「ワスモンド法」は、外科矯正でもちいる外科手術法の1つです。
外科手術の中でも、重度の上顎前突症治療(=出っ歯治療)における有効な治療法といえます。
「重度の上顎前突を治療する。しかも、外科手術で・・・・・」と聞くと、人はだれしも恐くなったり、心配になったりするのではないでしょうか?
そのため、ここでは、ワスモンド法について詳しく説明するだけでなく、実際に上顎前突治療をおこなった事例についても紹介しています。
これを読むことによって、ワスモンド法について十分に理解できるようになるでしょう。
そして、ワスモンド法が必要になった方においても、きっと安心して手術にのぞめるようになるはずです。
外科矯正とは
外科矯正(=外科的矯正治療)とは、歯列矯正だけでなく、手術もおこなう治療法のことです。ここでいう手術とは、全身麻酔をつかった外科手術のことです。
矯正治療において外科矯正をおこなうことは、決してめずらしいことではありません。だたし、頻繁でもありません。
外科矯正をおこなうのは、歯列矯正だけでは治すことがむずかしい場合のみです。
あご骨の位置に異常があるケースや、あご骨のサイズに異常があるケースでは、歯列矯正だけで問題を解決することは不可能なのです。
そのため、歯列矯正だけでなく、外科手術を同時に行う必要があります。外科手術をおこなえば、あご骨のサイズや位置を自在に変更することができるからです。
ワスモンド法を用いた外科矯正
「ワスモンド法」は、上顎前突症治療にもちいる手術法の1つです。ただし、外科矯正の中でも、ワスモンド法」はすこし特殊な治療法といえます。
なぜなら、「前歯の移動を、外科手術中におこなう治療法」だからです。
具体的には、犬歯の隣にある第一小臼歯の部分を、周囲の骨ごと大きく取り除きます。
そして、取り除いてできたスペースを埋めるように、前歯6本を骨ごと後方に移動するというものです。
このように、ワスモンド法は前歯6本の位置づけを短時間でおこなうことができる治療法、しかも自在におこなうことができる治療法です。
そのため、ワスモンド法をおこなうことによって、以下のようなメリットを得ることができるのです。
ワスモンド法の利点
口元の突出を改善
ワスモンド法をもちいれば、重度の上顎前突症の状態もキレイに治すことができます。
なぜなら、外科手術によって、前歯の位置を骨ごと引っこめることができるからです。
そのため、口元の突出が目立った横顔も、キレイなスッキリとした状態にすることができるのです。
治療期間を大幅に短縮
ワスモンド法をもちいれば、治療期間を大幅に短縮することができます。
なぜなら、ワスモンド法は、前歯の移動を外科手術中におこなう治療法だからです。
ブラケットやワイヤーなどの矯正装置をつかって、前歯を引っ込めたり正確に並べたりする必要はないのです。
そのため、通常の歯列矯正や他の外科矯正の場合とくらべて、治療期間が半年〜1年も短くなるのです。
ガミースマイルを改善
会話もしくは笑顔の際、歯茎が剥きだしになる様子のことを、「ガミースマイル」といいます。
ガミースマイルの改善も、ワスモンド法が得意とするところです。
重度のガミースマイルは、歯列矯正だけで改善することは不可能です。なぜなら、歯列矯正だけで歯茎の位置を大きく変えることはできないからです。
しかし、ワスモンド法を用いれば、前歯が露出することをへらすことができます。なぜなら、ワスモンド法は、前歯の部分を骨ごと移動する方法だからです。
そのため、ガミースマイルの状態を、確実に改善することができるのです。
ワスモンド法は保険適用
ワスモンド法で治療を行うと、健康保険で治療を受けることができます。
なぜなら、ワスモンド法が必要になるケースは、「顎変形症(がくへんけいしょう)」の病名がつくからです。
健康保険の適用になると、治療にかかる費用を安くすることができます。自費でおこなう歯列矯正と比べて、半額もしくはそれ以上安い治療費で治療を受けることができるのです。
実際にワスモンド法を用いた事例
以前、私が運営するクリニックに、出っ歯の矯正を希望する女性が矯正相談にきました。彼女の話をよく聞くと、出っ歯の改善だけではなく、婚活のため出来る限り短期間で治療を終えたいと希望していることが分かりました。
そこで、一気に前歯を後方にさげることができるワスモンド法を提案することにしました。この方法は、歯の抜歯と前歯の移動を外科手術中に行うため、非常に短期間で治療を完了することができる方法です。
ただし、彼女は全身麻酔による外科手術を心配して、ワスモンド法による治療を受けることを躊躇していました。しかし、彼女の矯正治療を短期間で済ませたいという思いが強く、開始することを決心しました。
実際の矯正治療は、ワスモンド法を用いたため、約1年という非常に短い治療期間で終了することができました。彼女は、キレイになった歯並びだけではなく、短期間で治療を終えたことについても非常に喜んでいます。
ワスモンド法を受ける際の注意点
顎口腔機能診断施設
実は、どの歯科医院でも、外科矯正が受けられるわけではありません。外科的矯正治療を受けられるのは、「顎口腔機能診断施設」の認定を受けた医療機関に限られています。
それなら、「外科矯正をうけるためには、大学病院か総合病院にいく必要があるのか?」というと、そうではありません。
一般的な歯科医院の中にも、この顎口腔機能診断施設の認定を受けている医療機関は多く存在します。
顎口腔機能診断施設をみつけることは、それほどむずかしいことではありません。歯科医院に問いあわせしたり、地方厚生局のホームページを確認したりするだけで、簡単に知ることができます。
外科手術を受けるための医療機関
外科矯正における外科手術は、一般の歯科医院でおこなうことはできません。
なぜなら、外科手術の際には全身麻酔が必要だし、手術後には入院も必要だからです。
外科手術を受けることができるのは、大学病院や総合病院などの大きな医療機関です。
そのため、外科矯正をおこなう際には、「歯列矯正を行う医療機関」と「外科手術を行う医療機関」の2つの医療機関を受診する必要があるのです。
まとめ
出っ歯を治す手段として、ワスモンド法は非常に有効です。単に短期間で矯正治療が完了するというだけでなく、非常にキレイな状態に仕上げることが可能です。
ただし、ワスモンド法による治療を受けることができるのは、「顎口腔機能診断施設」の認定を受けている医療機関だけです。そのような医療機関は、大きな病院だけでなく、一般的な歯科医院の中にも見つけることができます。
ワスモンド法による治療を考えている方は、まずは「顎口腔機能診断施設」の認定を受けている歯科医院を選択することが大切です。
そして、その認定を受けている歯科医院へ矯正相談に行くようにしてください。