「出っ歯は治したい・・・・」
「でも、手術はしたくない・・・・」
そう考えている方にとって、ピッタリの治療法があります。それは、「マルチループ矯正」という方法です。
このマルチループ矯正を用いれば、重症の上顎前突症(または、出っ歯)を外科手術なしで改善することができます。しかも、上顎前突症の根本的な原因にアプローチする治療ができるため、上顎前突の改善にはオススメの治療法なのです。
ここでは、そんな特殊なマルチループ矯正について説明します。
これを読むことで、マルチループ矯正について詳しく知ることができるだけでなく、自分にとってマルチループ矯正がふさわしい治療か判断できるようになるはずです。
重度の上顎前突症とは
上顎前突症における軽症と重症のちがいは、顎骨の骨格的異常の程度によって判断します。つまり、重度の上顎前突症とは、下顎が極端に小さいことが原因で、著(いちじる)しい上顎前突になっているケースのことです。
なぜなら、上顎と下顎のサイズが極端に違う場合、歯列矯正だけで噛み合わせを整えたり、横顔の印象を改善したりすることが難しいからです。
そのため、重度の上顎前突症と判断されるケースでは、外科手術で下顎を前方に移動することによって、噛み合わせを整えたり横顔の印象を改善したりすることが必要になってくるのです。
外科手術以外の歯列矯正法
一般的な上顎前突治療は、上あごの歯を抜いて行う歯列矯正が一般的です。これは、犬歯の隣にある小臼歯を抜いて、そのスペースに前歯を下げるてくるという方法です。
そのため、この治療法では、下あごが前方に移動することはありません。なぜなら、正常より小さい下あごの位置に、上の前歯を移動するものだからです。
そのため、抜歯して行う上顎前突治療は、下あごの位置が変化しないだけでなく、横顔の印象を十分に改善することができないという欠点があるのです。
マルチループ矯正の特徴
マルチループ矯正とは、複雑に曲げたマルチループというワイヤーを、用いて行う矯正治療のことです。
「マルチループ矯正」を用いると、他の矯正法とは異なる方法で、上顎前突を治療することができるのです。
奥歯の高さを変えることができる
マルチループ矯正は、奥歯のかみ合わせの高さを、自在に変化することができる治療法ということができます。
なぜなら、マルチループ矯正で用いるマルチループワイヤーには、たくさんの曲げが加えてあるからです。
そのため、歯を1本づつ三次元的にコントロールすることができるのです。
下あごの位置を変えて、新たな噛み合わせを作ることができる
マルチループ矯正を用いることで、下あごを前方に位置決めすることができます。なぜなら、マルチループワイヤーを用いることによって、奥歯の高さを自在にコントロールすることができるからです。
そのため、下あご前方に移動した位置で、奥歯の噛み合わせを新たに作りなおすことができるのです。
また、そうすることによって、上あごの前歯を後に下げるのではなく、下あごを前方に移動することで、上顎前突を改善することができるのです。
抜歯なしでも、前歯の角度を改善することができる
マルチループ矯正を行うことで、抜歯なしでも前歯の角度を修正することができます。
なぜなら、マルチループワイヤーを用いることによって、全部の歯を3次元的にコントロールすることができるからです。
そのため、前歯の角度を修正すると同時に、奥歯を後方に傾けることによって、歯を抜かなくても前歯の角度を改善することができるのです。
マルチループ矯正を、選択するときの3つの注意点
前歯の位置を引っ込めることはできない
マルチループ矯正で上顎前突治療を行っても、上あごの前歯を大きく引っ込めることはできません。
なぜなら、マルチループ矯正は、前歯の角度を修正したり、下あごの位置を前方に移動したりすることで、上顎前突を改善する治療法だからです。
よって、口元の突出を改善するために、上あごの前歯を引っ込める必要があるケースでは、マルチループ矯正は相応しくありません。
マルチループ矯正より、むしろ抜歯して前歯を引っ込める一般的な歯列矯正が相応しいと言えるでしょう。
治療中の違和感が大きい
マルチループ矯正は、治療中もっとも違和感が大きい治療法ということができます。なぜなら、複数の曲げを加えたワイヤーを、口の中に装着するからです。
そのため、食べ物がたくさん詰まったり、口内炎ができやすかったりしやすいのです。
そのため、マルチループ矯正で治療をはじめる際には、ある程度の覚悟が必要ということができるでしょう。
患者さんの協力が必須
マルチループ矯正は、患者さんを選ぶ治療法ということができます。なぜなら、マルチループ矯正で治療を行うためには、「顎間(がっかん)ゴム」の徹底が必須だからです。
顎間ゴムとは、上あごの装置から、下あごの装置に向かって輪ゴムをかける「ゴムかけ」のことです。
そして、このゴムかけの協力が得られない場合、まったく治療にならないからです。そして、場合によっては、深刻な状況にまで悪化するケースも考えるからです。
この点でも、マルチループ矯正で治療をはじめる際には、ある程度の覚悟が必要ということができるでしょう。
実際に、マルチループ矯正治療を行った事例
過去に、上顎前突に悩んでいる中学生の男の子が、私のクリニックの矯正相談にこられました。本人だけでなく、両親もお子さんの前歯がひどく出ていることを気にしていました。
横顔を見たときに、下あごがかなり後ろに下がった印象であったため、「マルチループ矯正」について紹介しました。
「マルチループ矯正によって前歯を治す」と決心した彼は、治療中も非常に協力的であったために、短期間で矯正治療を終えることができました。
まとめ
マルチループ矯正で行う上顎前突治療は、前歯を引っ込めるのではなく、下あごを前方に位置付けした格好にする治療方法です。
下あごを前方に動かす方法であることから、下あごが小さいタイプの上顎前突治療を行う際には、非常に有効な治療方法といえます。
なぜなら、下あごが引っ込んだ印象のある患者さんでは、口元の印象を大きく変えることができる方法だからです。