たとえば、出っ歯(または、上顎前突症)や、ごぼ口(または、両顎前突症)のケースで口元が大きく突出しているケースでは、歯を抜歯して前歯を引っ込める矯正で、キレイな口元に仕上がることができます。
最近では、「E-ライン」について、テレビや雑誌でも頻繁に取り上げられていることもあり、自分の口元への関心が高まっています。
しかし、同時に「自分の口元が、突出しているのではないか」「自分の口元は、キレイなEラインになっていない」と、極端に神経質になりすぎている方が増えていることも確かです。
そのため、前歯を引っ込め過ぎていたり、前歯の状態の悪くしたりしているケースを多く見かけるようになったのです。
ここでは、不適切に口元を引っ込めた結果発生するトラブルについて説明します。
Eラインとは
Eライン(イーライン)とは、横顔の美しさを評価する基準として、現在もっとも頻繁に用いられているものです。
顔を真横から見た状態で、鼻の頭と下あごの先端を結んでできる線(Eライン)と、口唇との位置関係で評価します。
具体的には、このEラインに口唇が触れるか触れないかという状態が、日本人の横顔がもっともキレイに見えるバランスと一般的には言われているのです。
Eラインの功罪
Eラインによる洗脳
横顔の美しさを評価する基準として、Eラインはあまりにも有名です。
なぜなら、歯科医療関係者および美容整形関係者によって、Eラインについての情報が過剰に発信されているからです。
そのため、「わたしの口元は、キレイなEラインになっていない」「キレイなEラインに治療しなくては・・・」など、Eラインにひどく取り憑かれてしまっている人が、多く存在するようになってしまたのです。
そもそも基準線が間違っている
Eラインだけで横顔の美しさを判断することは、非常に危険です。なぜなら、Eラインを形成する鼻の頭の高さ、および、あご先の形態にそもそも問題があるケースが少なくないからです。
当然、西洋人と比べて、日本人の鼻やあご先の形態は非常に華奢(きゃしゃ)です。そのため、Eラインの設定位置が、そもそも間違っている可能性が高いのです。
この間違ったE-ラインで横顔を評価すると、前歯を下げすぎてしまう結果になってしまうので注意が必要なのです。
前歯だけで解決しようとする間違い
Eラインは、鼻の頭、あご先、口唇の3つのバランスによって構成されています。
そのため、口唇の位置だけに変化を加えて、Eラインを整えようとすること自体、非常に無理があるのです。
つまり、「歯列矯正を受けた結果、口元の様子が劇的に改善した」という事例は、鼻が比較的高く、あご先の形態がある程度しっかりしているケースであることがほとんどなのです。
前歯の引っ込め過ぎたことよる悪影響
口元の印象への悪影響
口元を下げると、大人っぽい印象になる効果があります。しかし、やり過ぎると過度の老け顔、鼻の下が伸びた印象になるので注意が必要です。
さらに、20代前半まではパンパンに張りのある頰や口周りの筋肉も、20代後半から30代からすでに痩せたり、緩みはじめたりします。
その際、口元のほうれい線(または、法令線)がハッキリと現れるようになります。とくに、前歯を大きく引っ込め過ぎたケースでは、ほうれい線が深く現れる心配があるので注意が必要なのです。
後戻りへの影響
前歯の引っ込め過ぎは、歯並びや噛み合わせの安定にも影響してきます。
たとえば、舌のチカラによって、前歯が噛み合わなくなったり、前方に押し出されて倒れてしまったりするケースです。
なぜなら、前歯を極端に引っ込め過ぎた場合、口の中の空間を異常に狭くしてしまうからです。
そして、そのことによって、舌の力が常に前歯に加わるようになってしまうからです。
歯への影響
前歯の下げ過ぎは、歯の寿命にも悪影響を与える心配があります。なぜなら、骨が存在する範囲を超えて、歯を移動することはできないからです。
しかし、実際には、骨が存在する範囲を超えて、前歯を引っ込めようとしたり、もしくは、前歯を下げることを要求したりする患者さんは少なくありません。
当然、限度を超えて前歯を移動すると、前歯の歯根を破壊してしまったり、歯根が骨から露出してしまったりするのです。
前歯の引っ込めすぎを防ぐための対策
精密検査でしっかり診査する
歯列矯正をはじめる前には、精密検査を行ってしっかりと診査することが非常に重要です。
なぜなら、精密検査を行うことで、安全に前歯を引っ込めることができる限度を知ることができるからです。
そうすることによって、前歯の寿命に悪影響を与える心配がなくなるのです。
形成外科も考慮する
鼻の高さや、あご先の形態に問題がある場合、歯列矯正だけでなく形成外科治療についても考慮する必要があります。
なぜなら、Eラインを用いる場合、鼻の高さが十分にあること、あご先の形態がしっかりしていることが大前提だからです。
そのため、鼻の高さやあご先の形態に問題があるケースでは、歯列矯正だけで口元の改善をはかろうとすることは厳禁なのです。
冷静になる
最後に、一旦、とにかく冷静になることです。Eラインに取り憑かれて、視野が狭くなった状態では、まともな判断はできません。
Eラインはあくまでも目標値であって、完璧なEラインにする必要があるのでしょうか?
事実、キレイな女優さんもしくはモデルさんの中にも、完璧なEラインをもった方はそれほど多くないはずです。
まとめ
極端に口元が突出したケースでは、前歯を引っ込める矯正を行うことで、キレイな口元に改善することができます。
しかし、前歯を下げすぎると、ホウレイ線が目立つようになったり、頬がこけた印象になったりするので注意が必要です。
よって、口元の突出が気になる方は、将来の顔貌の変化についても考慮し、治療計画を立てる歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような歯科医院を見つけたうえで、矯正治療について十分相談するようにしてください。