子どもの受け口(または、下顎前突症)の原因には、大きく3つタイプがあります。
それぞれ、「下アゴが大きいタイプ」、「上アゴが小さいタイプ」、「噛み合わせが低いタイプ」の3つです。
一般的に思い浮かぶのは、下アゴが大きかったり、上顎が小さかったりすることによって起こる受け口です。
しかし、お子さんの受け口の中には、噛み合わせが低いことが原因で生じるものがあるのです。ここでは、噛み合わせが低いことによって起こる受け口と、それを簡単に治すことができる「レジン添加法」について説明します
「噛み合わせが低いこと」が原因で生じる子どもの受け口とは
「歯の噛み合わせが低いこと」が原因で、お子さんが受け口になることがあります。たとえば、赤ちゃんの噛み合わせです。奥歯がないために、噛み合わせが低く、そのため下アゴが前方にでる傾向があるのです。
これは、耳の穴の前にある顎関節(がくかんせつ)を中心として、下アゴが回転運動していることに関係しています。噛み合わせが低いと、下アゴは途中で止まることなく、本来の位置より前方に行き過ぎてしまうのです。
昔、子どもの虫歯が氾濫(はんらん)していた頃、受け口の子どもの割合が多く、日本人には受け口が多いと言われていました。
なぜなら、虫歯で奥歯を無くしたお子さんの数が非常に多かったからです。 このように。噛み合わせが低いことが原因で、お子さんの受け口が生じてしまうことがあるのです。
「レジン添加法」による受け口の治療
レジン添加法とは
噛み合わせが低いことが原因で受け口になっているお子さんに対しては、噛み合わせを高くすることが有効です。
噛み合わせの高さを簡単に修正する方法として、レジン添加法が挙げられます。レジン添加法とは、プラスチック材料(または、レジン)を乳歯の奥歯に盛り足して、噛み合わせを高くする方法です。
このように乳歯にレジンを盛り足すことによって、人為的にお子さんの噛み合わせを高くすることができます。
このように、レジンの盛り足しを行うだけで、わずか数ヶ月のうちに前歯の噛み合わせが改善することも少なくないのです。
舌のトレーニング
上アゴの成長には、舌の機能が大きく影響しています。実は、舌が繰り返し上アゴを押すことが、上アゴの成長と発育を促しているのです。
受け口のお子さんに共通する特徴として、その舌の機能が不十分であることが挙げられます。正常な舌の動きでは、唾(つば)を飲み込む時には、舌を上アゴの天井部分に強く押し当てます。
しかし、受け口のお子さんでは、上アゴを強く押し上げるチカラが非常に弱く、上アゴに舌が届かないことが少なくないのです。
つまり、受け口のお子さんでは、舌のチカラが上アゴに伝わらず、発達不全になってしまっているのです。そのため、舌機能のトレーニングを行って、上アゴの成長を積極的に補助する必要があるのです。
前歯の角度を修正する
受け口の状態にあるお子さんの上前歯は、内側に傾斜しています。そのため、レジン添加法を行うのと同時に、何らかの方法で前歯の角度を修正する必要があります。
私のクリニックでは、可能な限り矯正器具(ブラケット)を歯に付けないようにしています。そして、舌で前歯を押すことによって、前歯の角度を修正することを推奨しています。
なぜなら、そのようにすることで、舌のトレーニングを強化することもできるからです。このように、舌機能のトレーニングを強化することによって、上アゴの成長を促すことができるからです。
実際にレジン添加法を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、受け口の小学生が矯正相談にきました。学校検診で受け口の状態であることを指摘されたために、心配した母親が連れてきたのです。
そこで、まず矯正治療に必要な検査を行ったあとで、私はその男の子に「レジン添加法」と、「舌のトレーニング」による受け口治療を提案することにしました。
なぜなら、男の子の受け口は、アゴ骨の大きさに問題がなく、噛み合わせが低いことによる軽度の受け口であることが分かったからです。
治療方法について説明すると、矯正器具を口の中に付ける必要がないために、男の子も母親も非常に喜びました。そして、レジン添加法による治療を開始することにしたのです。
乳歯の奥歯にレジン(または、プラスチック材料)を盛り足し、噛み合わせを高くしました。当初食べにくかったり、違和感が強かったりしましたが、1週間ほどで慣れることができました。
また、レジン添加と同時に、舌のトレーニングをかねて、上前歯を舌で前方に押すことを毎日行いました。
すると、前歯の噛み合わせは、たった数ヶ月で改善したのです。また、その後も舌のトレーニングを継続したために、上アゴ自体の形態も十分に大きくすることができました。
お子さんの負担も少なく、しかも短い期間で治療できたことに、男の子も母親も非常に満足しています。
まとめ
噛み合わせが低いことによって生じるお子さんの受け口には、「レジン添加法」が有効です。この方法は負担も少なく、短期間でお子さんの受け口を改善するため、オススメの治療法です。
ただし、このレジン添加法が有効なのは、アゴ骨の形態に問題がない軽度の受け口のお子さんの治療に限られます。
そのため、子どもの受け口治療を行うにあたっては、適切に診断しお子さんに合った治療方法を選択することが最も重要です。
お子さんの受け口治療を考えている方は、子どもの噛み合わせの育成について実績の歯科医院を選ぶことが大切です。
そのような安心して治療を受けられる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。