お子さんの矯正治療には、できるだけ小さな装置、もしくは負担の少ない装置を使いたいです。しかし、大きな装置、お子さんに負担を強いる装置を使わざるを得ないケースがあります。
受け口のお子さんの治療で用いる「プロトラクター(または、上顎前方けん引装置)」も、その1つです。使用する期間は比較的短いですが、非常に大きく、違和感を感じやすい装置です。
ここでは、お子さんの受け口の治療で、プロトラクターを用いた際に起こりやすいトラブルについて説明します。
プロトラクターとは
プロトラクターは、「上あごの骨を前方に引っ張る装置」です。つまり口の外側から上あごを前方に引っ張ることによって、積極的に上あごを前方に大きくするのです。
さまざまなタイプのプロトラクターがありますが、最もオーソドックスなのが、「おでこ」と「下あごの先端」を、「チカラを受け止める部分」として利用するタイプのものです。
基本的にプロトラクターは、就寝中にお子さんが使用するものですが、その他の時間も使用することが可能であれば、更に効果がでることが期待できます。
プロトラクターで発生するトラブル
就寝時のトラブル
プロトラクターは口の外に取り付ける装置、しかも顔の正面に取り付ける矯正装置であるために起こるトラブルがあります。それは、「寝づらい」「寝返りの時にずれてしまう」といった問題です。
通常、このような問題はお子さんがプロトラクターに慣れてくると、自然に解決してくるケースが非常に多いです。しかし、どうしても寝返りの際にずれてしまう場合には、「引っ張るゴムの強さを強くする」という方法が有効です。
そのため、「お子さんのプロトラクターが、ずれてしまう」と心配されている方は、「ゴムの強さ」について主治医と相談することをオススメします。
口唇のトラブル
プロトラクターを用いると、口の中から外へゴムをかけるので、口唇もしくは口唇の端(口角・こうかく)が荒れることがあります。
この場合、プロトラクターを用いる際に「リップクリームを口唇に塗る」と、口唇荒れの問題が起こりにくくなります。
しかし、どうしても口唇荒れの問題が発生する場合には、「引っ張るゴムの高さを変更する」もしくは「ゴムが交叉するようにかける」という方法が有効です。
そのため、「プロトラクターを使用すると、口唇が痛い」と困っている方は、「ゴムの高さ、またはゴムのかけ方」について主治医と相談することをオススメします。
肌荒れのトラブル
プロトラクターを使用すると、下あごの先端や、おでこなど「チカラを受け止める部分」の皮膚が荒れることがあります。皮がむけたり、赤くなったりするトラブルです。
特に夏場は、汗疹(あせも)が関係して起こりやすいです。そのため、皮膚が荒れる部分に、「ベビーパウダーを塗る」「ティッシュや、ガーゼなどを間にはさむ」などが非常に有効です。
しかし、どうしても肌荒れの問題が発生する場合には、「異なるタイプのプロトラクターに変更する」という方法があります。
そのため、「プロトラクターを使用すると、肌荒れがひどい」と困っている方は、「他のタイプのプロトラクターに変更すること」について主治医と相談することをオススメします。
お子さんの受け口治療にプロトラクターを使用した事例
以前、私が運営するクリニックに、受け口のある女の子を連れて母親が矯正相談にきました。
母親の話によると、以前からお子さんの受け口の状態を心配していたようです。そして、女の子が「矯正治療をはじめる」と、やっと決心できたためやってきたのです。
矯正治療のための検査を行った結果、女の子の受け口は、重度の受け口タイプであることが分かりました。そのため、女の子に負担はかかりますが、「プロトラクターを用いて、矯正治療することが最適である」という提案をしました。
プロトラクターを使用すると、「下あごの先端が、皮がむけて赤くなる」というトラブルが発生しました。
そのため、ベビーパウダーや軟膏を塗ったり、ガーゼやティッシュを用いたりして対応しました。しかし、皮膚の症状は、なかなか改善しませんでした。
しかし、それでも、女の子は一生懸命にプロトラクターを頑張って使用し続けました。その結果、約6ヶ月間という短い期間で、プロトラクターを終了することができました。
プロトラクターを終了して1週間後には、女の子の肌荒れのトラブルもキレイに改善しています。
女の子の噛み合わせだけでなく、口元の様子も改善したことに、母親もものすごく喜んでいます。
まとめ
受け口のお子さんの治療には、プロトラクターが有効です。しかし、大きく違和感が強い装置であるために、お子さんにも負担を与えてしまうことがあります。
そのため、お子さんの受け口治療には、「受け口治療について実績がある歯科医院」を選択することが重要です。
そして、お子さんの治療を安心して任せられる歯科医院を探したうえで、矯正相談に行くようにしてください。