乳歯は、通常6ヶ月から生え始めます。すべての乳歯が生え終わるのは、2歳半が過ぎてからです。
この時期には、お子さんの噛み合わせは一定せず、受け口(または、反対咬合)の格好で噛んだり、下アゴを大きく歪(ゆが)ませた状態で噛んだりするのが特徴です。
そして、この時期に見つかる受け口の噛み合わせは、単に下アゴの位置をずらしているだけで、これからお子さんが成長するとともに、自然に改善することも多いのです。
そのため、たとえ1歳半検診でお子さんに受け口の噛み合わせであったとしても、過度に心配したりせず、そのまま経過観察するだけで十分なのです。
ここでは、3歳までのお子さんが受け口の格好をしたり、顎を大きく歪(ゆが)ませる格好をしたりする理由について説明します。
小さいお子さんが受け口の格好をする理由
歯ぐきの違和感
お子さんが受け口になる理由として、最初に挙げられるのが「歯ぐきのムズムズ」です。
生後4~5ヶ月になると、夜泣きが激しくなったり、急にぐずったりするようになります。また、口の中に何でも入れて、噛もうとするのもこの時期です。
その1つの原因として考えられているのが、「歯ぐきがムズムズ」なのです。乳歯が生え始める際、お子さんが「むずがゆさ」や、「違和感」を歯ぐきに感じるからです。
そして、口の中に物を入れて噛もうとするのも、この歯ぐきのむずがゆさを解消するためだったのです。
このように、前歯が生え始める時期になると、お子さんは歯ぐきをむずがゆく感じます。そして、受け口の格好をしたり、下アゴを横にずらしたりしながら、歯ぐきをこすり合わせようとするのです。
ただし、ほとんどのお子さんに見られるもので、決して異常なことではありません。そのため、まったく心配する必要はないのです。
歯の生える順序
受け口になる理由として、次に挙げられるのが「乳歯が生える順序」です。
生後半年が過ぎると、乳歯の前歯が生え始めます。下の前歯から生えはじめ、その後、上の前歯が生えてきます。
このように、前歯が先に生えてくるため、この時期、前歯だけで噛もうとするのが当然です。とくに、この前歯が生えそろう時期は、 離乳食が始まる時期に相当します。
そのため、下アゴを前方に出して食べ物を受け取ったり、上下の前歯だけで食べ物を噛んだり格好になりやすいのです。
ただし、この時期にお子さんが受け口の格好をしたり、下アゴを前方に出した格好で噛んだりすることは、決して異常なことではありません。
むしろ、最近では、正しい食べ方や飲み込み方を身につけるうえで、望ましい過程であることが分かっています。よって、この時期に見られる受け口の格好は、まったく心配する必要はないのです。
噛み合わせの高さ
お子さんが受け口になる理由として、最後に挙げられるのが「噛み合わせの高さ」です。
奥歯に乳歯が生えそろうのは、およそ2歳半になってからです。奥歯が生えそろっていないことで影響があるのが、「噛み合わせの高さ」です。
奥歯が生えそろっていない状態だと、噛み合わせは低くなってしまうからです。そして、噛み合わせが低いと、受け口の格好になりやすいからです。
たとえば、総入れ歯のお年寄りです。総入れ歯の方が入れ歯を外すと、受け口の格好になります。これは、入れ歯をはずして、噛み合わせが低くなったことが原因でおこります。
つまり、噛み合わせが低くなり、下アゴが通常よりも多く回転したために、受け口の格好になってしまったのです。
このように、奥歯の噛み合わせが低いと、受け口の格好になりやすいのです。そのため、この時期にみられるお子さんの受け口は、異常と決めつける必要はありません。
奥歯が生えそろった後、奥歯の噛み合わせが高くなると、自然に改善するケースが少なくないのです。
まとめ
乳歯が完全に生えそろっていない状態では、お子さんが受け口の格好をしたり、顎を大きく歪(ゆが)ませて噛んだりする状態は異常とはいえません。乳歯が生えそろうまでに見られる受け口の噛み合わせは、成長とともに自然と治る可能性が高いのです。
また、乳歯が生えそろった後、たとえば3歳児検診の際に受け口の状態を指摘されたとしても、決して手遅れということにはならないので安心してください。
ただし、3歳を過ぎても受け口の噛み合わせが改善しない場合、歯科医院で診察を受けることがオススメします。
そして、診察を受ける際は、子どもの歯並びの育成において実績のある歯科医院を選択することが大切です。そのような子どもの治療を安心して任せられる歯科医院を見つけたうえで、相談に行くようにしてください。