矯正治療を経験したことがない人が、突然、歯ならびが崩れてきたり、前歯のデコボコが悪くなったりすることを御存知でしょうか? そのため、30歳もしくは40歳を過ぎてから、矯正相談にくる方が少なくありません。
なぜ、このように歯ならびの問題が発生したり、悪化したりすることがあるのでしょうか? それには、いくつかの原因があります。
ここでは、矯正治療を経験したことがない人にも起こりうる「大人になって、突然、歯ならびが悪化する原因」について説明します。
奥歯が倒れる
矯正治療では奥歯をキチンと直立するため、噛むチカラが加わっても、奥歯が動いたり倒れたりすることはありません。
しかし、矯正治療を受けたことがない人の奥歯では、わずかに前方傾斜している場合がほとんどです。そのため、噛むチカラが加わることによって、徐々に奥歯が倒れる傾向があるのです。
奥歯の前傾が強くなると、そのしわ寄せは前歯に現れてきます。年齢とともに、前歯の歯ならびが崩れたり、デコボコが悪化したりするのはそのためです。
下前歯の傾斜
奥歯が倒れると、それに伴って噛み合わせも低くなります。このことは、ハサミをイメージすると容易に想像することができます。
根元で物を切ろうとするとき、ハサミの刃先は大きく離れています。しかし、ハサミを閉じるにつれて、刃先同士が当然近づきます。
同じように、奥歯の高さが低くなると、下前歯には内側に押し込もうとするチカラが働くようになります。なぜなら、上の前歯が被(かぶ)さっているからです。
そのため、下の前歯は徐々に内側に傾斜し、それに伴って前歯にデコボコが発生してしまうのです。
歯周病の影響
通常、歯は骨によって、しっかりと支えられています。そのため、簡単に移動したり、傾いたりすることはありません。
しかし、歯周病にかかり進行すると、歯ならびや噛み合わせにも悪影響が出ます。なぜなら、歯周病は、歯を支えている骨が細菌感染によって失われる病気だからです。
そのため、骨の支えが少なくなった歯は、簡単に移動したり、傾いたりしやすくなるのです。さらに歯周病が進行すると、噛むチカラだけでなく、舌や頬のチカラにも影響されるようになるので注意が必要です。
実際に、前歯のデコボコを治療した事例
以前、私が運営するクリニックに、前歯のデコボコ治療を希望する50代の女性が、矯正相談にきました。女性のはなしによると、前歯のデコボコがひどくなったため、矯正を受けたいと希望するようになったそうです。
そこで、私は、ブラケット(または、矯正器具)を全体につけて矯正治療をすること、奥歯を起こして前歯のデコボコを改善することを提案することにしました。
なぜなら、矯正治療に必要な検査の結果、彼女の奥歯がかなり前傾していることが分かったからです。そのため、噛み合わせが低くなり、結果として前歯のデコボコが悪化していたのです。
女性に治療方針について説明すると、表につける矯正装置には少し抵抗があったものの、すぐに矯正治療を開始することを決心しました。
全体にブラケットを装着して、矯正治療を開始しましたが、当初は治療が停滞(ていたい)しました。なぜなら、矯正治療によって発生する痛みが比較的激しく、痛みがなかなか治(おさ)まらなかったからです。
それでも半年後には、日常生活に支障がない程慣れることができました。そして、矯正治療を開始してから25ヶ月後には、予定どおり前歯のデコボコを改善することができました。
キレイになった前歯の様子に、女性は大変喜んでいます。その後も、キレイな歯ならびを維持するため、しっかりと定期検診に通っています。
まとめ
30代または40代になって、前歯にデコボコが発生したり、以前より悪化したりすることがあります。特に奥歯が前傾しているタイプ、もしくは歯周病が進行した人に起こりやすいといえるでしょう。
そうような大人の方にも、矯正治療が非常に有効です。歯周病治療と同時に、矯正治療で奥歯をしっかりと直立させることで、噛み合わせが崩れることを効果的に予防することができます。
そのため、前歯がデコボコになった人は、大人の矯正について実績のある歯科医院を選択することが大切です。そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。