「二重歯列(にじゅうしれつ)」は、アゴが狭く歯が並びきれないことが原因で起こっています。そのため、治療を開始する際には、主治医とよく相談して、適切な治療方法を選択することが大切です。
なぜなら、特にデコボコの程度が著しい場合、歯の本数を減らして矯正する必要があるからです。ここでは、二重歯列を抜歯する矯正で治す方法と、その際の注意点について説明します。
二重歯列による影響
見た目の問題
前歯が二重歯列だと、見た目に悪影響をおよぼします。なぜなら、二重歯列の部分が影になってしまうからです。
そのため、二重歯列の部分が、「歯抜け」の格好に見えてしまうのです。
確かに、若い頃の二重歯列は、活発な印象、幼い印象をあえるかもしれません。しかし、徐々に、二重歯列が気になってくる、もしくは見た目に悪影響をおよぼしてくることが多いのです。
清掃の問題
二重歯列の部分は、虫歯や歯周病の危険が高くなります。なぜなら、歯が重なった部分は清掃が行いにくいからです。
さらに、二重歯列の部分は、虫歯や歯周病が重症化しやすいので注意が必要です。
なぜなら、二重歯列の部分は、「虫歯や歯周病を、見落としやすい」、もしくは「虫歯や歯周病の治療を、正確にできない」などといったデメリットもあるからです。
そのため、簡単に再発したり、歯を失ったりするケースが少なくないのです。
顎関節症
二重歯列があると、顎関節症の危険性も高いといえます。なぜなら、二重歯列によって、下あごの動きが制限されるからです。
たとえば、下あごの前歯が二重歯列にはさまって、下あごがロックされたり、横にズレてしまったりするケースがあります。
このように、下あごに無理なチカラが加わる状態は、顎関節にとっても良い状況とはいえません。
特に若い女性では、顎関節が華奢であるため、顎関節に問題が発生する心配があるのです。
二重歯列の歯列矯正
二重歯列を歯列矯正で治す方法には、大きく2つのタイプがあります。それは、「抜歯が必要なタイプ」と「抜歯が不要なタイプ」の2種類です。
どちらのタイプの治療が必要になるかは、以下の項目について十分に考慮して判断する必要があります。
歯を並べることができるか?
最初におこなうのは、あご骨と歯の大きさを診査します。なぜなら、狭いあご骨の中に、すべての歯を並べようとするとトラブルが発生するからです。
たとえば、あご骨から歯の根が露出したり、前歯が極端に傾斜してしまったりするトラブルです。
そのため、あご骨と歯の大きさのバランスが悪いケースでは、抜歯が必要と判断します。
口元は突出しないか?
次に考えるべきは、治療前の横顔についてです。なぜなら、二重前歯をそのまま並べると、口元がすこし出る格好になるからです。
そのため、「口元が出ている」ケース、もしくは「口元を引っ込める必要がある」ケースでは、抜歯を行う歯列矯正が適当と判断します。
なぜなら、抜歯を行う歯列矯正の方が、口元を引っ込めたり、口元が突出することを防いだりできるからです。
下あごと、しっかり噛み合うか?
最後に行う診査は、下あごとの噛み合わせです。なぜなら、下あごが小さかったり、後に下がっていたりするケースが非常に多いからです。
そのため、上下あご骨の大きさや位置関係に差が大きくある場合、抜歯を行う歯列矯正でバランスを整える必要があるのです。
重度の二重歯列を治す3ステップ
ステップ1:スペースを作りだす
重度の二重歯列の場合、歯の抜歯が必要になります。なぜなら、上あごを拡大するだけでは、前歯を並べるためのスペースを作り出すことができないからです。
このとき、抜歯するのは、犬歯の隣にある小臼歯(しょうきゅうし)という歯です。
なぜなら、犬歯に最も近い歯だからです。犬歯を大きく後ろに移動させるためには、犬歯に最も近い歯を抜歯することが効果的なのです。
ステップ2:奥歯を固定する
次に行うのは、奥歯を固定することです。なぜなら、奥歯から犬歯を引っ張る際、奥歯が前方に移動する心配があるからです。
奥歯が前に移動してしまうと、小臼歯を抜いてつくったスペースが、すべて失われてしまいます。
そのため、「パラタルアーチ」もしくは「ナンスのホールディングアーチ」などの矯正装置を用いて、奥歯を固定する必要があるのです。
ステップ3:前歯を並べる
次は、いよいよ前歯を整列する段階です。犬歯は後に移動しているため、二重歯列を並べるためのスペースが十分にあるはずです。
ただし、この時、注意が必要です。なぜなら、下の前歯を乗り越える際、上下の前歯が強く衝突する心配があるからです。
上下の前歯が強く衝突すると、歯が欠けてしまったり、削れてしまったりするからです。そのため、前歯を並べる際には、上下の前歯が衝突しないよう十分に注意する必要があるのです。
実際に、抜歯して二重歯列を治療した事例
以前、私が運営するクリニックに、二重歯列の女子大生が矯正相談にきました。高校生の時から、自分の前歯のデコボコにコンプレックスがあり、「大学生になったら、矯正を始めたい」と強く希望していたようです。
そこで、私は、抜歯した歯を並べる矯正を彼女に提案することにしました。なぜなら、矯正治療に必要な検査の結果、彼女の二重歯列は抜歯が必要なタイプと分かったからです。
彼女に、治療方法について説明すると、あっさりと治療開始することを決心しました。抜歯が必要になることは、ある程度想定内だったようです。
矯正器具(ブラケット)を徐々につけることと併行して、上下の小臼歯抜歯を行っています。そして、今回は通常のトランスパラタルアーチだけではなく、ミニインプラントも用いることにしました。
なぜなら、彼女のデコボコは非常に著しく、奥歯の前方への移動を確実に防止する必要があったからです。
約2年間、矯正治療を行った結果、予定どおり二重歯列をキレイに並べることができました。イメージどおりの歯並びになったことで、彼女も非常に喜んでくれています。
まとめ
二重歯列の治療では、診査・診断が非常に重要になります。なぜならば、デコボコの程度の判定によって、治療方法が大きく異なってくるからです。
よって、二重歯列の治療を考えている方は、二重歯列の治療実績がある歯科医院を選択することが重要です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにして下さい。