差し歯治療を受ける際は、歯根に「フェルール形態」があることが非常に重要です。なぜなら、フェルール形態の有無によって、その歯の寿命が左右されるからです。
そのため、差し歯治療を受ける際は、事前によく主治医と相談して治療開始することが大切です。ここでは、フェルール形態の重要性と、部分矯正を行うことによって獲得する方法について説明します。
これを知ることによって、差し歯とトラブルを防ぐことができるだけではなく、歯を長期的に健康な状態で維持することができるようになります。
フェルール形態
差し歯が長持ちする条件として、歯根部分に健康な歯質が十分に残っていることが重要なポイントになります。特に、歯の根元、つまり歯ぐきから顔をだしている部分の歯質の量が重要になるのです。
この歯ぐきからでている部分の歯質をフェルールと呼び、「全周にわたって高さ2mm以上の歯質が残っていること」が理想的です。なぜなら、差し歯でこのフェルールを抱き込むことができるからです。
フェルールが十分にない場合、差し歯に加わるチカラが歯根ではなく、歯根に挿入してある土台に伝わってしまうからです。そのため、歯が破折したり、土台が外れたりするリスクが高くなるのです。
しかし、フェルール部分を差し歯でガッチリとつかむことで、歯が破折したり歯根に挿してある土台が外れたりすることを防ぐことができます。
このように、差し歯を長期的に維持するためには、このフェルール形態が非常に重要になってくるのです。
フェルール形態をつくる方法
歯周外科(ししゅうげか)による歯の露出
フェルール形態を積極的に得るためには、歯ぐきの外科治療(または、歯周外科)を行うことが有効です。治療する歯の歯ぐきを下げて、歯根の上部を露出させるという方法です。
このとき、周りの骨も一部削り取って歯根を露出します。このように治療する歯根に外科処置を行うことによって、効果的にフェルール形態をつくることができるのです。
しかし、この方法を前歯の治療に用いることはできません。なせなら、「歯ぐきのふぞろい」が起きてしまうからです。歯ぐきを下げる治療であるために、周囲の歯ぐきの位置と極端に違った高さになってしまうのです。
部分矯正による歯の挺出
そこで、私のクリニックでは、外科処置を行う前に部分矯正を用います。部分矯正をすることで、歯根と歯ぐきを周囲より高い位置に引っ張り上げ、その後で歯ぐきの外科処置を行うのです。
そのように事前に部分矯正を行うことで、周りの歯ぐきと高さがそろった状態で、周囲と調和した差し歯をつくることができるのです。
部分矯正で、フェルール形態をつくった事例
以前、私が運営するクリニックに、壊れた差し歯の治療を希望する女性が来院しました。その壊れた差し歯を観察すると、フェルール形態が全くないタイプであることが分かりました。
そこで、私は「部分矯正で歯根を引っ張り出し、その後に歯周外科でフェルールをつくる」という治療計画で治療を開始することにしました。
実は、彼女は私のクリニックで働くスタッフのお姉さんです。そのため、差し歯をする際のフェルールの重要性についてすでに承知していたのです。
4ヶ月間ゴムで歯根を引っ張り上げた後、歯ぐきの外科処置を行うことで、予定どおりフェルール形態をつくることができました。
フェルール形態をつくることができたため、その後も外れることもなく健康に維持することができています。
まとめ
差し歯治療を行う際には、フェルール形態が歯根にあることが非常に重要です。その歯根に部分矯正を用いることで、フェルール形態を効果的に獲得することができます。
ただし、前歯の治療においては十分な配慮が必要です。なぜなら、周囲の歯ぐきの位置を考慮して治療しないと、不細工な前歯になってしまう心配があるからです。
そのため、差し歯治療が必要となった方は、前歯の治療において実績の歯科医院を選択することが大切です。そして、そのように安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。