お子さんの歯ならびや噛み合わせの異常の中には、放置すると深刻な異常に発展するものがあります。「下あごのゆがみ」もしくは「下アゴの偏位(へんい)」も、放置すると怖い噛み合わせの1つです。
下あごのゆがみとは、奥歯の噛み合わせの異常により、下顎をまっすぐに噛み合わせることができないために起こる噛み合わせの異常です。
まっすぐに噛み合わせることができないため、左右どちらかにずらした格好で、噛み合わせている状態です。
お子さんに下あごを左右どちらかにズラして噛む傾向がある場合、成長ととともに下あごのズレも大きくなります。そして、さらに悪くすると、下あごが骨格的に変形してしまうリスクがあるのです。
そのため、お子さんの下あごのゆがみに対しては、早期に対応することが非常に重要です。
ここでは、お子さんの下あごのズレを簡単に改善することができる「マウスピース型矯正装置」について説明します。
マウスピース型矯正装置とは
子どもの下あごのゆがみ治療には、マウスピース型矯正装置が有効です。マウスピース型矯正装置とは、お子さんが自分で取り外すこともできるマウスピースタイプの矯正装置のことです。
このマウスピース型矯正装置を、口の中に装着しておくだけで、下あごのゆがみが自然に改善するのです。
ただし、使用にあたっては、主治医の指示にキチンと従う必要があります。なぜなら、マウスピース型矯正装置を不適切に使用すると、お子さんの噛み合わせをむしろ悪くしてしまう心配があるからです。
マウスピース型矯正装置による治療
マウスピース型矯正装置の使用時間
マウスピース型矯正装置を用いた治療では、装置の使用時間が非常に重要です。
お子さんは就寝している間にマウスピース型矯正装置を装着することによって、下あごのゆがみを改善します。
しかし、いきなり就寝時にマウスピース型矯正装置を使用することは、どのお子さんにとっても困難です。なせなら、装置を使い始めたばかりでは、唾液が大量に出て違和感が強いからです。
そのため、最初の1ヶ月くらいは、夕方から装置を着け始めて、慣れることが大切です。そのようにすることで、徐々にお子さんはマウスピース型矯正装置に慣れ、就寝時にも装着できるようになるのです。
口の機能訓練
マウスピース型矯正装置を用いて下あごのゆがみ治療を行う場合、舌や口の周りにある筋肉の機能訓練を同時に行う必要があります。
なぜなら、このマウスピース型矯正装置は、「舌や口の周りにある筋肉の力や機能」を利用して、歯並びと噛み合わせを改善する装置だからです。
そのため、矯正装置を口の中に装着しているだけでは、十分な効果は期待できません。マウスピース型矯正装置を適切につけると同時に、舌や口の周りにある筋肉の機能についても向上させるための訓練が必要になるのです。
マウスピース型矯正装置が有効なタイプ
下あごのゆがみの問題を、すべてのお子さんの治療に、マウスピース型矯正装置を使用することはできません。この装置を使用できるのは、噛む力が強いタイプに限定されます。
なぜなら、「噛む力が弱いタイプ」のお子さんに、このマウスピース型矯正装置を用いた場合、前歯が上下的に噛み合わない状態、つまり開咬症(かいこうしょう)になってしまうからです。
開咬症の状態にしてしまうと、その後の治療が非常に厄介になります。なぜなら、開咬症は非常に治りにくく、お子さんの成長とともに悪化する可能性が高いからです。
そのため、マウスピース型矯正装置を用いる際には、お子さんの骨格のタイプを正確に診査する必要があるのです。
まとめ
お子さんの下あごのゆがみ治療には、マウスピース型矯正装置を用いた治療が有効です。正しく用いれば、トラブルも少なく、お子さんの下あごのゆがみを効果的に改善することができます。
ただし、マウスピース型矯正装置は適切に使用する必要があります。なぜなら、不適切な用い方をすると、噛み合わせを悪くしてしまう可能性が高いからです。
そのため、お子さん下あごのゆがみが気になっている親御さんは、子どもの矯正について実績のある歯科医院を選択する必要があります。
そして、まずそのような適切な歯科医院見つけたうえで、矯正相談を受けるようにしてください。