矯正治療で前歯を並べる際には、見た目の問題だけでなく、前歯の機能についても十分考慮する必要があります。
なぜなら、前歯の並びや噛み合わせには、奥歯を健康に維持するための重要な役割があるからです。
そして、その前歯の役割が十分に機能しない場合、奥歯には重大なダメージが発生することが分かっているからです。
ここでは、前歯の噛み合わせの重要性、中でも前歯のガイドの必要性について説明します。
前歯のガイド
前歯の重なりには、単に見た目の問題だけでなく、実は重要な役割があります。中でも、最も重要な役割として挙げられるものの1つが「前歯のガイド」です。
しっかりと噛んだ状態から、下アゴを前方または左右へ移動すると、前歯に誘導されて下アゴが下方へとシフトします。これを、前歯のガイド効果といいます。
この前歯のガイド効果は、奥歯を健康な状態で維持するうえで、非常に重要な役割を果たしています。
つまり、前歯のガイド効果によって、奥歯には縦方向の噛む力のみが加わるようになるのです。
前歯のガイド不足によるトラブル
前歯のガイドが適切に機能すると、横方向の噛む力が奥歯に加わなくなります。
このことは、奥歯を健康に保つうえで非常に重要です。なぜなら、横方向からの力に対して、奥歯は非常に弱いからです。
奥歯には横方向の力が常に加わるようになると、単に摩耗するだけでありません。歯が欠けたり、奥歯を噛み割ったりするなどのトラブルが発生しやすくなるのです。
厚生労働省による調査でも、「前歯のガイドのない噛み合わせの状態では、奥歯を早期に失いやすい」ということが報告されています。
たとえば、前歯が上下に離れて接触していない開咬症(かいこうしょう)の噛み合わせでは、前歯のガイドがまったくありません。
そのため、奥歯には横方向からの力が加わることになり、その結果、奥歯の虫歯治療や差し歯を頻繁に壊したり、歯を噛み割ったりするのです。
適切な前歯のガイド
前歯のガイドが十分に機能するためには、上下の前歯にしっかりとした重なりがあることが大切です。一般的には、2mmの重なりがあることが適切とされています。
このように前歯がしっかりと重なった状態だと、食事の際にも前歯が接触しやすく、ガイドが機能しやすいのです。
そして、奥歯に加わる横方向の力も減少することができるため、奥歯に加わるダメージも効果的に減らすことができるのです。
まとめ
矯正治療を行う際には、前歯にはしっかりとガイド機能を与えることが大切です。なぜなら、矯正治療後の歯並びや噛み合わせを長期的に維持するためには、前歯のガイドが非常に重要だからです。
よって、矯正治療を考えている方は、前歯の噛み合わせについて十分に考慮し、治療する歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正治療を開始するようにしてください。