受け口治療について調べてみると、外科矯正(げかきょうせい)による失敗事例が多いことがわかります。
実際にインターネットで検索してみると、「呼吸が苦しくなった・・・」「食べにくくなった・・・」「しゃべりにくくなった・・・」など、外科矯正したことを後悔する内容の書き込みを見つけることができます。
すでに書き込みをみた方の中には、外科矯正に対して不安を感じた人も多いのではないでしょうか? 「これから外科矯正をうける方には、同様の後悔をほしくない」と考え、この記事を用意しました。
ここでは、受け口を外科矯正で治療した際の失敗事例と、その原因について説明しています。これを読むことによって、外科矯正について理解できるようになるだけでなく、自分にとって必要な外科手術がわかるようになるはずです。
外科矯正とは
外科手術を併用する矯正治療のことを、「外科矯正(げかきょうせい)」といいます。ブラケットやワイヤーを用いて歯並びを良くするだけでなく、外科手術をおこなうことによって骨格の改善をおこないます。
外科矯正が必要になるのは、重度の噛み合わせ異常があるケースです。受け口の場合だと、下アゴが極端に大きかったり、しゃくれ顔がひどかったりする場合です。
なぜなら、歯列矯正だけで正しい噛み合わせをつくったり、整った横顔に改善したりすることはできないからです。
外科矯正における失敗事例
喉(のど)のトラブル
失敗例で最も多いのが、「息がしにくい・・・」「食べものを飲み込みにくい・・・・」などといった喉に関するトラブルです。
このような問題が発生したのは、下アゴを著しく後方に引っこめたからです。下アゴをさげ過ぎた結果、喉を圧迫する格好になったからです。
喉が圧迫すると、気道や食道も狭くなってしまいます。そのため、呼吸がしにくくなったり、食べものが食べものが飲み込みになくくなったりしてしまうのです。
舌のトラブル
もう1つのトラブルが、「噛みにくくなった・・・」「しゃべりにくくなった・・・」などといった舌のトラブルです。
この問題も、下アゴを著しく後方に引っこめたことが原因です。下アゴを極端に下げると、口の中を狭くしてしまうからです。その結果、舌が収まるスペースが不足してしまうのです。
当然、狭い口の中では、舌は正しく動くことはできません。そのため、食事がスムーズにできない、発音がしにいなどの障害が起こってしてしまうのです。
口元のトラブル
最後に挙げられるのは、「口元がキレイになっていない・・・」「前歯が見えない・・・」といった見た目に関するトラブルです。
これは、前歯の位置に問題があることが原因で起こります。前歯が後方に位置するため、鼻下部分のサポートが不足したり、前歯の露出が不足したりするからです。
そのため、老け顔の印象になったり、不機嫌な顔の印象になったりしてしまうのです。
外科矯正が失敗した理由
外科矯正で失敗した事例を調べると、上下の外科手術が必要な患者さんに対して、下アゴだけの手術をおこなっているケースがおおいことがわかります。
受け口治療における外科手術には、「下アゴのみ手術を行う方法」と「上下のアゴ骨を手術する方法」の2つがあります。当然、下アゴのみを手術する場合に比べて、上下の手術が必要になるケースの方が重症の受け口です。
そのため、上下の外科手術が必要な患者さんに対して、下アゴだけの手術をおこなっても満足できる結果になるはずがありません。
外科矯正治療で後悔しないためには、「下アゴの手術だけで十分なのか」それとも「上下の手術が必要になるのか」について、正しく診断することが最も重要なのです。
上下の外科手術が必要な受け口
下アゴが極端に大きい
下アゴが極端に大きい場合、上下の外科手術が必要になります。
なぜなら、下アゴを10mm以上引っこめると、喉(のど)を圧迫してしまうからです。その結果、気道や食道を圧迫してしまうことになるからです。
そのため、限界を超えて下アゴをさげる必要があるケースでは、上アゴの手術を同時に行う必要があります。上アゴを前方に移動することによって、下アゴを後退する幅を小さくするのです。
そうすることによって、気道や食道を圧迫することを防ぐことができます。
上アゴが極端に小さい
上アゴが極端に小さい場合も、上下の外科手術が必要になります。
なぜなら、小さい上アゴに合わせて下アゴを位置づけした場合、口の中が極端に狭くなってしまうからです。さらに、見た目の印象を良くするために、鼻下部分の落ち込みや前歯の露出を改善する必要があるからです。
よって、この場合も、上アゴの外科手術をおこないます。上アゴ全体を前方に移動することによって、下アゴを後退する幅を小さくしたり、前歯の位置を前方にもってきたりするのです。
そうすることによって、不機嫌な印象を周囲にあたえたり、口の中が極端に狭くなって舌の動きをさまたげたりすることを防ぎます。
実際に、上下顎手術で受け口治療を行った事例
以前、私が運営するクリニックに受け口の治療を希望する男性が矯正相談にきました。彼は、自分がしゃくれ顔であることを長年コンプレックスに感じているようでした。
最初に、矯正治療に必要な検査を行いました。その結果、彼のしゃくれ顔は「下あごが大きいだけではなく、上あごが小さいこと」によるものだと分かりました。
そのため、矯正治療と同時に、「下あごを引っ込め、上あごを前方へ移動させる」外科手術を行う計画しました。治療計画を伝えると、彼はすぐに矯正治療を開始することを決断しました。
まず、全部の歯に矯正装置(ブラケット)を貼り付け、矯正によって手術前の準備を行っています。続いて、全身麻酔による上下あごの外科手術と、噛み合わせの調整を行いました。
約2年半の矯正治療を行った結果、彼の受け口としゃくれ顔はキレイに改善し、とても良い状態になりました。その治療結果に、彼は非常に満足しています。
上下の外科手術を行った際のデメリット
手術時間が長い
上アゴの外科手術を行った場合のデメリットとして、手術時間が長くなるが挙げられます。なぜなら、外科手術の範囲が広くなり、手術自体も複雑になるからです。
ただし、外科手術が複雑になるからといって、手術の危険性が非常に高くなるわけではありません。そのため、上下の外科手術が必要になるからといって、過度に心配しすぎる必要はないのです。
外科手術後の腫れが大きい
上アゴの外科手術を行った場合の最大のデメリットは、外科手術後の腫れが大きいことです。
下アゴだけを手術した場合と比べて、上アゴの手術を同時におこなった場合、顔の腫れが著しくなります。なぜなら、上アゴの周りには小さな血管がたくさんあるからです。
そのため、上アゴの外科手術を同時に行う場合、手術後の入院期間を通常より長く設定するケースもあるのです。
まとめ
外科矯正で受け口治療する際、「下アゴのみの外科手術で十分なタイプか」、それとも「上下の外科手術が必要なタイプか」の診断が非常に重要になります。
なぜなら、その見極めによって、外科矯正治療の成否が大きく違ってくるからです。
そのため、これから受け口治療を考えている方は、正しい診断ができる歯科医院を選択する必要があります。
そして、正しい診断ができる歯科医院であることを必ず確認したうえで、治療相談に行くようにしてください。