小さい頃、頑張って治療した受け口も、第二次性徴(だいにじせいちょう)がはじまると再発したり、悪化したりする心配があります。
なぜなら、第二次性徴の時期に見られるアゴ骨の成長は、受け口タイプのお子さんにとって、不利に作用するからです。
ここでは、第二次性徴期にみられるアゴ骨の成長と、受け口の再発について説明します。
アゴ骨の成長
第二次性徴の時期は、身体が大きく成長する時期です。口の中でも、乳歯が抜けてしまったり、12歳臼歯(または、第二大臼歯)が生えはじめたりする時期です。
アゴ骨の形態についても、この時期に大きく成長します。ただし、この第二次性徴の時期に大きくなるのは下アゴだけです。
なぜなら、お子さんが小学校にあがる頃には、上アゴの成長はすでにほとんど完了しているからなのです。
受け口の再発
以前、受け口治療を受けた経験があるお子さんでは、第二次性徴期の成長によって、受け口が再発する心配があります。
最初の要因として挙げられるのが、「下アゴの大きさ」です。通常より大きい形態の下アゴが、さらに大きくなることで、上の前歯を追い越してしまうのです。
次の要因として挙げられるのが、「成長の期間」です。受け口タイプのお子さんの場合、下アゴが成長する期間が長いという特徴があります。
よって、下アゴは通常よりも長い期間成長しつづけるため、受け口が再発する危険性が高くなるのです。
受け口の治療
受け口タイプのお子さんでは、第二次性徴の際、下アゴが極端に伸びて、受け口が再発する心配があります。
そのため、私のクリニックでは、前歯の被(かぶ)さりを余計につくるようにしています。つまり、前歯の噛み合わせを、やや出っ歯の格好にするのです。
このように、上アゴを大きくして準備することで、第二次性徴期に下アゴがある程度大きくなっても、受け口の状態にならないようにするのです。
第二次性徴の時期に、受け口が再発した事例
以前、わたしが運営するクリニックに、受け口をもつ男の子が矯正相談にきました。男の子の噛み合わせに問題があることを心配して、母親が連れてきたのです。
矯正治療に必要な検査を行った後、すぐに上アゴを広げて矯正治療を開始することにしました。なぜなら、検査の結果、下アゴの大きさに比べて、男の子の上アゴは非常に小さいことが分かったからです。
そして、上アゴを拡大する矯正装置を使用することで、予定どおり、男の子の受け口を改善することができました。
しかし、男の子が中学生になると、彼の下アゴは突然大きく伸びはじめました。第二次性徴期が、始まったのです。
そして、再び、受け口の状態になってしまったのです。このように、第二次性徴期の下アゴの成長が激しいと、受け口が再発してしまうケースもありえるのです。
まとめ
受け口(または、下顎前突症)の傾向があるタイプでは、第二次性徴の際、下アゴが大きく伸び出す可能性があります。
そのため、第二次性徴における変化を考慮して、第二次性徴がはじまる前に、適切な予防処置および準備を行うことが非常に大切なのです
よって、お子さんに受け口の傾向がある場合、まずは受け口治療の実績がある歯科医院を選択することが非常に大切です。
そして、そのような歯科医院を見つけたうえで、すぐに治療相談に行くようにしてください。