矯正治療中には、顎関節(がくかんせつ)の痛みだけでなく、噛む時に働く筋肉に痛みが起こる場合があります。
このような筋肉痛には、「クール・アンド・ストレッチ法」が有効であることを以前説明しました。
しかし、中には筋肉痛がとても激しく、日常生活にも支障をきたす程の痛みを訴える場合があります。そのような場合は、クール・アンド・ストレッチ法」を行うと同時に、服用薬についても検討します。
ここでは、そのような激しい筋肉痛がある際に有効な「クスリの服用」について説明します。
矯正治療中に起こる筋肉痛
矯正治療中、特に若い女性では、筋肉痛に悩まされることが多いです。
矯正治療によって噛み合わせが変化することで、今までとは異なる筋肉の部分を使って噛んだり、動かしたりすることを強いられるからです。
激しく動いた際に筋肉のケイレンを起こしたり、次の日に足や背中が痛かったりするのと、まったく同じことが噛むときに働く筋肉にも起こっているのです。
筋肉痛の発生した際の対処法
矯正治療中に起こる強い筋肉痛には、「クール・アンド・ストレッチ法」が効果的です。これは、筋肉痛が強くある場合に行う痛みを軽くする方法です。
筋肉痛の震源地となっている部分(または、トリガーポイント)を、指で押さえる簡単なマッサージ方法です。
このようにして、こわばった筋肉を伸ばしたりほぐしたりすることで、筋肉痛を和らげることができるのです。
しかし、筋肉痛の症状が著しく激しい場合、このクール・アンド・ストレッチ法を行うことができない場合があります。
もしくは、筋肉痛が激しすぎて、日常生活が送れないために、早期に症状を改善する必要がある場合があります。
このようなケースでは、2種類のクスリで筋肉痛の症状の改善を行った後に、あらためてクール・アンド・ストレッチ法を行うようにします。
筋肉痛で服用するクスリ
以前、私のクリニックに、激しい歯の痛みと顔の痛みを訴える女性がきました。彼女には虫歯などの問題はありませんでしたが、目の前の物を真っ直ぐに見ることができないくらい強い痛みがある様子でした。
彼女の歯の摩耗の様子から、激しい歯ぎしりの持ち主であることが推測されました。また、頭の側方部を押さえて診査すると、痛みが激しく増す部分があることが確認されました。
そのため、彼女の痛みの原因が筋肉痛であると診断し、まずはクスリを服用してもらうことにしました。なぜなら、彼女の筋肉痛が激しく、日常生活にも支障が起こっている様子だったからです。
激しい筋肉痛の際には、「筋肉を和らげるクスリ(筋弛緩剤)」と「長時間作用型の痛み止め」の2種類を服用します。この2つを服用することで、早期に筋肉痛の改善がみられます。
そして、症状がある程度治まった3日後から、クール・アンド・ストレッチ法が行うことができるまで、症状は軽くなりました。その後、1週間ほどで筋肉痛は落ち着き、日常生活も普通に送ることができるようになりました。
その後は、次のステップである「筋肉痛の予防」について積極的に行っているため、今回のように激しい筋肉痛を起こすことなく過ごすことができています。
まとめ
矯正治療中の筋肉痛の症状が極端に強い場合、いきなりクール・アンド・ストレッチ法を行うことは困難です。そのため、一旦、筋肉痛の症状を軽減するクスリを服用することがオススメです。
よって、矯正治療中の強い筋肉痛に困っている方は、主治医と「クスリの服用」について相談するようにしてください。また、クール・アンド・ストレッチ法は、クスリの服用による症状の軽減を待って行うようにしてください。