毎日、歯の動きを鏡で確認している方は、「自分の歯は動いていないのではないか」と不安に思っているかもしれません。
矯正治療中の歯は、毎日一定の速度で動いているわけではありません。
矯正治療中の歯は、特徴的な動きをしながら動いているのです。ここでは、矯正中の歯が動く速度と、移動の仕方について説明します。
矯正中の歯が動く速度
矯正治療ですき間を閉じたり、デコボコを並べたりする際の、歯が動く速度は1ヶ月でおよそ1mmです。
このように一般的な矯正治療における歯の動きは、みなさんが想像しているほど急激ではありません。
矯正医は歯がこれよりも早く動きすぎないように、むしろ矯正のチカラを弱く加えるようにしているのです。
なぜなら、矯正治療における歯の動きは、歯を支えている骨を作りかえる細胞の働きによって行われるからです。
そして、その細胞が骨を作りかえるペースを無視して、歯を大きく動かしたり過度に大きなチカラを加えたりすると、歯の根を壊してしまう心配があるからです。
一定ではない矯正中の歯の動き
矯正治療で安全に歯を動かすことができるペースは、1ヶ月に1mmが適当と話しました。
このように聞くと、歯は1ヶ月かけて一定の速度で動いているようにイメージしてしまいます。
しかし、矯正治療中の歯の動きをグラフにすると、階段状の折れ線グラフになっていることがわかります。
つまり、歯は、動かない「停滞期(ていたいき)」と急激に動く「活動期(かつどうき)」を、交互に繰り返しながら動いているのです。
これは、歯の周囲に集まった「骨を改造する細胞」の働きによるものです。
矯正で歯を引っ張った際、歯が動く側の骨に、破骨細胞(はこつさいぼう)と呼ばれる骨を吸収する細胞が多く集まります。
その破骨細胞の働きによって骨が吸収し、その吸収した分だけ瞬間的に歯は動くのです(活動期)。
その後は、また破骨細胞が働いて、骨を吸収するための時間が必要になるのです(停滞期)。
歯に強いチカラを加えて矯正したと思われる事例
以前、大学に入学したばかりの女性が、前歯が大きく動揺することを心配して、私が運営するクリニックに相談にきました。
彼女の歯を診察すると、確かに大きく揺れていました。そのため、レントゲン写真を撮って、歯の状態を確認することにしたのです。
レントゲン写真で確認すると、彼女の歯の根は全体的に非常に短くなっていることが分かりました。
彼女の話によると、昨年まで矯正治療を受けていたそうです。
彼女が治療を受けたのは、芸能人も多く通う有名な歯科医院です。
そのような有名なところであっても、極端に大きなチカラを加えて歯を急いで動かそうとすれば、このようなトラブルが起こりうるのです。
まとめ
矯正治療を行う際は、適切な速度に歯を動かすことが大切です。
なぜなら、急いで歯を動かそうとすると、歯の根を破壊してしまう心配があるからです。
よって、矯正治療を考えているかたは、安全に矯正を行う歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。