合でも、お子さんがまだ小さいという理由から、「しばらく様子見ましょう」もしくは「もう少し大きくなってから治療始めましょう」と説明を受けることがほとんどなのです。
そして、その説明を聞いた保護者の中には、「このまま放置して、手遅れにならないの?」と心配になり、「できれば、すぐにでも治療開始したい」と希望して、矯正相談にくる方も少なくないのです。
ここでは、3歳児検診で受け口が見つかってもすぐに治療開始しない理由と、早期の受け口治療を可能にしたムーシールドについて説明します。
従来の受け口治療と、そのタイミング
従来の受け口治療では、前歯が永久歯にかわるのを待って、治療開始することが一般的でした。なぜなら、永久歯に装置を付けて前歯を前方に押し出したり、上アゴを前方に引っ張ったりする治療だからです。
そのため、6歳臼歯と前歯が永久歯に生えかわるまで、矯正治療を開始することを見合わせる必要があったのです。
また、その他の受け口治療として用いられる方法に、「チンキャップ」を用いる方法があります。これは、頭にかぶった帽子から、下アゴに付けたチンキャップにチカラを加えて受け口を改善させる装置です。
このチンキャップも、前歯が永久歯に交換するタイミングを見計らって用いる装置です。そのため、お子さんの乳歯がまだしっかりしている時点では、タイミングが早すぎるといえるでしょう。
このように、乳歯の状態でも行うことができる受け口治療が、これまで見当たらなかったのです。そのため、3歳児検診で受け口が見つかっても、経過観察するしか方法がなかったのです。
ムーシールドを用いた下顎前突症の治療
「ムーシールド」は、受け口治療の際に用いるマウスピース型の矯正装置です。
自分自身で簡単に取り外すことができるので、治療中のトラブルが少なく、お子さんにも負担が少ない治療ということができます。
また、ムーシールドは、歯にチカラを直接加えて治療するタイプの装置ではありません。口の周りの筋肉の働きを利用して、アゴ骨にチカラが作用するタイプの矯正装置です。
そのため、永久歯が全く生えていない乳歯だけの状態でも、受け口治療を開始することが可能なのです。
そのため、できるだけ早く治療を開始する必要がある受け口重度のお子さんだけでなく、ご家族がお子さんの早期治療開始を希望するケースでも、3〜4歳と非常に早い時期からから治療開始することができるのです。
実際に、ムーシールドで早期治療を行った事例
以前、わたしが運営するクリニックに、受け口をもつ4歳の女の子が矯正相談にきました。
当然、女の子の口の中は、まだ乳歯だけの状態で、永久歯は1本も生えていない状態でした。
そこで、さっそくムーシールドを用いて治療開始することを提案することにしました。なぜなら、女の子の母親が、早期に受け口治療を開始することを希望したからです。
その後、装置をしっかり使用することができたため、下の前歯が永久歯になる頃には、女の子の受け口はキレイに改善しました。
女の子も、その母親も非常に喜んでいます。
まとめ
かつての受け口治療(または、反対咬合治療)では、6歳臼歯が生えるまで経過観察しかありませんでした。
しかし、ムーシールドを用いる治療が確立でてきたお陰で、受け口のお子さんに対して早期に治療開始することができるようになりました。
よって、お子さんの受け口を心配している方は、子どもの咬合育成において実績のある歯科医院を選択することが非常に重要です。
そして、そのような子どもの噛み合わせに精通した歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。