お子さんの舌小帯(舌の裏側にあるヒダ)に形態異常がある場合、できるだけ早く治療することが重要です。
なぜなら、放置すると、歯並びや噛み合わせに影響するだけではなく、口の機能にも悪影響を及ぼす心配があるからです。
しかし、舌小帯の形態修正は、お子さんにとって負担が大きく大変な処置です。そのため、舌小帯の形態修正を行うタイミングについては、十分に考慮する必要があります。
ここでは、お子さんの舌小帯の形態異常について、その治療を行うべきタイミングについて説明します。
舌小帯の形態異常とは
舌の裏側にあるヒダのことを、「舌小帯(ぜつしょうたい)」と呼びます。
この舌小帯が短かったり、舌の先端にまで及んでいたりすることで、舌の可動域がせまくなり、舌を正常に動かすことができないお子さんがいます。
お子さんの舌小帯に異常をそのまま放置すると、「呼吸する・食べる・飲み込む・発音する」などの口の機能が十分に発達できないなどの問題が発生するため注意が必要です。
私のクリニックでは、基本的に舌小帯の異常については、小学校の低学年の時期に「舌小帯の形態修正」を行うようにしています。なぜならば、この時期が「最も切除するために適切な時期である」と考えているからです。
舌小帯の形態異常への対応
乳児の時期
乳児の頃は、舌の先端まで舌小帯が及んでいることが多いです。
しかし、舌小帯の位置は発育とともに後退することが一般的です。そのため、乳幼児に対して舌小帯の形態修正を行うのは適切ではありません。
なぜなら、舌小帯を形態修正したときの傷あとが、その後のアゴの成長を邪魔してしまう心配があるからです。そのため、この時期はあまり心配をせず、定期的に専門家のチェックを受けることがオススメです。
保育園および幼稚園の時期
幼児期になっても舌小帯に異常が残っている場合は、注意が必要です。なぜなら、本来この時期は基本的な口の機能を身につける時期だからです。
ただし、この時期に舌小帯の形態修正を行うことできません。なぜなら、この時期のお子さんは幼いために、治療の協力を得ることができないからです。
そのため、この時期には、積極的に舌を動かす訓練を行います。舌の訓練を徹底して行うことで、舌小帯を伸ばすことができるようになるからです。
さらに、舌の可動域を改善することによって、舌小帯の形態が徐々に変化することが期待できます。そのため、この時期に積極的に舌の訓練を行うことは重要なのです。
小学校に入学した後
口に関係するほとんどの機能は、お子さんの幼少期に身につけられます。そのため、いったん身につけた動作を、簡単に改善することは非常に難しいのです。
そのため、お子さんの舌小帯に異常がある場合、できるだけ早い時期に形態修正を行い、すぐに舌や口の機能訓練を徹底的に行う必要があります。なぜなら、舌小帯の形態修正を行う時期が遅すぎると、口の機能を改善することが難しくなるからです。
また、お子さんが小学校にあがる頃には、治療に対する協力を得ることができます。そのため、小学校1~3年生の時期に舌小帯の形態修正を行うことがオススメなのです。
実際に舌小帯を治療した事例
以前、私が運営するクリニックに、「八重歯の治療」を希望した小学校5年生の女の子が矯正相談にきました。矯正相談中、女の子の舌足らずな発音と、唾液(またはツバ)を飲み込むときの不自然な様子が気になりました。
そこで、口の中をよく観察すると、女の子の舌小帯には形態異常があり、舌を上方に持ち上げることができないタイプであることが分かりました。そのため、矯正治療とともに、「舌小帯の形態修正」と「舌の機能訓練」を行うことを提案しました。
母親も以前から「女の子の発音の問題」を心配していたこともあり、計画どおり矯正治療を開始することにしました。はじめに舌小帯の治療を行い、その後、矯正治療と同時に舌の機能訓練を徹底的に行いました。
矯正治療を終了した時点では、女の子が舌の機能訓練を頑張った結果、発音だけでなく飲み込み方の問題も解決することができました。そのため、女の子と母親は、矯正治療と機能訓練の結果に非常に満足しています。
まとめ
舌小帯の形態修正は、お子さんにとって負担が大きい治療であるため、行う時期については十分に考慮する必要があります。また、形態修正を行う前後の対応も非常に重要です。
お子さんの舌小帯の形態異常について気になっている方は、まず「子どもの口の機能を育成する」ことに積極的に取り組んでいる歯科医院を選択することが大切です。
そのような実績のある歯科医院を見つけたうえで、治療相談に行くようにしてください。