「口ゴボ」は、「上下顎前突症(じょうげがくぜんとつしょう)」または「両顎前突症(りょうがくぜんとつしょう)」のことです。
つまり、上下の顎骨が前方に突出している状態であるため、口元がゴボッと突出した横顔になってしまっているのです。
子供の口ゴボは、実は深刻な問題です。なぜなら、単に歯並びや噛み合わせが悪いということではなく、身体の成長への悪影響および学校でのいじめも問題に発展する心配があるからです。
そのため、お子さんに口ゴボがある場合、早い段階で気づいてあげること、早期治療をはじめることが非常に重要になるのです。
ここでは、お子さんの口ゴボを放置するデメリットと、早期治療の方法について説明します。
子供の口ゴボの問題点
食べるのが苦手
口ゴボの子供は、食べものを効率的に噛むことができません。なぜなら、噛むチカラが非常に弱いからです。
口ゴボの子供の食事にかかる時間が長かったり、噛み切れないなどの理由で苦手な食べ物が多かったりするのは、噛むことが下手だからです。
そのため、口ゴボの子供には、小さなお子さんや痩せたお子さんを見かける割合が多いのです。
おしゃべりが苦手
口ゴボの子供は、おしゃべりも苦手です。なぜなら、舌を上手に動かすことが苦手だからです。
口ゴボの子供の発音がハッキリしなかったり、舌っ足らずなしゃべり方に聞こえるのは、舌がしっかりと動かないからです。
スムーズに言葉を話せない、言葉が相手に通じないなど状況が続くと、子供は徐々に話をすることが億劫になってしまいます。そして、最終的に奥手な性格になってしまう心配があるので注意が必要です。
いじめに発展する
子供の口ゴボで最も深刻なのが、見た目の問題です。
なぜなら、同級生からからかわれたり、学校でのいじめに発展してしまったりするケースがあるからです。
口元の格好がおかしい、はっきりと主張しないなどの特徴が、からかう対象やいじめの原因になってしまうことがあるのです。
そのため、お子さんに口ゴボがある場合、早期に気づいてあげること、治療をはじめることが非常に大切なのです。
口ゴボの早期治療
エラストオサム
子供の口ゴボ治療には、、「エラストオサム」という特殊な矯正装置が有効です。
エラストオサムという装置は、上下一体型のマウスピースに、矯正治療用の帽子を組み合わせて使用する装置です。頭にかぶった帽子から、口の中のマウスピースにチカラを加えるのです。
ただし、この装置には2つの欠点があります。それは、口呼吸ができないことと、装置自体が大きいことです。
そのため、どのお子さんも、この装置を最初からしっかりと使いこなせるわけではありません。
試用期間、つまり慣らしの期間が必要なのです。ただし、その慣らしの期間も、通常1〜2週間ほどあれば十分です。
1〜2週間ほどほど頑張って使用すると、どのお子さんも装置に慣れて試用することができるはずです。
エラストオサムの効果
前歯の角度を改善
口ゴボの原因は、「前歯が前方に大きく傾斜している」ことです。ただし、口ゴボのお子さんでは、前歯だけではなく、奥歯も前方に倒れてしまっているケースを多く見かけます。
そのため、口ゴボの早期治療では、前歯だけでなく奥歯の角度を修正する必要があります。
エラストオサムを用いれば、これらを確実に達成することができます。なぜなら、エラストオサムは、マウスピースにチカラを加える装置だからです。
マウスピースにチカラを加えることによって、前歯と奥歯の傾斜を同時に修正することができるのです。
顎骨に作用する
口ゴボのもう1つの原因は、「上下の顎骨が前方に突出している」ことです。また、この顎骨の突出は、お子さんの成長とに悪化する傾向があります。
そのため、顎骨の成長を抑制したり、成長の方向をコントロールしたりすることが望まれます。顎骨の成長をコントロールすることで、口ゴボの悪化を予防することができるのです。
これにも、エラストオサムは非常に有効です。なぜなら、上下一体型のマウスピースを使用しているからです。
上下一体型のマウスピースを用いることによって、歯だけでなく顎骨にもしっかりとチカラを加えることができるのです。
実際に、エラストオサムで治療を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、口ゴボをもった女の子が矯正相談にきました。女の子の口元の様子を同級生が学校で女の子の口元の様子をからかっていることを知って、心配した母親が連れてきたのです。
その時の女の子の様子は暗く、笑顔も口数も非常に少ない状態でした。そこで、私は女の子に「エラストオサム」を使って矯正治療することを提案することにしました。
なぜなら、口ゴボを効果的に改善できるだけでなく、同級生に知られることなく矯正をすることができる方法だからです。
治療方法について説明すると、女の子は数日間よく考えてから、矯正治療を開始することを決心しました。矯正治療を開始した当初、女の子にとってエラストオサムはかなり辛かったようです。
なぜなら、女の子はもともと鼻で呼吸をする習慣がなかったからです。しかし、女の子は自分の口ゴボを治すため、一生懸命に装置に慣れようと努力してくれました。
エラストオサムを1年間使用することで、女の子の口元の様子をある程度改善することができました。その頃になると、学校でからかわれることもなくなり、女の子の笑顔も少しずつ見られるようになりました。
女の子の様子を見て、母親も非常に喜んでいます。
まとめ
お子さんの口ゴボの予防には、エラストオサムが効果的です。この装置を用いることで、前歯の傾斜だけでなく、顎の成長をコントロールすることができるからです。
よって、お子さんの口ゴボを気にされている方は、子どもの歯並び育成において治療実績がある歯科医院を選択することが重要です。そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにして下さい。