矯正治療を開始する際、正しく診断を行うために、レントゲン写真や口腔内写真の撮影など複数の検査が必要です。
そして、必ず行う検査の中に「模型分析」があります。
模型分析とは、歯型(はがた)をとってつくった模型を使って、歯の大きさやアゴの大きさを計測することです。
この模型分析の結果が、適切な治療計画をたてるうえで、非常に重要になるのです。
ここでは、矯正治療を開始する際の模型分析について説明します。
歯の大きさの測定
模型分析で最初に行うことは、「歯の大きさ」の測定です。すべての歯について、それぞれ計測します。
そして、あらかじめ分かっている日本人における平均データと比較するのです。
そうすることで、その患者さんの歯が平均的な大きさなのか、それとも大きい、もしくは小さい傾向があるのかを判断するのです。
このときの計測に用いるのは、「定規」ではなく「ノギス」です。ノギスを用いることで、歯の大きさを0.1mm単位で正確に測定することが可能になるからです。
そして、矯正の治療計画を適切にたてるためには、0.1mm単位で歯の大きさを測定する必要があるからです。
アゴの大きさの測定
次に、模型分析で行うのは、「アゴ骨の大きさ」の測定です。つまり、歯が並ぶ部分(または、歯槽堤)の大きさを、模型で計測するのです。
そして、歯が実際に並ぶ土台の大きさと、歯の大きさの合計を比べることで、すべての歯をアゴ骨におさめることができるか否かを判断することができるのです。
たとえば、歯が全体的に大きい傾向があり、アゴ骨の大きさが4mm以上不足しているケースがあったとします。
その場合、無理に歯を並べようとせず、歯の数を減らして歯並びや噛み合わせを整えることを考える必要があります。
なぜなら、余地不足のアゴ骨に、全部の歯を並べようとすると、歯の根が骨から露出したり、すべての歯が外側に倒れたりするトラブルが必ず起こるからです。
そのため、矯正治療の治療計画をたてる際には、模型上で歯の大きさとアゴ骨の大きさを測定することが必要なのです。
模型分析を行って診断した事例
以前、わたしが運営するクリニックに、歯のデコボコの治療を希望する女性が、矯正相談にきました。
彼女は、写真にうつる自分の歯並びをみて、矯正治療を受けたいと思ったようです。
しかし、矯正治療を受けるにあたって、歯を抜くことに不安があり、「絶対に、歯は抜きたくない」という希望もありました。
そのため、わたしは矯正治療に必要な検査をしたうえで、再度相談を行うことを提案しました。なぜなら、検査で詳しく診査しない限り、正しく診断を行うことはできないからです。
しかし、分析結果によると、彼女のケースは歯を抜いて矯正を行うべきであることが分かりました。模型分析の結果、歯が大きく、全部の歯をアゴ骨に並びきれないことが分かったからです。
彼女に模型分析の結果を伝えると、非常にがっかりした様子でした。
しかし、数日考えたあとで、彼女は歯を抜いて矯正することを決心したのです。
左右の小臼歯を抜歯して矯正治療を行った結果、アゴ骨から歯の根が露出することもなく、無事に矯正治療を完了することができました。
すっかりキレイになった歯並びをみて、「矯正治療を決心して、ほんとうに良かった」と思ったそうです。
まとめ
矯正治療の診断を適切に行うためには、模型分析が必須です。なぜなら、模型分析を行わず矯正治療を行うことは、非常に危険だからです。
そのため、矯正治療を考えている方は、模型分析を行って診断する歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような適切な歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。