小学校にあがる頃になると、お子さんの前歯が抜け始めます。この時期のお子さんの歯並びについて、保護者の方にはぜひ注意して観察して欲しいことがあります。
それは、永久歯が生えるための「すき間」についてです。最近のお子さんは、アゴ骨の形態が小さい傾向にあり、永久歯が自然に伸び出してくることができないケースが多くなっているのです。
ここでは、アゴ骨のスペース不足と、その対応について説明します。
萌出スペースが不足の原因
永久歯が生えるスペース(または、すき間)が不足しているのは、お子さんのアゴが小さいからです。そのため、「アゴの形態を大きくできれば・・・・・」と、誰もが考えるはずです。
実際に、アゴを広げて形態を大きくすることができます。しかし、それには期限があります。アゴ骨を大きくすることができるのは、お子さんが成長期にある時期に限られているからです。
成長期が終わると、アゴ骨の形態を拡大することはできなくなります。そのため、成長期を過ぎたお子さんの治療では、歯を抜歯したり、ミニインプラントを用いたりしてすき間をつくるなど、大がかりな矯正が必要になってくるのです。
永久歯のスペースをつくる
永久歯が生えるスペース(または、すき間)が不足しているお子さんに対して、私のクリニックでは、積極的にアゴ骨の拡大を行います。
その際、「ポーター型拡大装置」と「ユーティリティアーチ」の2つの矯正装置を用いることによって、効果的にスペース不足を改善することができます。
ポーター型拡大装置
ポーター型拡大装置は、お子さんのアゴ骨を広げるために用いる矯正装置です。成長期のお子さんのアゴ幅を、大きくするのに、非常に有効です。
奥歯にセメントでしっかりと固定して用いる装置なので、その分早く、大きく、確実に拡大することができるといえるでしょう。
一般的には、1ヶ月毎に歯科医院で調整することが必要になります。毎回、少しづつ奥歯に加わるチカラが強くなるように、拡大装置を調整するのです。
ユーティリティアーチを用いた治療
ユーティリティアーチを使う治療とは、上あごの前歯4本に矯正器具(ブラケット)を貼り付けた後、ワイヤーを使ってアゴ骨を前方に広げる矯正装置です。
この方法は簡単に用いることができ、しかも効果を確実に発揮することができるため、アゴ骨の前方拡大では頻繁に用いる便利な方法です。
この装置も、1ヶ月毎に歯科医院で調整することが必要になります。毎回、少しづつ前歯に加わるチカラが強くなるようにワイヤーを調整するのです。
実際に、永久歯のスペース不足改善を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、下の前歯に永久歯が生えるためのスペースが不足した男の子が、矯正相談にきました。
下の乳歯が抜け落ちた際に、「子どものアゴに、あらたな永久歯が生える隙間がない」ことに気がついた母親が、心配して連れてきたのです。
そこで、私はポーター型拡大装置とユーティリティアーチを使って矯正することを提案することにしました。なぜなら、矯正治療に必要な検査の結果、男の子のアゴ骨の形態が非常に小さいタイプであることが判明したからです。
矯正装置の説明をすると、なぜか男の子は喜んで治療開始することを決めました。仲良しの同級生も矯正治療を受けているので、男の子も「自分も矯正装置をつけてみたい」と思っていたようです。
ポーター型拡大装置を用いて8ヶ月拡大したあと、ユーティリティアーチを用いて前後的にもアゴ骨を整えることができました。
その結果、アゴが狭く出てこられなかった前歯も、無事に生えることができました。キレイに永久歯を並べることができて、男の子も喜んでいます。
まとめ
永久歯のスペース不足には、アゴ骨の大きくする矯正が有効です。アゴの成長が残っているおこさんであれば、永久歯が生えるための隙間を効果的につくることができます。
そのため、お子さんの永久歯のスペース不足が心配な方は、子どもの歯並び育成について実績のある歯科医院を見つけておくことが重要です。
そして、そのようなお子さんの治療を安心して任せられる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。