矯正相談を訪れる人のほとんどが、「矯正治療中に発生する痛み」について心配します。
残念ながら、矯正治療を開始したら、必ず痛みは発生します。
しかし、矯正治療による痛みは、激痛でも、みなさんが想像している痛みとはちょっと異なります。
じっとしていても感じる痛みでもありません。強く噛みしめた際に感じる痛み(または、咬合痛)です。
しかも、通常は3日から1週間ほどで落ち着くため、あまり深刻になる必要はないのです。事実、私のクリニックでは、年間1,000人以上の患者さんが何らかの矯正装置を装着しています。
しかし、その際の痛みが原因で、矯正治療を中断したり諦(あきら)めざるを得なかった患者さんは1人もいないのです。
ここでは、歯列矯正を開始した際に発生する歯の痛みについて説明します。これを読むことによって、歯列矯正の痛みに関する心配がきっと軽減するはずです。
歯列矯正中に発生する痛みの原因
歯は骨によって支えてありますが、歯と骨が直接くっついているわけではありません。「歯根膜」という繊維性のクッションが、その間に介在しています。
歯根膜は、歯に加わったチカラを敏感に感じるセンサーとなっている部分です。そのため、血管や神経が非常に豊富に存在しています。
歯に矯正力を加えた際、この血管と神経を圧迫するため、貧血や炎症が発生するのです。そのため、機械的な刺激、つまり噛むチカラが加わった際に痛みを感じてしまうのです。
歯列矯正中に発生する痛みの特徴
噛んだ時だけ感じる痛み
「歯列矯正によって生じる痛みが、虫歯で感じる痛みと同じ」と、勘違いしていませんか?
歯列矯正によって生じる痛みは、まったくことなります。
歯列矯正による痛みは、じっとしている状態でズキズキ痛んだり、痛みが強くて眠れなかったりするほどではありません。
なぜなら、歯列矯正によって生じる痛みは、噛んだ時にだけ感じる痛みだからです。
そのため、歯にチカラを加えない状態では、ほとんど痛みを感じることはないのです。
徐々に軽減する痛み
「歯列矯正によって生じる痛みは、矯正治療中ずっと続く」と、勘違いしていませんか?
歯列矯正によって起こる痛みは、あくまでも一時的なものです。
そのため、矯正装置が付いている期間、つまり2〜2.5年の間ずっと痛みが続くということはありません。
通常は、3日から1週間ほどで落ち着くことがほとんどなのです。たとえ、痛みを強く感じることがあったとしても、数日後には痛みをほとんど感じなくなっているはずです。
矯正治療による痛みの対処法
痛み止めの服用
痛みの強さ、感じ方には、それぞれ個人差があります。しかし、矯正治療による痛みに対して、痛み止めを飲むことはほとんどありません。
私のクリニックで治療した患者さんに尋ねると、100人のうち5人程度の人が「痛み止めを服用した」と答えています。
ただし、そのほとんどが1回だけ服用、もしくは1日だけ服用しただけです。中には痛み止めを1週間飲み続けた患者さんがいますが、すべて成人の女性です。
しかも、その成人女性の全員が、1週間目には「単に痛みが心配で服用した」と答えていますので、あまり心配する必要はないでしょう。
食事のメニューを工夫する
矯正装置をつけて治療開始して1週間もすると、普通の食事がある程度できるようになります。しかし、はじめの1週間については、やわらかい食事しか採ることができないでしょう。
やわらかく炊いた御飯、カレーライス、ハンバーグ、野菜の煮物、茶碗蒸しなどが、比較的食べやすいようです。私自身が矯正装置を付けた際には、パン、うどん、シチューではじめの1週間ほどをしのぎました。
その後は、アメ玉を噛んだり、氷を噛み割ったりしたくはありまんでしたが、普通の食事が徐々に食べることができるようになりました。
まとめ
矯正装置をつけて矯正をはじめると、必ず痛みが発生します。しかし、その痛みはあくまで一時的であり、徐々に落ち着くので過度の心配は不要です。
特に、最初の1週間は、噛んだ時の痛みが比較的強く感じる期間です。最初の1週間を、やわらかい食事や痛み止めで、なんとかしのぐようにして下さい。
そのようにすれば、1週間後には、ある程度の硬さの食べ物も噛むことができるようになります。また、ワイヤーがしっかり太くなるに従い、ほとんど痛みを感じなくなるので安心していてください。