お子さんに噛み合わせの異常があることに気づかず、知らない間に顔の非対称が起こってしまう......
そのような非常に発見がむずかしく、将来大きな問題に発展する噛み合わせ異常があるのです。
たとえば、「奥歯の交叉(こうさ)」や、「奥歯のすれ違い」です。
ここでは、お子さんのアゴを歪(ゆが)ませる心配がある噛み合わせ異常について説明します。
アゴを歪(ゆが)ます矯正装置
奥歯が上下にしっかりと噛み合わず、交叉する状態またはすれ違う状態だと、お子さんは真っ直ぐに噛むことができません。
口を閉じようとすると、交叉した奥歯に誘導されて、下アゴが横にスライドするのです。
この状態は、下アゴを横に偏位させるための矯正装置を、24時間装着しているのと同様のことなのです。
そのため、下アゴが横にスライドする状態で奥歯の噛み合わせを長期間放置すると、下アゴの形態が徐々に歪んでくるので注意が必要です。
第二次性徴(せいちょう)による影響
第二次性徴期は、身長が大きく伸びると同時に、下アゴも大きく成長する時期でもあります。
そのため、下アゴが横にスライドする状態のまま、この第二次性徴の時期に突入すると非常に心配です。
なぜなら、下アゴの成長の影響により、アゴの歪みが急激に悪化するからです。
このように第二次性徴期に、下アゴに骨格的な左右差が強く起こると、顔の左右非対称も非常に目立つようになるので注意が必要です。
アゴの歪みを予防する
私のクリニックでは、奥歯に噛み合わせ異常が見つかった場合、第二次性徴が起こる前に奥歯の異常を取り除くようにしています。
以前、わたしが運営するクリニックに、小学生の女の子が矯正相談にきました。かかりつけの歯医者で、奥歯の噛み合わせ異常を指摘されたため、母親が連れて来たのです。
女の子の口の中を観察すると、右の奥歯に噛み合わせ異常があり、その影響によって下アゴが大きく左にスライドすることが分かりました。
そして、女の子と相談した結果、「上顎急速拡大装置」という器具を用いて治療を行うことにしました。
上顎急速拡大装置とは、上アゴを広げる際に用いる、取り外しできないタイプの矯正装置です。
この装置を用いて、2ヶ月ほど上アゴを広げることで、予定どおり奥歯の噛み合わせを改善することができました。
また、奥歯の噛み合わせが改善したことで、下アゴをずらして噛むこともなくなりました。
まとめ
奥歯に噛み合わせ異常があると、将来的に顔の歪みが起こる心配があります。異常の発見が遅れて、アゴが大きく歪んでしまっているケースも少なくないので注意が必要です。
そのため、小さなお子さんをお持ちの方は、歯並び育成において実績のある歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような噛み合わせ異常を発見できる歯科医院をみつけたうえで、小さい頃から定期に検診を受けるようにしてください。