矯正治療をおこなううえで、歯の抜歯が必要となるケースがあります。たとえば、歯のデコボコをキレイに並べる治療、もしくは前歯の位置を大きく後ろに引っ込める治療が必要になる場合です。
しかし、実際に歯の抜歯をすませると、抜歯したあとの傷口やすき間が、想像していた以上に目立つことに、あなたはビックリするかもしれません。そして、この状態がいったいどのくらい続くのか心配になるはずです。
友達や同僚との会話でも、抜歯したすき間が気になって、口を開けてしゃべったり、口を開けて笑ったりすることを躊躇(ちゅうちょ)するようになるかもしれません。
人前にでる機会が多い方や、初対面の人もしくは特別な人と会う方はなおさら、抜歯したところを「かくしたい」「目立たないようにしたい」と考えるのは当然なのです。
ここでは、抜歯した部分が目立たなくなるまでの期間と、目立ちにくくする方法について説明していきます。
矯正治療で抜歯する歯
矯正治療で抜歯する歯として、最も採用することが多いのが「小臼歯(しょうきゅうし)」です。
上アゴでは、犬歯の隣にある第一小臼歯を選択することが、圧倒的に多いです。また、下アゴでも第一小臼歯、または、その隣にある第二小臼歯を抜歯する歯として採用することがほとんどです。
このように、矯正治療で抜歯が必要になる歯は、比較的前歯に近い位置にある歯です。そのため、抜歯を行うと、傷口やすき間が目立ちやすいという問題が発生してしまうのです。
傷口やすき間が目立たなくなるまでの期間
傷口が治るまでの期間
抜歯したばかりの時期は、歯を抜いたあとに穴があり、非常に目立ちやすい状態です。
とくに、抜歯して最初の1週間は、傷口に血のかたまりやカサブタがある状態です。そのため、周囲よりも色味がつよく、生々しく目立ってしまいます。
では、この抜歯でできた穴は、どのくらいの期間でふさがることができるのでしょうか?
穴の周囲にある歯ぐきは、およそ1日に0.5mmのスピードで伸びます。そのため、傷口が比較的目立たない状態になるためには、抜歯後、およそ10日から2週間が必要です。なぜなら、小臼歯の直径がおよそ4mmだからです。
そのため、大切な人と会う予定や、結婚式など参加するイベントを考慮して、抜歯の予定を決めるようにしてください。
隙間が閉じるまでの期間
抜歯してできたスペースは、すき間の両サイドにある歯を寄せることによって閉じていきます。
矯正治療で閉じることができるスペースは、1ヶ月間でおよそ1mmです。小臼歯の幅は、およそ8mmです。そのため、スペースはおよそ8ヶ月で閉じる計算です。
しかし、実際の矯正治療では、抜歯を行ったあとには、スペースを閉じるための準備期間が必要です。具体的には、全体の歯を整列して、太くて硬い矯正用ワイヤー(または、針金)が矯正装置にはいる状態にします。
なぜなら、すき間を閉じる際、ワイヤーに大きなチカラを加える必要があるからです。このときのワイヤーが細すぎたり、やわらかすぎたりすると、ワイヤーが変形してしまうからです。
このように、すき間を閉じはじめるまでに、準備期間が必要なのです。そのため、抜歯でできたスペースを閉じるためには、1年以上かかるものと想定するべきいいでしょう。
ただし、途中、すき間が小さくなるに従って、あまり目立たなくなります。そのため、抜歯のすき間が極端に目立つ期間は、それよりも短いということができます。
すき間が目立つ期間の対処法
仮歯で目立たなく
抜歯したスペースが目立つと支障がある場面、もしくは目立ってほしくないシチュエーションが、誰にでもあります。
たとえば、友達の結婚式に参加したり、進学や就職でたくさんの人に会ったりすることが予想されるケースです。実際に、このような場面で、「すき間を、目立たないようにしてほしい」と希望する方は少なくないのです。
この場合、わたしのクリニックでは、仮歯を使って隙間を目立たなくします。たとえば、仮歯を歯に接着したり、矯正装置のワイヤーに仮歯をくくりつけたりします。
すき間の大きさや、治療の段階によって、使い分けが必要です。
仮歯を使用した場合、仮歯が歯の動きを邪魔するケースもあります。そのため、仮歯の調整が必要になったり、矯正の処置時間が長くなったりするなどのデメリットもあるのです。そのため、すべての方に対して、最初から仮歯を用いることは控えるようにしています。
しかし、このように、抜歯のすき間を目立たなくする方法はあります。そのため、すき間があることで支障を感じる方は、主治医に相談することがオススメです。
まとめ
歯並びや噛み合わせを整える際、歯の抜歯が必要になるかもしれません。
ただし、抜歯してしばらくの間は、傷口が痛々しい状態だったり、すき間が歯抜けのように見えて目立ったりすることがあるので注意が必要です。
そのため、抜歯を行うタイミングや、抜歯でできたスペースが極端に目立つ際の対応について、主治医と事前に相談することが大切です。そうすることで、矯正治療前の不安もやわらいだり、治療中に不快な思いをせずにすんだりするものと思います。