矯正治療をスムーズに完了するために、矯正用のミニインプラント(またはインプラントアンカー)を用いる場合があります。「ミニインプラントを骨に入れる」と聞くと、ひどく心配する方も多いようです。
ただし、矯正用ミニインプラントは適切に用いれば、簡単で非常に安全な処置ということができます。ただし、ミニインプラントを行う際、当然リスクもあります。その中でも、比較的大きなトラブルになりうるのが「ミニインプラントと歯の根との接触」です。
ここでは、矯正用みにインプラントを用いる際の、歯の根にインプラントが接触するトラブルについて説明します。
ミニインプラントとは
ミニインプラントとは、矯正治療の際に用いる直径1.6mm、長さ8〜10mmほどの「小さなネジ」のことです。実際には、少量の部分麻酔を行った後で、ミニインプラントを骨に5mmほどネジ入れて使用します。
ミニインプラントに大きな力をかけたとしても、ミニインプラントの位置が移動することはありません。そのため、ミニインプラントを矯正治療に用いることによって、治療方法や矯正装置自体をシンプルにすることができるようになったのです。
例えば、歯を抜いて行う「出っ歯」の矯正です。これまでは、前歯を効果的に奥の方へ下げるためには、たくさんの矯正装置を奥歯に装着する必要がありました。しかし、ミニインプラントを用いる方法では、ミニインプラントと前歯の間に単純にゴムをかけるだけで済むのです。
ミニインプラントによる歯の根の損傷
歯と歯の間にミニインプラントを入れる場合、細心の注意が必要です。なぜならば、ミニインプラントを不適切に入れた場合、歯の根にダメージを与えてしまう恐れがあるからです。
歯の根にミニインプラントが接触した程度であれば、根の表面は自然に回復します。しかし、歯の根を深く傷つけたり、突き刺したりした場合、大きなトラブルになってしまうことが心配されます。
歯の根に接触しないための対策
麻酔の量を少なくする
ミニインプラントを入れる際、「部分麻酔の量を最小限にしてミニインプラントを入れる」ことで大きな事故を予防することができます。なぜなら、部分麻酔を浅くかけることで、歯の感覚を残すことができるからです。
歯の感覚が残った状態であれば、ミニインプラントが歯の根に近接しただけで、患者さんは痛みを感じることができます。しかし、歯の感覚が完全に麻痺していると、ミニインプラントが歯の根を傷つけた場合でも、患者さんは痛みを感じることができないのです。
手用の道具でインプラントを入れる
ミニインプラントを入れる際、「手用のドライバーを使ってミニインプラントを入れる」ことで大きな事故を予防することができます。なぜなら、手用のドライバーを用いた場合、骨の硬さと歯の根の硬さの違いを指先で感じることができるからです。
骨に比べて、歯の根の方がわずかに硬いことが分かっています。そのため、手用のドライバーを使用していれば、ミニインプラントが歯の根に接触した時点で、指先で異常を感じ取ることができます。
しかし、回転ドリルを用いてミニインプラントを入れようと、骨と歯の根の硬さの違いを感じることが難しくなります。そのため、歯に近い場所にミニインプラントを入れる場合、手用のドライバーを使って行った方が安全であるといえます。
ガイドを用いる
ミニインプラントを入れる際、「ガイドを使ってミニインプラントを入れる」ことで大きなトラブルを予防することができます。口の中の模型とCTのデータを使って、ミニインプラントを安全に入れることができる場所と方向をあらかじめ決めておくのです。
ガイドを用いると、計画通りにミニインプラントを入れることができます。そのため、歯の根にミニインプラントを接触させたり、歯の根に突き刺したりするリスクを最小限に抑えることができるのです。
ミニインプラントで歯を壊した事例
ある歯科医院で、ミニインプラントを男子高校生の歯の根に突き刺してしまったという事例があります。このようなトラブルが起こった最大の原因は、3つの予防策がどれもとられていなかったことです。
つまり、不適切な場所に、部分麻酔を深く効かせた状態で、回転ドリルを用いてミニインプラントを入れたために、このトラブルが起こったのです。
残念ながら、この高校生の男の子は、このミニインプラントでダメにした歯を抜かざるを得ませんでした。ミニインプラントを不適切に行うと、このような不幸なトラブルを招く心配があるのです。
まとめ
ミニインプラントを用いることで、矯正治療を効率的かつ確実に実行することができます。ただし、ミニインプラントを入れる際には、細心の注意が必要です。なぜなら、ミニインプラントを入れる際、歯の根を傷つけてしまう危険性があるからです。
そのため、ミニインプラントを用いた矯正が必要と思われる方は、まずその治療経験が多い歯科医院を選択することが重要です。そして、そのような実績のある歯科医院で矯正相談を受けることがオススメです。