子どもの受け口(あるいは、反対咬合)は、単に下アゴが大きいものばかりではありません。
上アゴの形態が小さくて受け口になっているもの、上下のアゴの大きさには異常が認められないものなど複数のタイプが存在します。
そのため、子どもの受け口治療を行う際には、適切に診断を行い、それぞれのお子さんにあった治療方法を選択することが大切です。
ここでは、上アゴが小さいタイプの受け口と、それを効果的に治す「急速拡大装置(きゅうそくかくだいそうち)」について説明します。
子どもの受け口の原因
通常、受け口のお子さんは、下アゴの形態が大きいとおもわれがちです。しかし、子どもの受け口の原因として、最も多いのが「上アゴが小さい」ことです。
受け口の子どもの上アゴが、発達不全だからということもできます。そのため、これらのお子さんの治療については、上アゴの形態を大きくすることが第1選択となるのです。
急速拡大装置とは
急速拡大装置とは、上アゴの形態を広げるために用いる矯正装置です。この装置は、口の中にしっかりとセメント固定して状態で用います。
なぜなら、上アゴを広げる際に、強いチカラを加える必要がある装置だからです。1日に0.2〜0.4mmと早いペースでしかも大きく広げることを目的としているため、非常にしっかりとした頑丈な作りになっています。
そのため、大きく分厚い装置が上アゴに位置することになるため、お子さんの違和感が強く、慣れるまでの期間が必要です。
なぜ、違和感が大きいにもかかわらず、この大きな急速拡大装置を用いるのでしょうか? それは、他のおうちでは得ることができない効果がこの装置を使用することで得られるからです。
急速拡大装置を用いた際の反応
受け口のお子さんに、急速拡大装置を用いるのには理由があります。それは、通常の拡大装置を用いた場合とは、全く異なる反応があるからです。
通常の拡大装置を用いても、上アゴの形態を十分大きくすることができます。しかし、急速拡大装置を用いて拡大を行うともう1つ大きな反応があります。
それは、「上アゴの前方移動」です。急速拡大装置を用いて、早いペースで上アゴを広げると上アゴの骨全体の位置が前方に変化するのです。
この上顎骨そのものが前方に移動するという反応は、受け口のお子さんにとって非常に好都合です。そのため、私のクリニックでは、上顎が小さいタイプの受け口のお子さんには、積極的に急速拡大装置を使用して治療を行っています。
実際に、急速拡大装置を用いて治療を行った事例
以前、私の運営するクリニックに、受け口の女の子が矯正相談にきました。女の子の受け口の噛み合わせと、口元の様子を心配した母親が連れてきたのです。
矯正治療に必要な検査をすると、上アゴの形態が小さいタイプの受け口であることが分かりました。そのため、女の子の横顔は、鼻下部分が引っ込んだ状態になっていたのです。
そのため、私は急速拡大装置を使った治療法について説明することにしました。それは、急速拡大装置を用いると、効果的に上アゴの形態を広げることができるからです。さらに、上アゴ骨自体を前方に移動することができる治療法だからです。
女の子に治療法について説明し、実際の装置を見せました。大きい装置であったために不安に感じる様子もありましたが、治療を開始することを決心しました。
上アゴに急速拡大装置をはめて、2ヶ月にわたって約1週間ずつアゴを広げました。すると2ヶ月後には、前歯の噛み合わせは正常な前後関係になっていたのです。
心配された装置の違和感も、すぐに慣れることができました。その後、上アゴの形態が安定するまで半年間待つことで、その後も安定した状態を維持できています。
治療後、歯並びだけではなく口元の様子がキレイになったことに、女の子も母親も非常に喜んでいます。
まとめ
お子さんの受け口治療には、急速拡大装置を用いた矯正が有効です。
なぜなら、急速拡大装置を用いることで、上アゴの幅を大きくするだけでなく、上アゴの骨を前方に移動することができるからです。
お子さんの受け口治療を考えている方は、子どもの噛み合わせの育成について実績の歯科医院を選ぶことが大切です。
そのような安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。