「お子さんの永久歯が不足している」と知って、心配にならない保護者はいません。きっと、どの親御さんも、お子さんの将来の歯並びや噛み合わせについて、ひどく心配しているのではないでしょうか。
近年、お子さんのアゴ骨が、徐々に小さくなってきていると同時に、「歯の本数不足(または、先天欠損)」の発生も増加傾向にあります。最近の調査では、10人に1人の割合で、歯の本数不足が発生することが分かっています。
中でも、下アゴの前歯は、永久歯の不足が発生しやすい部位です。下アゴの前歯は、乳歯の生え代わりが最初に始まる部位でもあるので、特に保護者も心配になってしまうのです。
下アゴ前歯が不足している場合、将来どのような治療方法があるのでしょうか? ここでは、下前歯の本数不足による影響と、その際の治療方法について説明します。
下アゴ前歯の欠如
下の前歯に本数不足があると、下アゴが小さくしぼんでしまいます。そのため発生するのが、「出っ歯」や「過蓋咬合(かがいこうごう)」の問題です。
過蓋咬合とは、下の前歯が見えなくなるくらい深い噛み合わせのことです。前歯の噛み合わせが深いために、下アゴをスムーズに動かすことができません。
そのため、顎関節症が発生するリスクが高いといえるでしょう。さらに悪くすると、顎関節が磨り減ったり、変形したりすることもあるので十分に注意が必要です。
下アゴ前歯に欠如がある際の治療
下顎の前歯の本数不足による噛み合わせの問題を改善するためには、「歯の本数を上下でそろえる」ことが大切です。そのための手段として、大きく2つの方法があります。
それは、「下アゴ前歯の本数を増やす方法」と、「上アゴの歯を減らす方法」の2つです。それぞれ、患者さんの骨格のタイプに合わせて、適切に治療方法を選択することが重要です。
前歯の本数を増やす方法
前歯の本数を増やす方法とは、下アゴの前歯部分にスペースを積極的につくる方法です。その後、できたスペース部分に、人工の歯(または、差し歯)をいれる方法です。
このように不足する前歯を人工的におぎなうことで、上下アゴの歯の数をそろえることができます。また、上下の歯の数を合わせることで、全体の噛み合わせも改善するのです。
ただし、この本数を増す方法が有効なのは、口元が比較的整っているタイプの患者さんに限られます。たとえば、口元が突出したタイプの患者さんにこの方法を用いても、口元の状態は悪化してしまいます。
そのため、口元の改善が必要な患者さんには、次の「上アゴの歯を減らす方法」を選択する必要があります。
上アゴの歯を減らす方法
上アゴの歯を減らす方法とは、上アゴの歯を抜歯する方法です。抜歯によって、上アゴの歯を減らすことで、上下の歯の本数をそろえることができます。
このようにすることで、上顎の正中の位置を正しく改善することができるのです。ただし、この歯の数を減少する方法は、口元が突出したタイプの患者さんに限り有効です。
なぜなら、上アゴの歯を抜歯してできたスペースを閉じる際、上アゴの前歯が後方に大きく移動するからです。たとえば、口元が突出していない患者さんに、抜歯する方法を用いると、口元が下がり過ぎた横顔になってしまうからです。
これは、老人顔貌も原因となることがあるので注意が必要です。治療法を選択する際には、口元の状態と骨格のタイプについては十分診査を行って判断することが重要です。
まとめ
「歯の本数不足」の異常をもつお子さんの割合は、およそ10人に1人とさほど珍しくありません。どの部位が不足しているかだけでなく、「骨格のタイプ」や「口元の様子」によって将来必要な治療法が異なってきます。
そのため、歯の本数不足がある場合、子どもの歯並び育成について実績のある歯科医院を選択することが重要です。そして、そのような歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くことをオススメします。