矯正治療を開始する際には、「レントゲン写真」「口腔内写真」「顔貌写真」「歯型模型」など複数の検査を行います。
その他にも、筋電図や顎運動検査などを行う歯科医院もあるようです。このように、たくさんの検査を行うのは、適切に診断を行うために必要だからです。
そして、その中でも、最も重要視するものの1つとして、「セファロ分析」があります。これは、横顔のレントゲン写真を用いて行う分析のことです。
このセファロ分析の結果が、矯正の治療方針を決定するうえで非常に大きなウェイトを占めるのです。そのため、矯正治療において、このセファロ分析は非常に重要ということができます。
ここでは、セファロ分析と、分析結果を踏まえた治療方針のあり方について説明します。
セファロ分析について
セファロ分析で用いる横顔のレントゲン写真(または、頭部X線規格写真)は、毎回同じ条件で撮影できるように設定されています。
つまり、左右の耳の穴と眉間(みけん)の3箇所で、しっかり頭を固定した状態で撮影するため、同じ角度、同じ倍率で撮影するのです。
しかも、その撮影条件は、世界中で統一した条件です。
そのため、血液検査で健康状態を知ることができるのと同じように、測定した値が正常範囲なのか、もしくは正常値からどのくらい逸脱しているのかを知ることができるのです。
そして、正常値にあるか否か、もしくは、正常値からどの程度離れているかを知ることで、矯正治療の治療計画を適切にたてることができるようになるのです。
顔のタイプ
セファロ分析で最初に確認すべきことは、「顔面タイプ」です。
この顔面タイプについては、それぞれ「一般型」「長顔型」「短顔型」の3つに分類することができます。
そして、この分析結果をもとに、積極的に抜歯して矯正するタイプか、それとも抜歯を避けて矯正するタイプなのかを判断します。
短顔型の特徴
短顔型は下アゴのエラが発達し、噛む力が非常に強い特徴があります。噛む力が非常に強いため、矯正治療中の歯がなかなか動きにくいのも特徴です。
そのため、短顔型をもった患者さんの治療では、できるだけ歯を抜かない方法で矯正治療を行うことを検討します。
なぜなら、噛む力が通常より強いため、多くの歯で噛むチカラを負担したほうがよいと考えるからです。
また、歯の本数を減らすと、それぞれの歯の負担が超過してしまうことを心配するからです。
長顔型の特徴
一方、長顔型は下アゴのエラが発達せず、噛むチカラが弱いタイプということができます。
噛み合わせが弱いため、矯正治療中の歯は動きやすく、噛み合わせも変化しやすいということが特徴です。
長顔型の治療では、治療計画もより厳密に、治療中の処置もより慎重に行う必要があるのです。なぜなら、歯が伸び出したり、噛み合わせが悪くなったりしやすいからです。
しかも、アゴ骨の骨格が華奢(きゃしゃ)であるため、噛み合わせの変化に順応しにくいという特徴もあります。
そのため、矯正治療中に顎関節症の問題が起きるのも、この長顔型のタイプな患者さんに多いのです。
このように長顔型のタイプの矯正治療では、噛み合わせが変化しないように注意しながら、歯の位置だけを動かして治療することを検討します。
よって、積極的に抜歯をして矯正治療を行った方がよいと判断するケースが多くなるということができるでしょう。
骨格のタイプ
セファロ分析によって、さらに確認すべきこととして「骨格のタイプ」が挙げられます。
上下のアゴ骨の形態と位置関係を知ることで、「出っ歯タイプ」なのか、もしくは「受け口タイプ」なのかを知ることができるのです。
このようにアゴ骨の大きさや位置関係をしることで、上下アゴ骨のバランスを考慮した矯正治療の治療方針をたてることができます。
成長期の患者さんへの対応
成長期にあるお子さんの治療では、アゴ骨の成長を利用することで、上下アゴ骨の大きさや位置関係を改善する治療方法を選択することができます。
たとえば、上アゴが小さい受け口タイプのお子さんでは、上アゴの形態を大きくし、上下のバランスを積極的に整えることが可能です。
また、下アゴの小さい出っ歯タイプのお子さんでは、上の前歯を引っ込めようとするのではなく、下アゴの成長誘導をはかり、上下アゴ骨のバランスを整える必要があります。
成長期以降の患者さんへの対応
すでに、永久歯が生えそろった患者さんの矯正治療では、上下アゴ骨のアンバランスを補正するため、歯の抜歯を行ったり、前歯の角度を調整して噛み合わせを整える必要があります。
たとえば、下アゴが小さい出っ歯の患者さんでは、上の歯を抜いて前歯を引っ込めることで、出っ歯の改善を行います。
そして、下アゴが大きい受け口の患者さんでは、上の前歯を前傾させたり、下の前歯を後方に倒すことで、前歯の噛み合わせたりすることを検討する必要があるのです。
まとめ
矯正治療の診断には、セファロ分析が必須です。なぜなら、セファロ分析を行わず矯正治療を行うことは、非常に危険だからです。
そのため、矯正治療を考えている方は、セファロ分析を用いて診断を行う歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような適切な歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。