「将来、お子さんの顔が大きくゆがむ」と言われたら、ほとんどの親御さんがひどく心配するのではないでしょうか? しかし、実際にアゴがゆがむ心配のあるお子さんは決して少なくないのです。
たとえば、奥歯の噛み合わせに問題がある場合です。奥歯の噛み合わせが悪いお子さんは、アゴを横にズラした状態で噛み合わせをします。
このように、まっすぐに噛めない状態で放置すると、お子さんのアゴのズレは成長とともに悪化し、非対称な顔つきになってしまうのです。そのため、お子さんのアゴにズレやゆがみを認めた場合、早期に対応することが非常に重要です。
ここでは、お子さんの下アゴのゆがみやズレを効果的に治すことができる「急速拡大装置(きゅうそくかくだいそうち)」について説明します。
子どものアゴがゆがむ原因とは
お子さんが上アゴの幅が狭く、下アゴとのバランスが悪いと、まっすぐに噛むことができません。奥歯の噛み合わせに問題があって、歯と歯が上手く噛み合わない状態になっているのです。
そのため、お子さんは違和感が少ない位置を探して、下アゴを横にズラしたり、ゆがめたりしながら噛もうとするのです。
急速拡大装置を使った下あごのゆがみ治療
急速拡大装置とは
急速拡大装置は、上あごの幅を広げるために用いる矯正装置です。矯正装置の中でも比較的大きく、お子さんにとって違和感が強い装置といえるでしょう。
なぜなら、短期間でアゴを広げることを目的としているため、頑丈な構造にする必要があるのです。そのため、急速拡大装置は、大きくしっかりとした構造になっているのです。
急激な変化を与えること
下あごのズレを改善するためには、短期間のうちに上アゴの幅を広げる必要があります。なぜなら、ゆっくりとした拡大では、下あごのゆがみを改善することはできないからです。
ゆっくりとした上あごの変化には、お子さんがその変化に適応します。つまり、上アゴをゆっくりと広げた場合、お子さんは下アゴをさらに横にズラして噛もうとするのです。
しかし、早いペースで上アゴを広げた場合、反応が異なります。急激な変化には、お子さんはすぐには対応できないのです。
そのため、しっかりと噛み合わせできる位置がなく、下あごは不安定な状態になります。そして、上あごを広げる中で、上下のアゴ幅が整った瞬間、正しい位置で噛み合わせるようになるのです。
6ヶ月間の安静
急速拡大装置を使って上アゴを拡大した場合、気をつけなければならないことがあります。
それは、ゆっくりと広げた場合と比べて、急速に広げたアゴは元に戻りやすいということです。
そのため、急速拡大装置でアゴを広げた後も、約6ヶ月間装置をつけたままにする必要があります。このように安定期間を設けることで、上アゴの後戻りを防ぐことができるのです。
実際に急速拡大装置で治療を行った事例
以前、私が運営するクリニックに、小学校6年生の女の子が、母親と一緒に矯正相談にきました。かかりつけの歯科医院で、女の子が下顎をズラして噛み合わせることを指摘されたのです。
女の子と母親は、「成長とともに、下アゴがゆがむ」ということを心配していました。そのため、早期に矯正治療で予防することを希望していたのです。
口の中を見ると、女の子の噛み合わせは、まっすぐに噛み合わせができない状態でした。左上の奥歯が大きく内側に傾斜していたために、まっすぐに口を閉じることができず、左側にズラした格好で噛んでいたのです。
その状態を改善するために、私は「急速拡大装置を用いて、下アゴのゆがみを改善すること」を提案しました。なぜなら、女の子の上下のアゴの形態が明らかに違っていたからです。
矯正治療を開始することを女の子が了承したので、さっそく急速拡大装置を使って上顎の幅を急速に拡大することを行いました。すると、1週間後には、女の子は下あごをずらすことなく噛み合わせるようになったのです。
その後、拡大装置を着けたままの状態で、女の子の噛み合わせが安定していることを1年間確認し、矯正治療を無事終了することができました。
アゴのゆがみが改善して、しっかりと噛めるようになったことに、女の子も母親も非常に満足しています。
まとめ
お子さんのアゴのゆがみには、早期に対応することが非常に重要です。また、その時に使用する装置として、急速拡大装置は非常に有効です。
ただし、最も重要なことは、お子さんのアゴにゆがみがある場合、その事に一刻も早く気づくことです。
そのためには、子どもの噛み合わせ育成について実績のある歯科医院を選択することが非常に重要です。
そして、そのような適切な歯科医院を見つけ、定期的に歯並びや噛み合わせのチェックを受けるようにしてください。