「開咬症(かいこうしょう)」は、上下の歯を噛み合わせた際、奥歯だけがあたって前歯が上下に接触しない噛み合わせのことです。
開咬症の治療は、矯正治療の中でも最も難しい治療とされています。しかし、マルチループワイヤーと、顎間ゴムを用いることによって効果的に開咬症を改善することができます。
ここでは、そのマルチループワイヤーを用いた開咬症治療について説明します。
開咬症の原因
開咬症(あるいは、オープンバイト)の1番の原因として、骨格が華奢(きゃしゃ)であることが挙げられます。そのため、小さなアゴ骨に全部の歯が並びきれず、奥歯が前傾してしまうのです。
奥歯が大きく倒れると、前歯は跳ね上がった格好になり、前歯が上下に接触しない開咬状態になるのです。そのため、開咬症の治療では、前傾した奥歯を起こし、そして前歯をしっかりと直立させることが重要になります。
マルチループワイヤーを用いた開咬症の治療
マルチループワイヤーとは、複数の曲げが加えられた矯正治療で用いるワイヤーのことです。複雑に曲げられたワイヤーを用いることによって、個々の歯を自在に動かすことができます。
このマルチループワイヤーを用いると、傾斜した歯を効果的に直立することができるので、開咬症の治療には非常に有効です。
奥歯に続いて、前歯を立てることで、扉を閉じる時のように、前歯を閉じることができます。
顎間ゴムの重要性
開咬症の治療において、顎間ゴムの非常に重要です。顎間ゴムとは、上アゴの矯正器具(ブラケット)から下アゴの矯正器具に向かって、患者自身でかけるゴムのことです。
このゴムを24時間使用することで、マルチループワイヤーに組み込まれた前が効果的に作用しまし。この顎間ゴムの使用については、十分に注意が必要です。
なぜなら、このゴムをかける位置が不適切であったり、ゴムかけが不十分だったりする場合、単に「開咬症が治らない」というだけではなく、悪化してしまうからです。
そのため、顎間ゴムの使用にあたっては主治医の指示をしっかりと守るようにしてください。
実際にマルチループワイヤーを使って治療した事例
以前、私が運営するクリニックに、開咬症の治療を希望する女の子が矯正相談にきました。学校検診で、開咬症の治療を指示されたために、母親が連れてきたのです。
まず、矯正治療に必要な検査をすると、彼女の開咬症は歯が全体的に傾斜していることが原因であることが分かりました。
そのため、マルチループワイヤーを用いた矯正治療を提案することにしました。治療計画を説明すると、男の子は歯の表面に矯正器具(または、ブラケット)を付けることに対して抵抗があったものの、治療を開始することを決心しました。
さっそく、ブラケットを全体につけて、マルチループワイヤーも用いて治療を開始しました。男の子が顎間ゴムを十分に使ったため、約1年という非常に短い期間で、治療を完了することができました。
顎間ゴムの使用がかなり辛(つら)かったようですが、自分の噛み合わせが変化したことに非常に満足しています。
まとめ
開咬症の治療には、マルチループワイヤーを用いた矯正治療が非常に有効です。この方法は、患者さんに顎間ゴムの協力をしてもらう必要がありますが、確実に開咬症を改善できる治療方法です。
開咬症の治療を考えている方は、マルチループワイヤーを使った治療の実績のある歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。