お子さんの永久歯が「何本も不足している」と聞いて、ショックではありませんでしたか? 「いったい、将来どうなるのだろう・・・」と不安に感じたはずです。
生まれつき永久歯が不足(または、先天欠損)している子どもの割合は、およそ10人に1人です。その中でも、半分は1本だけでなく、2本以上の歯が不足していることが分かっています。
ここでは、お子さんの複数の永久歯が不足している問題を、矯正治療で改善する方法について説明します。
歯が不足する場合の治療法
複数の歯の不足がある場合、そのままの状態で放置することは好ましくありません。なぜなら、放置した状態だと、歯並びや噛み合わせが大きく崩れてしまう心配があるからです。
その際、一般的な歯科医院では、「矯正治療が有効であること」を知らせていません。通常は、「ブリッジ(もしくは、連結冠)」もしくは「インプラント」のいずれかを提案することがほとんどです。
そのため、そのままブリッジやインプラント治療を受けているケース、またはブリッジやインプラント治療を受けた後に後悔する患者が少なくないのです。
ブリッジのデメリット
ブリッジとは、まさに口の中にかける橋のことです。両サイドの歯を橋の脚(あし)にして、歯が不足する部分のすき間に、人工の歯を宙づりにするのです。
ブリッジを行う際には、橋の脚になる歯にも冠(かん)をかぶせるため、歯を大きく削る必要があります。場合によっては、歯の神経を取り除いて冠をかぶせることもあります。
そのため、歯の寿命に悪影響を与えてしまうことを心配しています。なぜなら、保険治療で行うブリッジは、通常5〜7年でダメになってしまうことが分かっているからです。
インプラント治療については、歯を削ったりする必要がないため、個人的にはオススメできる治療方法です。ただし、必要な本数が多くなると、治療費が大きくなるため誰もが選択できる方法ではありません。
矯正治療による対応
矯正治療を用いることによって、複数の歯が不足する問題を解決することができます。
たとえば、歯が不足した部分のすき間を、矯正で閉じてしまう治療です。
ただし、「不足する歯の位置」「上下アゴ骨のバランス」「噛み合わせの状態」などの条件によって、すべてが矯正治療だけで解決できるとは限りません。
当然、矯正治療では寄せることができず、インプラント治療が必要になるケースもあります。しかし、このようなケースでも、矯正治療を行うことで「必要なインプラントの数を少なくする」ことができます。
そのため、簡単にブリッジやインプラント治療を決断する前に、「矯正治療で対応すること」について相談することが非常に大切なのです。
実際に、複数の永久歯が不足していた事例
以前、私が運営するクリニックに、歯の先天欠損をもつ中学生の男の子が、矯正相談にきました。かかりつけの歯科医院でレントゲン撮影を行った際、「永久歯が3本不足している」ことが判明したそうです。
その時、その歯科医院では、ブリッジとインプラントを用いる治療法について提案がありました。しかし、どちらの治療についても、男の子は拒絶反応を示したようです。
レントゲン写真をみると、下アゴの左右の奥歯と、右上の奥歯が不足していることが分かりました。そこで、私は左上の奥歯を抜いて、全体のすき間を矯正治療で寄せることを提案することにしました。
なぜなら、矯正治療に必要な検査の結果、アゴの大きさが、上下バランスよく整っていることが分かったからです。そのため、左上奥歯を抜いて、歯の本数を上下左右でそろえることが適切と判断したからです。
治療方法について説明すると、男の子はすぐに矯正治療を受けることを決心しました。左上の奥歯を抜いて、全体にブラケット(まらは、矯正器具)をつけて、すき間を寄せるようにしました。
20ヶ月調整を行うことで、予定どおり、全部のすき間をキレイに閉じることができました。ブリッジやインプラントを用いる治療を回避できたことに、男の子は非常に喜んでいます。
まとめ
先天的欠損がある場合、矯正治療による対応を一度相談することをオススメします。矯正治療を行うことで、ブリッジを回避することができるからです。
よって、お子さんの永久歯が複数不足しているという方は、歯の健康を考慮して治療計画をたててくれる歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。