「矮小歯(わいしょうし)」とは、幅が狭い、通常より小さいタイプの歯のことです。
人間が進化する過程で、役割が少なくなった歯が、徐々に退化する結果おこるものと考えられています。
完全に遺伝子に組み込まれたプログラムによるものなので、残念ながら何らかの方法で防ぐことはできません。
ここでは、矮小歯と、矮小歯がある場合の対応法について説明します。
矮小歯が出現しやすい場所
矮小歯が現れやすい部位が、上アゴの前歯です。特に、犬歯の隣にある側切歯(そくせっし)でよく見られます。
この側切歯が、短小だったり、爪楊枝(つまようじ)のように細い棒状になっていたりするケースがあるのです。
矮小歯によって発生するのが、「見た目の問題」と「噛み合わせの問題」です。これらの矮小歯に関わる問題は、矯正治療だけで解決することはできません。
そのため、場合によっては矮小歯を人工的に大きくする必要があります。
レジン修復による利点
レジン修復(または、ダイレクトボンディング)とは、歯にプラスチック様の材料(または、レジン)を貼りつけて、歯の形態を修正する方法です。
私のクリニックでは、このレジン修復を用いて、矮小歯の形態修正を行います。なぜなら、他のセラミックを用いた治療と比べて多くのメリットがあるからです。
歯へのダメージが少ない
レジン修復による形態修正は、歯にとって「非常にやさしい治療」ということができます。なぜなら、この方法は、歯をほとんど削ることなく行うことができるからです。
たとえ、何度も繰り返しレジン修復を行ったとしても、歯にダメージを与えることはありません。このことは、歯を将来にわたって健康に維持するためにも非常に大切なことです。
レジン修復は審美的
レジン修復では、歯の形態や、色合わせを正確に行うことができます。なぜなら、レジン修復による形態修正は、口の中で矮小歯に対してダイレクトに行う方法だからです。
そのため、周囲にある歯の形態や、配色とバランスをとりながら行うことができます。これは、前歯の修復を審美的に仕上げる際に、大きなメリットになります。
歯の色調の変化
ところで、歯の色調は年齢とともに変化することをご存じでしょうか? 歯は年齢とともに、透明感がなくなり、色味が強くなってくるのです。
また、若い女性であれば、歯のホワイトニングを行う人もいるでしょう。その際にも、レジン修復を行った歯とその他で、大きく歯の白さが異なってしまいます。
これらの点でも、矮小歯の形態修正にレジン修復を用いるメリットが大いにあります。
なぜなら、以前治療した歯の色が合わなくなった際では、レジンによる修復では、簡単にやり直しできるからです。しかも、歯にまったくダメージを与えることなくできるのです。
実際に矮小歯の形態修正をした事例
以前、私が運営するクリニックに、受け口の治療を希望する大学生が矯正相談にきました。彼の口の中を観察すると、左の側切歯に矮小歯があることが分かりました。
そのため、通常のワイヤーを用いた矯正治療と、レジン修復による形態修正を行うことを提案することにしました。
なぜなら、上下の前歯をキレイに噛み合わせるためには、矮小歯の形態修正が必要と判断したからです。
約2年間、ブラケット(または、矯正器具)を付けて矯正を行った結果、受け口の噛み合わせを改善することができました。
ブラケットとワイヤーによる矯正治療が完了した後で、矮小歯の形態修正を行っています。
矮小歯の形態を改善することで、全体の歯並びの印象も大きく改善することができました。
矮小歯を形態修正したことによる印象の変化に、彼自身もビックリしていました。
まとめ
矯正治療後の矮小歯の形態修正には、レジン修復を用いた方法がオススメです。
なぜなら、レジンを用いた方法は、審美性にすぐれた方法というだけでなく、歯にとっても非常にやさしい治療だからです。
矯正治療を開始することを考えている方は、矮小歯の形態修正についても、正しく説明してくれる歯科医院を選択することが重要です。
そして、歯の形態修正についてコーディネートできる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。