小児期の出っ歯は、できるだけ早期に対応してあげる必要があります。なぜなら、単に見た目の問題だけではなく、転倒などの事故の時には前歯を打撲しやすかったり、歯を折ってしまったりするからです。
また、小児期の出っ歯を放置すると、骨格的に問題がある出っ歯に移行する心配があることも、早期に対応する必要がある理由の1つです。小児期の出っ歯の治療には、「マウスピース型矯正装置」が非常に有効です。
複雑な矯正器具を用いないため、トラブルも少なく、お子さんの出っ歯を効果的に矯正することができます。ただし、すべての出っ歯のお子さんにマウスピース型矯正装置を用いることはできません。
なぜならば、マウスピース型矯正装置を使用するお子さんのタイプを間違うと、お子さんの噛み合わせの状況を悪くしてしまうことがあるからです。
ここでは、子どもの出っ歯の治療に有効な「マウスピース型矯正装置」について説明します。
子どもの出っ歯の治療に有効なマウスピース型矯正装置とは
子どもの出っ歯の治療には、マウスピース型矯正装置が有効です。マウスピース型矯正装置とは、お子さん本人が取り外し可能なマウスピース様の矯正装置のことです。このマウスピース型矯正装置を、口の中に装着しておくことで出っ歯を矯正するのです。
マウスピース型矯正装置は、お子さんが就寝する2時間ほど前から装着します。そして、そのまま睡眠中も装置をつけて寝ることによって、出っ歯を矯正することができるのです。
マウスピース型矯正装置を使用する際の注意点
マウスピース型矯正装置を使用できる「骨格のタイプ」
お子さんの出っ歯を治すためには、骨格のタイプを正確に調べることが大切です。具体的には、お子さんの噛む力が「強いタイプ」なのか、もしくは「弱いタイプ」なのかを診査する必要があるのです。
なぜなら、「噛む力が弱いタイプ」のお子さんに、このマウスピース型矯正装置を用いた場合、前歯が上下的に噛み合わない状態、つまり開咬症(かいこうしょう)になってしまうからです。
開咬症の状態にしてしまうと、その後の治療が非常に厄介になります。なぜなら、開咬症は非常に治りにくく、お子さんの成長とともに悪化する可能性が高いからです。
そのため、マウスピース型矯正装置を用いる際には、お子さんの骨格のタイプを正確に診査する必要があるのです。
鼻呼吸の完全閉鎖
マウスピース型矯正装置を用いることによって、「お子さんが鼻で息をする」という習慣を強化することができます。お子さんが健全に成長発育するためには、口からではなく鼻で息をする習慣を身につけることが非常に大切です。
ただし、お子さんが鼻で呼吸が全くできないために、マウスピース型矯正装置を使用できないケースがあります。たとえば、蓄膿症がある場合や、ノドにあるリンパ組織が大きく腫れている場合です。
このような問題がある場合は、息苦しくためマウスピース型矯正装置を使用することはできません。他の矯正方法もしくは矯正装置を用いて、お子さんの出っ歯を改善する必要があります。
筋機能訓練が必要
マウスピース型矯正装置を用いて出っ歯の治療を行う場合、舌や口の周りにある筋肉の機能訓練を同時に行う必要があります。
なぜなら、このマウスピース型矯正装置は、「舌の力と、口の周りにある筋肉の力」を利用することによって、歯並びと噛み合わせを改善する装置だからです。
そのため、矯正装置を口の中に装着しているだけでは、十分な効果は期待できません。マウスピース型矯正装置を適切につけると同時に、舌や口の周りにある筋肉の機能についても向上させるための訓練が必要になるのです。
実際にマウスピース型矯正装置を用いて治療を行った事例
以前、私の運営するクリニックに、娘の出っ歯を心配する母親と一緒に、小学生の女の子が矯正相談にきました。女の子の話をよく聞くと、彼女は「出っ歯を治したい」と希望していました。
しかし、同時に「友達に見える矯正装置はつけたくない」という強い要望があることがわかりました。まずは、矯正治療の診断に必要な検査を行った後に、治療方法について相談することにしました。
検査を行った結果、女の子はマウスピース型矯正装置を使うことが可能な「噛む力が強いタイプ」であることが分かりました。そこで、女の子とその母親に対して、マウスピース型矯正装置を使った出っ歯の矯正を提案しました。
そして、女の子と母親は、マウスピース型矯正装置を使った矯正をすることを決心しました。約2年間、女の子が適切に装置を使用したため、非常に状態で矯正治療を終えることができました。
また、治療に協力的だった女の子も、「友達に矯正装置を見られることなく矯正ができたこと」を非常に喜んでいます。
まとめ
お子さんの出っ歯の治療には、小児期であればマウスピース型矯正装置は有効です。正しく用いることができれば、トラブルも少なく、お子さんの出っ歯を効果的に改善することができます。
ただし、マウスピース型矯正装置は適切に使用する必要があります。なぜなら、不適切な用い方をすると、単に出っ歯が改善しないだけではなく、噛み合わせを悪くしてしまう可能性が高いからです。
そのため、お子さんの出っ歯の治療を考えている親御さんは、子どもの矯正について実績のある歯科医院を選択する必要があります。
そして適切な歯科医院で、矯正相談を受けるようにしてください。