近年、お子さんのアゴ骨が、徐々に小さくなってきているということが言われています。それと同時に、「歯の本数不足」の問題がある子どもが増加傾向にあります。
この生まれつき不足する歯のことを、先天欠如歯(せんてんけつじょし)または、先天欠損歯(せんてんけっそんし)といいます。
特に、この歯の本数不足が発生しやすい部位が、「下アゴの前歯」です。左右の犬歯の間には、通常4本の前歯があるはすです。
しかし、最近のお子さんの中には、前歯が3本または2本しかない子どもの割合が増加傾向にあるのです。前歯に本数異常があることで、お子さんの歯ならびや噛み合わせには、どのような影響があるのでしょうか?
ここでは、下前歯の本数不足による影響と、その際の治療方法について説明します。
下アゴの前歯不足による影響
下の前歯の本数不足があると、下アゴが小さくしぼんでしまう傾向があります。そのため発生するのが、「出っ歯」や「過蓋咬合(かがいこうごう)」の問題です。
過蓋咬合とは、下の前歯が見えなくなるくらい深い噛み合わせのことです。前歯の噛み合わせが深いために、下アゴをスムーズに動かすことができません。
そのため、顎関節症が発生するリスクが高いといえるでしょう。さらに悪くすると、顎関節が磨り減ったり、変形したりすることもあるので十分に注意が必要です。
下アゴの前歯不足に際の治療法
一般的な治療法
下アゴの前歯不足があるケースでは、以下の2つの治療方法が一般的です。その中から、いずれかを選択して治療を開始するようになります。
①上アゴの歯を抜歯して、上下の歯の本数を同じにする
②下アゴの前歯部分にすき間をつくって、差し歯(または、ブリッジ)をかぶせる
1つ目の方法では、上の歯を抜歯する必要があります。もう1つは、歯を大きく削る必要があります。場合によっては、歯の神経を取り除く必要があるかもしれません。
いずれの治療法も、少し抵抗を感じませんか? 特に、歯を削ってブリッジをかぶせる治療については、同じように拒否反応を示す方は少なくないのです。
レジン修復を用いた治療法
下アゴの前歯不足がある患者さんに対して、私のクリニックでは「レジン修復」を用いた治療を行います。なぜなら、レジン修復による治療は、患者さんにとって負担の少ない治療と言えるからです。
レジン修復とは、歯の表面にプラスチック様の材料(または、レジン)を貼りつけて行う治療です。そのため、歯を削ったり、歯を抜いたりする必要がないのです。
まず、矯正治療で下アゴを広げ、前歯部分にすき間をつくります。その後、レジン修復で歯の形態をつくることで、スペース部分をキレイに閉じることができるのです。
実際に、矯正治療を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、出っ歯の治療を希望する女の子が矯正相談にきました。口の中をみると、彼女の下アゴには前歯が2本しかないことが分かりました。
そのため、下アゴが小さくしぼみ、彼女の噛み合わせは深く、前歯が出っ歯の状態になっていたのです。そこで、下アゴを拡大し、レジン修復で歯の形態を修正する治療法を提案することにしました。
治療方法について説明すると、女の子はすぐに治療を開始することを決断しました。矯正治療に対して抵抗がなく、どこか楽しみにしている様子にも見えました。
全体の歯にブラケット(または、矯正器具)をつけて、下アゴを広げると、予定どおり前歯にはすき間をつくることができました。
その後、すき間をレジン修復で整えることで、彼女の深い噛み合わせと、出っ歯をキレイに改善することができました。すっかり変わった噛み合わせの様子をみて、女の子は非常に喜んでいます。
まとめ
下アゴ前歯の不足には、矯正治療をレジン修復による治療が有効です。なぜなら、歯を抜いたり、削ったりする必要がないため、患者にとって負担が少ない治療と言えるからです。
そのため、下アゴ前歯が不足している方は、矯正治療だけでなく、総合的な見地から診断できる歯科医院を選択することが重要です。
そのような安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。