矯正歯科医院でも、多くの歯科衛生士が勤務しています。一般歯科に勤める歯科衛生士と同様に、患者の「口の衛生管理」を行うことが主な役割です。
しかし、矯正歯科ではその専門性のために、法律で認められている業務範囲、つまり 歯科衛生士が実際に行って良いと考えられる業務範囲が明確にねっていないようです。
よって、ここでは、矯正治療において、「歯科衛生士が行うことのできる歯科業務」の範囲について説明します。
法律の記載について
診療放射線技師法(第二十四条)
歯科衛生士がレントゲン撮影を行ってはいけないということは、すでに多くの方が御存知と思います。
矯正歯科においても、矯正治療の診断に必要なレントゲン撮影を行う際、歯科衛生士が実際にレントゲン撮影を行うことは固く禁じられています。
しかし、レントゲン撮影の補助については、行うことができます。撮影機の設定を行ったり、患者さんを適切な格好に位置づけたりしても、何の問題もないのです。
歯科衛生士法(第十三条の二 :歯科医療行為の禁止)
このように「歯科衛生士法」によると、矯正治療で行うワイヤーの取り外しを行ったり、ゴムの交換を行ったりする行為については、歯科衛生士が実際に行っても問題ないことが分かります。
しかし、歯に装置を取り付けたり、ワイヤーを曲げたりする行為については、「日本矯正歯科学会」や「日本小児歯科学会」の見解を確認する必要があります。
学会における見解について
日本矯正歯科学会の見解
日本矯正歯科学会は、矯正治療に関わるかなり多くの内容について、「歯科衛生士が行うことができる処置である」と判断しています。
たとえば、奥歯に金属帯環(または、バンド)を装着したり、ブラケットなどの矯正器具を歯に貼り付けたりする処置についてです。 これらの処置については、歯科衛生士が実際に行っても問題ないとの見解を出しています。
ただし、「ワイヤーに曲げを加えて、さまざまな機能を組み入れる行為については、歯科衛生士が行う処置として不適切である」と警告しています。
なぜなら、「ワイヤーに、さまざまな機能を曲げ込む」行為は、医療行為であると判断されるからです。
日本小児歯科学会の見解
また、小児歯科学会でも、矯正治療で行う多くの処置について「歯科衛生士が行うことができる」と判断しています。
具体的には、矯正装置(ブラケット)を歯の表面に付ける処置や、ワイヤーを交換する行為について、日本矯正歯科学会の見解と同様に、「歯科衛生士がおこなっても問題はない」と判断しています。
ただし、「ワイヤーにいろんな機能を曲げ込む」行為については、日本小児歯科学会の見解には明記してありません。
そのため、わたしのクリニックでは、ワイヤーを曲げる行為については、日本矯正歯科学会の見解どおり、歯科衛生が行うべきではない処置と判断しています。
まとめ
矯正歯科医院では、多くの歯科衛生士が活躍しています。歯科衛生士の資格は、3年間の専門教育を受け、国家試験に合格してやっと得ることができる資格です。
そのため、行うことができる業務範囲についても、歯科衛生士法などの法律で厳しく定められています。
よって、これから矯正治療を考えている方は、歯科衛生士が法律で定められた範囲で適切な業務を行う歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。