永久歯が、生まれつき不足しているケースがあることを御存知でしょうか? 日本小児歯科学会が行った調査によると、およそ10人に1人に割合で、永久歯の数不足(先天欠損または、先天欠如)が発生しています。
中でも、永久歯の先天欠損が最も発生しやすい場所が、下アゴの第二小臼歯です。犬歯のふたつ奥にある歯または、大臼歯の手前にある歯といえばうまく伝わるでしょうか?
この下アゴの小臼歯は、噛むチカラが比較的強く加わる歯であり、噛み合わせを維持するうえで非常に重要な歯です。そのため、乳歯がなくなったあとに、そのままの状態で放置することはできません。
このように下アゴの小臼歯に先天欠損がある場合、そのように対処すべきなのでしょうか? いくつかの対応方法がありますが、中でも「歯の移植と矯正治療を同時に行う方法」は非常にオススメです。
ここでは、下アゴ小臼歯の先天欠損と、歯の移植を用いて回復する方法について説明します。
乳歯の寿命
下アゴの第二小臼歯が先天欠損である分かった場合、最初に注目すべきは「乳歯の根の状態」です。根が十分に長ければ、その乳歯を今後も使用できると判断できるからです。
中には70歳を過ぎた方でも、乳歯がしっかりと残っている事例を見かけることがあります。その人達に共通していえることは、乳歯の根がしっかり残っていることです。
そのため、乳歯の根の状態が良いケースでは、乳歯を積極的に残すことを優先的に考えます。
根の状態が良くない乳歯
問題になるのは、乳歯の根が短くなっている場合です。近い将来、その乳歯は自然に抜け落ちてしまうことが予想されるからです。
よって乳歯の根が短くなっていることが確認された場合、私のクリニックでは「矯正治療で対応することができないか」ということを、最初に検討するようにしています。
なぜなら、「ブリッジやインプラントなどの補綴治療(ほてつちりょう)に比べて、矯正治療の方が、負担が少ない治療である」と考えているからです。
また、ブリッジやインプラントを行う治療では、健康な歯を大きく削ったり、骨の中に人工歯根を埋め込んだりする必要があります。よって、身体への負担だけでなく、治療後のメンテナンスについても不安視しているからです。
その点、矯正治療によって解決することが可能であれば、身体への負担も比較的少なくすることができます。また、治療後のメンテナンスについても、特別な配慮を必要としないからです。
歯の移植を併用する矯正治療
出っ歯の治療法の中に、歯を抜いて行う矯正治療があります。上アゴの第一小臼歯(犬歯の隣にある歯)を抜いて、前歯を引っ込めるという方法です。
下アゴの小臼歯が先天欠損しているお子さんに出っ歯の傾向がある場合、積極的にこの歯を抜いて行う矯正治療を提案するようにしています。
なぜなら、抜いた上アゴの小臼歯を、下アゴの先天欠損がある部分に移植することができるからです。特に、乳歯の根が短くなっている場合、小臼歯を移植することでブリッジやインプラントを回避することができるのです。
まとめ
先天的欠損がある場合、歯の移植を積極的に考えてみてはいかがでしょうか? 移植を行うことで、ブリッジやインプラントなどの侵襲の大きな治療を回避することができます。
よって、下アゴの小臼歯がないという方は、歯の移植治療について実績のある歯科医院を選択することが大切です。そして、そのような安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。