「床矯正(しょうきょうせい)」は、お子さんの歯ならびや噛み合わせを治療するための装置です。取り扱いが簡単で、しかも痛みが少ないため、子どもの矯正治療には非常に有効です。
その他の特徴として、お子さん自身で装置を取り外しすることができるということが挙げられます。そのため、食事の際に、口の中に装置が入っていない状態で食べることができるのです。
そのため、お子さんにとっても負担が少ない治療ということができるでしょう。
矯正治療の中でも、トラブルが少なく取り扱いが簡単な床矯正ですが、正しく使用することが大切です。なぜなら、適切に使用できていないと、床矯正の効果を十分に得ることができないからです。
ここでは、お子さんのアゴを広げる際に用いる床矯正の取り扱い、および注意点について説明します。
取り扱い、および注意する点
ネジ回し
床矯正では、装置のネジをご家庭で回す必要があります。そうすることによって、1週間に0.2mmずつアゴを広げます。
ただし、下アゴの装置については、注意が必要です。なぜなら、上アゴと比べて、下アゴの骨は硬いからです。
そのため、1回のねじ回しで0.2mmを一気に広げると、お子さんが痛がる場合があります。そのため、お子さんによっては、「3日毎に0.1mmずつ広げるなど」の工夫が必要になるでしょう。
装置の使用時間
床矯正でアゴを広げるためには、装置を長時間装着する必要があります。一般的には、1日12時間以上装置を装着します。
しかし、私のクリニックでは、1日中つけておくことをすすめています。なぜなら、その方が痛みも、トラブルも少ないからです。
装置を数時間外したままでいると、広げたアゴもわずかに後戻りします。そのため、床矯正の装置がキレイにおさまりにくくなるのです。
装置の保管
装置を外している際の、装置の保管もしっかりと管理する必要があります。保険方法が不適切だと、紛失したり壊したりするトラブルが多いからです。
最も多いのがペットのトラブルです。ペットは、飼い主のにおいが大好きです。そのため、ペットが装置を噛み壊したという事例が非常に多いのです。
次に多いのが、食事の際のトラブルです。装置をティッシュや紙ナプキンなどで包んでいたために、間違って捨ててしまうことがあるのです。
装置の清掃方法について
清掃の方法
装置を洗浄するときに起こるのが、落として壊してしまうというトラブルです。装置が小さいので、洗う時に落としてしまうということをほとんどの方が経験しています。
できるだけ洗面台や洗面器に水を張った状態で、装置を洗うようにしましょう。そうすれば、たとえ落としたとしても、変形したり壊れたりすることはありません。
歯磨剤について
装置の清掃は、歯ブラシを使って行いますが、そのとき歯磨き剤は使用しないようにしましょう。なぜなら、歯磨き剤には「研磨材」の粒子が含まれていて、その粒子が装置の表面に沢山の傷をつくるからです。
装置の表面に傷ができると、細菌の繁殖(はんしょく)する場所になり、口臭の発生する原因になってしまうのです。
どうしても、装置のにおいが気になる場合は、研磨材が入っていないタイプの歯磨き剤を用いるか、もしくは食器用の洗剤を用いるようにしてください。
洗浄剤について
装置のにおいを気にして、定期的に洗浄剤を使う方がいます。もしも市販の入れ歯洗浄剤を使っているのであれば、注意が必要です。なぜなら、一部の入れ歯洗浄剤では、金属同士を接合した部分が劣化することがあるからです。
よって、わたしのクリニックでは、矯正装置専用の洗浄剤を使うようにしています。この洗浄剤だと、金属部分が壊れたりするトラブルがないので安心して使用することができるからです。
装置の着脱
床矯正で用いる装置はシンプルでしっかりとした構造になっているため、本来壊れにくいものです。しかし、着脱の方法が不適切だと、装置を変形させる心配があります。
装置を装着する時には、決して噛んで入れてはいけません。なぜなら、間違った方向にチカラが加わってしまうからです。そのため、装置を口の中に固定するための金属部品が、大きく変形する心配があります。
装置を外す際にも、左右均等に動かして外すようにしてください。左右どちらかを先に外すと、装置が口の中で傾くため、装置を口の中に固定するための金属部品が同様に大きく変形する心配があります。
お子さんも装置に慣れてくると、着脱方法がおろそかになりがちです。乱暴に取り外しをしないようにしてください。
トラブル発生時の対応
床矯正で用いる装置の最大の特徴は、「装置の着脱をお子さん自身ができる」ということです。そのため、何かのトラブルが発生した場合でも、装置を一旦外すことで対応することができます。
たとえば、歯ぐきの内側の傷です。アゴが徐々に広がるにつれて、装置が歯ぐきに強く接触することがあります。症状が強ければ、装置を一旦外すことができるので問題は解決するでしょう。
しかし、装置を安易に外すことは望ましくありません。なぜなら、時間をかけて広げたアゴの大きさが後戻りしてしまう心配があるからです。
そのため、すぐに主治医に連絡をして、調整することが大切です。また、装置の調整を行うまでの間、可能であれば床矯正の装置も装着しておくほうがよいでしょう。
まとめ
お子さんの前歯のデコボコや深い噛み合わせの治療には、床矯正が有効です。正しく使用すれば、床矯正はトラブルが少なく痛みも少ないため、お子さんにとって非常に負担が少ない治療です。
お子さんの床矯正を考えている方は、小児の矯正治療において実績のある歯科医院を選択することが大切です。まず、そのような信頼できる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。