以前から、親知らずがアゴ骨に入りきれず、完全に倒れて問題になるケースは多くありました。
しかし、最近のお子さんの中には、親知らずの手前にある12歳臼歯(または、第二大臼歯)までが完全に前傾してしまっているケースを、頻繁に見かけるようになったのです。
いったい、なぜ以前には見られなかったトラブルが、近年、多くのお子さんに見られるようになったのでしょうか? ここでは、12歳臼歯転倒の原因と、その治療について説明します。
早期に現れる親知らず
親知らずは、本来18歳臼歯とも呼ばれ、18歳で歯ぐきから出てくる歯です。その為、レントゲン写真をとっても、以前は中学生くらいまで確認できないことがほとんどでした。
しかし、最近ではこの親知らずが、早い時期に現れはじめるケースが増えています。中には、小学校1〜2年生で親知らずのカタチがレントゲン写真でしっかり確認できることもあります。
しかも、最近の子どもは栄養状態が良いため、親知らずの形態も非常に大きいようです。このように、大きめの親知らずが早い時期に出現することで、手前にある第二大臼歯(または、12歳臼歯)に悪影響を及ぼすことがあるのです。
12歳臼歯の近心傾斜
親知らずの手前にある歯を、12歳臼歯または第二大臼歯といいます。名前からも推測できるように、通常12歳くらいで歯ぐきから顔を出す奥歯です。
親知らずが早く出現したお子さんでは、親知らずとともに12歳臼歯も、前方に倒れてしまっているケースを多く認めます。つまり、親知らずによって、12歳臼歯が押し倒された状態です。
とくに、早期に出現した親知らずが12歳臼歯の上に乗ってしまうと、このように骨の中で大きく傾斜するリスクが高くなります。そのため、親知らずが早期に出現し、しかも前方にあるお子さんでは注意が必要といえるでしょう。
倒れた12歳臼歯の治療
親知らずがあることで12歳臼歯が倒れてしまっているケースで、最初に行うべきことは「親知らずの抜歯」です。ただし、親知らずを抜歯しても、そのあと12歳臼歯が自然に起きることはありません。
そのため、私のクリニックでは、親知らずを抜歯するのと同時に、矯正装置を用いて積極的に倒れた12歳臼歯を起こすようにしています。
なぜ、親知らずを抜歯するのと同時に、急いで12歳臼歯を起こす必要があるのでしょうか?
それは、親知らずを抜いた部分の骨が完成していないからです。12歳臼歯の奥に固い骨が出来上がっていないので、12歳臼歯を起こしやすいのです。
倒れた12歳臼歯に治療を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、小学生の男の子が矯正相談に来ました。かかりつけの歯医者で、下アゴの12歳臼歯が倒れていることを指摘されたため、母親に連れられて来たのです。
かかりつけの歯医者では、親知らずの抜歯が必要と説明を受けたとのことでしたが、男の子も母親も親知らずを抜くことに対して、ひどく心配している様子でした。
男の子のレントゲン写真を見ると、すでに親知らずが出現し、その影響によって12歳臼歯が倒れていることが分かりました。
そこで、12再臼歯を早急に起こすことを提案することにしました。なぜなら、男の子の親知らずはまだ小さい状態だったからです。
そのため、今なら親知らずを抜歯しなくても、12歳臼歯を起こすことができると判断したからです。治療方法について説明すると、男の子はすぐに治療を開始することを決心しました。
今回の治療では、歯ぐきの下に埋まった12歳臼歯にボタンを貼りつけて、ゴムで簡単に引っ張り挙げる方法を選択しています。
そして、5ヶ月ほどゴムで引っ張った結果、予定どおり男の子の12歳臼歯を直立することができました。
12歳臼歯をキレイに起こせただけでなく、親知らずを抜歯せずに済んだことで、男の子も母親も非常に満足しています。
まとめ
親知らずに有無については、小学校低学年の時期から定期的にチェックすることが大切です。
なぜなら、親知らずが早期に出現する場合、奥歯の生え方に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
そのため、お子さんをお持ちの方は、こどもの歯並び育成の実績がある歯科医院を、まずは選択することが非常に大切です。
そして、そのような歯科医院を見つけたうえで、歯の生え代わりや親知らずの状況のチェックを定期的に受けるようにしましょう。