前歯の噛み合わせには、重要な役割があります。
矯正治療を行う際には、前歯の機能についても十分に考慮したうえで、適切に噛み合わせを整える必要があります。
なぜなら、前歯の役割を無視して矯正治療を行うと、奥歯に重大なダメージを与えることになるからです。
ここでは、適切な前歯の噛み合わせと、前歯の反射の重要性について説明します。
前歯の反射とは
前歯の噛み合わせの重要な役割として、「前歯の反射」が挙げられます。
反射については、みなさん既に御存知と思いますが、熱いものに触れた際に、思わず手を引っ込めたりするような無意識に起こる反応のことです。
口の中でも、食事中に小さな石を噛んで、口が反射的に開くという開口反射(かいこうはんしゃ)を経験した方も多いと思います。
しかし、このような口の中の反射は、普段の食事の際にも頻繁に起こっています。
つまり、食事中の噛む力やアゴが動くスピードは、反射によってコントロールされているということです。
適切な前歯の噛み合わせ
適切な前歯の噛み合わせは、前歯が上下に2mmほど重なっている状態です。
このようにしっかり重なっている状態で下アゴを動かすと、前歯がぶつかりやすくなります。
つまり、下アゴが前方または左右にずらした状態で噛むと、奥歯が噛み合うより先に前歯がぶつかるようになるのです。
そして、前歯がぶつかった際に起こるのが「前歯の反射」です。
前歯に反射が起こると、下アゴの動きが一瞬止まったり、スピードが弱まったりします。
そして、このように前歯の反射によって、奥歯には大きな力が加わらないようにコントロールされているのです。
前歯の反射が不十分なことで起こるトラブル
前歯の反射を得られない噛み合わせだと、奥歯はダメージを受けやすくなります。噛む力が弱まることなく、ダイレクトに奥歯に加わるようになるからです。
たとえば、前歯が上下に接触しない開咬症(かいこうしょう)という噛み合わせ異常があります。前歯が上下に離れているため、前歯の反射はおこりません。
そのため、奥歯には噛む力が弱まることなくダイレクトに加わることになります。
その結果、奥歯の虫歯治療や差し歯を頻繁に壊したり、奥歯を噛み割ったりするのです。
事実、厚生労働省による調査でも、「前歯のガイドのない噛み合わせの状態では、奥歯を早期に失いやすい」ということが報告されています。
まとめ
矯正治療後の歯並びや噛み合わせを長期的に維持するためには、上下の前歯に適切な重なりを与えることが重要です。
よって、矯正治療を考えている方は、前歯の噛み合わせについても十分に考慮し、治療する歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正治療を開始するようにしてください。