通常、矯正治療は自費診療で行われます。しかし、特定の病名がつく歯並びや噛み合わせの改善については、健康保険をつかって治療することができます。
その中の1つに、顎変形症における外科矯正治療があります。この制度は、顎変形症の状態に悩んでいる患者さんにとっては、非常に有り難い制度です。
しかし、外科矯正治療を開始する前に、必ず確認しておくべきことがあります。それは、「治療中断の際のルール」です。これは、他の病気やケガの治療では聞いたことがないルールです。
ここでは、外科矯正治療をはじめる前に、確認しておくべき健康保険のルールについて説明します。
健康保険がきく矯正治療について
一般的に、歯並びや噛み合わせを治療するために行われる矯正治療は、すべて自費診療で行われます。
ただし、歯並びや噛み合わせの問題の中には、「顎変形症(がくへんけいしょう)」の病名が付けられるものがあります。顎変形症とは、アゴ骨の形態に問題があり、通常の矯正治療だけでは治療することが困難であると判断される状態です。
このように顎変形症の病名がつく患者さんの矯正治療に対しては、「健康保険」を使って治療を受けることができるのです。
たとえば、しゃくれ顔の印象が強いタイプの受け口(または、下顎前突症)の治療です。下アゴが大きく突出しているため、通常の矯正治療だけで噛み合わせできるようにしたり、しゃくれ顔を改善したりすることはできません。
そのため、このように顎変形症の病名がつくタイプの患者さんは、健康保険がきく「外科矯正治療」が必要になってくるのです。
外科矯正治療とは
外科矯正治療とは、顎変形症の病名がつくタイプの歯並びや噛み合わせに対して行われる治療方法です。歯に矯正器具(ブラケット)をつけて行う矯正治療と同時に、全身麻酔による外科手術を行う方法です。
外科手術によって、アゴ骨の位置や形態の改善することができるため、顎変形症の病名がつく患者さんの治療では、歯並びや噛み合わせの問題だけでなく、しゃくれ顔など顔つきに関する問題を改善することができます。
外科的矯正資料における厳しいルール
たとえば、あなたがカゼにかかった場合、その治療は健康保険を使って受けることでしょう。その治療を中断したとしても、特に問題になることはありません。
これは、糖尿病やケガなどの治療についても同様です。健康保険で行っている治療を中断しても、特に問題ないと私達は考えがちです。
しかし、この外科矯正治療については、保険機構に対して「診療行為の取り下げ手続き」を行う必要があります。なぜなら、外科矯正治療は、外科手術を行うことを前提とした治療だからです。
健康保険診療の取り下げ手続き
歯科医院などの医療機関は、今まで行った保険診療について取り下げ手続きを行う必要があります。そして、医療機関は保険診療を取り下げると同時に、健康保険から支払われた診療報酬の7割分をすみやかに返還する必要があるのです。
自費診療として
さらに、患者さんと、医療機関の間でも治療費の精算が必要になります。
医療機関は、保険診療で頂いていた今まで診療報酬分、つまり3割負担分を患者さんに返還し、そしてこれまで行った診療を自費診療に置き換えて診療報酬の精算をする必要があるのです。
まとめ
外科矯正治療を開始するにあたっては、「治療中断の際のルール」について知っておく必要があります。なぜなら、その他のケガや病気の治療を中断した場合と異なり、保険診療の取り下げの手続きが必要になるからです。
外科矯正治療を考えている方は、この健康保険のルールについて納得したうえで治療を開始するようにして下さい。