矯正治療の中には、治療を開始する時期が早すぎたことが仇(あだ)となって、治療中に治療方針が大きく変更になったり、キレイに整えたはずの歯並びや噛み合わせが大きく崩れたりするものがあります。
たとえば、「受け口の治療」です。なぜなら、受け口のタイプは、第二次性徴の影響を強く受けやすい噛み合わせだからです。
ここでは、受け口の治療を焦(あせ)って始めてはいけない理由について説明します。
第二次性徴期の受け口の悪化
第二次性徴の時期には、身長が大きくなったり、体重が増えたりして、身体が大きく変化する時期です。そして、身体が成長するのと同時に、アゴ骨も急激に大きくなる時期でもあります。
しかし、この時期に成長するのは、「下アゴ」だけです。
なぜなら、上アゴの成長については、小学校にあがる時点ですでにほぼ完了している状態だからです。そのため、第二次性徴期になっても、上アゴが大きくなることはほとんどないのです。
さらに問題なのは、受け口タイプの人は、下アゴの形態が通常より大きく、成長する期間が通常より長いということです。
そのため、受け口タイプの人は、第二次性徴期に下アゴが極端に伸びやすいということができます。
よって、受け口の矯正治療を行う際には、特に治療を開始する時期については、十分に配慮する必要があるのです。
矯正治療の開始時期
わたしのクリニックでは、患者さんが受け口タイプである場合、第二次性徴が完全に終了したことを確認してから、本格的な矯正治療を開始するようにしています。
なぜなら、下アゴの成長が残っている状態で矯正治療を開始して、治療中に下アゴが伸びると、はじめの治療方針を大きく変更する必要がでてくるからです。
それ以外にも、下アゴの成長が残っている状態で治療が完了しても、その後の下アゴの成長で、キレイに整えた歯並びや噛み合わせが崩れてしまうからです。
第二次性徴期の終了時期については、身長の変化を記録したり、手のレントゲン写真を診断したりすることで判断することができます。
そのため、わたしのクリニックでも、受け口タイプの患者さんの場合、定期的に「身長を測定」や「手のレントゲン撮影」を行っています。
実際に、受け口治療を行った事例
以前、わたしが運営するクリニックに、受け口の男の子が矯正相談に来ました。
矯正治療に必要な検査を行った結果、男の子の受け口は、下アゴが大きいだけでなく、上アゴが非常に小さいタイプであることがわかりました。
そのため、上アゴの形態を一旦大きくしたうえで、本格的な矯正治療は第二次性徴が終了した後に開始することを提案することにしました。
なぜなら、第二次性徴期における成長で、男の子の下アゴは極端に伸びる心配があったからです。
そして、第二次性徴が完了するのを確認してから、本格的な矯正治療を開始しました。
ブラケット(または、矯正器具)を歯に貼り付けて20ヶ月治療を行った結果、予定どおり、男の子の受け口を改善することができました。
第二次性徴期の成長が完全に終了したことを確認して、矯正治療を開始したため、男の子の歯並びと噛み合わせは崩れることなく、非常に安定しています。
まとめ
受け口タイプの患者さんでは、矯正治療を開始するタイミングが非常に重要になります。なぜなら、受け口タイプの方は、第二次性徴期における成長の影響を強く受けやすいからです。
よって、下アゴが大きいタイプの方は、受け口治療において実績のある歯科医院を選択することが大切です。
そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。