矯正治療を行う際には、特殊な方法で撮影するレントゲン写真が必要になります。「セファログラム」もしく「頭部X線規格写真」と呼ばれるものです。
このセファロ分析が、矯正治療を行ううえで必要となる理由は、治療計画をたてる際に重要なデータが得られるからです。そして、治療経過を判断するために、非常に有効だからです。
セファログラム(以下、セファロ)の中には、正面から撮影した「正面セファロ」と、顔の横顔をとった「側方セファロ」がありますが、ここでは、セファロ分析の中でも、正面セファロの分析からえられる情報について説明します。
正面セファロとは
正面セファロは、顔が正面を向いた状態、頭部をしっかり固定した状態で撮影します。
このように、頭部が真正面を向いた状態で撮影されていることが、非常なポイントになるのです。
なぜなら、真正面から撮影されていることで、顔の正中を正確に設定したり、左右の対称性を評価したりすることができるからです。
もしも、頭部の固定が不安定で、正面セファロがやや側方、もしくは上下を向いた状態で撮影されたものであれば、顔の正中を設定したり、左右の対称を評価したりすることは無意味だからです。
正面セファロにおける分析
顔のゆがみ
正中セファロを用いた分析で最初に行うのが、「顔のゆがみ」についての評価です。
正中セファロでは、眉間(みけん)および鼻中隔(びちゅうかく)を確認することができるため、「顔の正中線」を正確に設定することができます。
そして、この顔の正中線を基準とすることで、顎のゆがみ、つまり顔全体のゆがみの程度を診断することができるのです。
たとえば、奥歯の噛み合わせに問題があったり、噛み合わせの高さに左右差があったりするケースです。このような異常がある場合、下アゴを真っ直ぐに閉じることはできません。
そのため、左右いずれかに下アゴをずらした状態、つまりアゴをゆがませた状態になっています。
このような状態で放置すると、アゴ骨の大きさに左右差が生じたり、顎関節に悪影響が及んだりするリスクがあるので、適切に対応が必要になるのです。
前歯の傾斜
次に行うのが、「前歯の傾き」についての評価です。
なぜなら、上の前歯の傾きが、見た目に大きく関係しているからです。
実際には、正面セファロ上で引いた顔の正中線と、上アゴの前歯が接してできる線、つまり歯並びの真ん中にできる線を比較します。
もちろん、歯並びの真ん中にできる線が、顔の正中線とずれていないかについても評価します。しかし、それ以上に大切なのは、歯並びの中心にできる線の傾きについてです。
なぜなら、歯並びの真ん中の位置が正中線からずれても、周囲はあまり気にならないからです。
それよりも、「歯並びの中心にできる線が、顔の正中線と平行ではない」場合、周囲の人は違和感をすぐに感じてしまうのです。
そのため、歯並びの真ん中にできる線については、正確に診断し、そして異常がある場合は、適切に対処する必要があります。
顎の非対称
正面セファロの分析で最後に行うのが、「アゴ骨の形態」についての評価です。
正面セファロは、顔が正面を向いた状態で撮影するため、アゴ骨の形態についても正確に診断することができます。
たとえば、顔にゆがみがある状態を放置すると、成長の影響により、アゴ骨の形態が左右で大きく異なってしまうケースがあります。
アゴ骨の大きさが左右で極端に異なるケースでは、矯正治療だけで、顔の歪みを改善したり、噛み合わせを整えしたりすることが困難だからです。
このようなケースでは、矯正治療だけでなく、全身麻酔による外科手術を用いて、顔の非対称を改善したり、適切な噛み合わせにしたりする必要があるのです。
このように、治療計画を誤らないためにも、正面セファロによる分析は非常に重要なのです。
まとめ
矯正治療の診断を行う際には、セファログラムを用いて分析することが非常に重要です。
なぜなら、セファロ分析を行わず、適切に治療計画をたてることはできないからです。
よって、矯正治療を考えている方は、必ずセファロ分析を行って診断する歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を選択したうえで、矯正相談に行くようにしてください。