「受け口」の噛み合わせ異常は、多くの場合、すでに乳歯の段階で確認することができます。そのため、矯正相談に来るときのお子さんの年齢も、2歳もしくは3歳と非常におさないことが少なくありません。
また、実際の受け口治療についても、早くは、お子さんがまだ3〜4歳の時点で、矯正治療を開始するケースがあります。
しかし、すべてのお子さんに対して、極端に幼い段階から行う早期治療を開始するとはかぎりません。前歯が永久歯にある程度交換するのをまって治療を開始しても十分なケースがあるのです。
では、極端に早い段階で治療を開始する必要があるお子さんと、小学校にあがるのをまって治療を開始してもよいお子さんでは、何が異なるのでしょうか? 何によって、早い段階で治療を開始する場合と、遅く開始するケースを判断しているのでしょうか?
実は、受け口の重症度の違いによって判断しているのです。つまり、重症度の高い受け口については、早い時点から早期治療を行う必要があるのに対して、重症度の低い受け口の場合、お子さんが小学校にあがるのをまって治療を開始しても遅すぎることはないのです。
受け口の2つのタイプ
お子さんの受け口は、その重症度によって、「骨格性(こっかくせい)」、または「歯槽性(しそうせい)」の2つのタイプに分類することができます。
受け口の重症度について正確に診断を行うために、最初に行うことは、セファログラムと呼ばれる特殊なレントゲン写真を用いた分析です。このレントゲン写真を分析することで、お子さんのアゴ骨の形態やサイズ、そして上下アゴ骨の位置関係について測定することができます。そして、どの程度異常があるか知ることができるのです。
このようにして、お子さんの受け口が、骨格性なのか、歯槽性なのかについて判断するのです。また、このようにお子さんの受け口の重症度によってタイプ分けすることで、治療の緊急性や、必要となる治療についても知ることができるようになるのです。
骨格性の受け口
骨格性の受け口とは、骨格的な問題がある受け口のことです。つまり、上下のアゴ骨のサイズに大きな差があったり、上下のアゴ骨の位置関係に問題があったりする受け口のことです。
そのため、骨格性の受け口は、比較的重症度が高いタイプの受け口であるということができます。なぜなら、骨格的な問題がすでに発生しているため、単に歯を移動するだけで受け口の問題を改善することができないからです。このタイプの受け口を改善するためには、骨格的な問題にもアプローチする治療が必要になるからです。
たとえば、上のアゴ骨を積極的に大きくしたり、前方にけん引したりする治療です。小児期にみられる骨格性の受け口では、下アゴが大きいというよりことより、むしろ上アゴが小さいことが原因になっているケースが非常に多いといえます。そのため、このような骨格性の受け口の治療では、骨格の問題に合わせて、骨格の問題にアプローチできる治療を選択する必要があるのです。
また、骨格性の受け口をもつお子さんの場合、早期に矯正治療を開始することが望まれます。中でも、アゴ骨のサイズに異常があったり、上下アゴ骨の位置関係に大きなアンバランスが認められたりする場合には、3〜4歳のお子さんにも矯正治療の開始を提案する場合がありえるのです。
なぜなら、受け口の状態をそのまま放置すると、骨格的なアンバランスがさらに悪化する心配があるからです。
骨格的なアンバランスが大きく悪化すると、その後に行う治療が大変になるだけでなく、顔の形にも悪影響がでる心配があるからです。そして、いわゆる「しゃくれ」といわれる顔の印象が、強く出てしまう心配があるのです。
歯槽性の受け口
歯槽性の受け口とは、骨格的な問題がない受け口のことです。つまり、上下のアゴ骨のサイズや、上下アゴ骨の位置関係に異常がないタイプの受け口です。
歯槽性の受け口の主な原因となっているのは、「歯の傾き」です。上アゴの前歯が後ろに傾斜していたり、下アゴの前歯が前方に傾斜したりしていることが原因となって、受け口の噛み合わせになっているのです。
このタイプの治療は、急いで開始する必要はなく、小学校にあがるのをまって矯正治療を開始することができます。なぜなら、歯槽性の受け口は、比較的重症度が低いタイプの受け口といえるからです。骨格的な異常がないタイプであるため、骨格にアプローチする治療は必要ではありません。お子さんの前歯の傾きを改善するだけで、受け口の問題を解決することができます。
また、歯槽性の受け口の場合、前歯の傾きを改善するだけで、口元の様子もキレイに仕上げることができます。なぜなら、これも骨格的な異常がないからです。上下アゴ骨のバランスに問題がないため、前歯の噛み合わせを改善するだけで、自然に良い口元をつくることができるのです。
しかし、小さなお子さんのアゴ骨は、まさに成長中の段階です。お子さんの受け口が、たとえ歯槽性であったとしても、完全に注意をおこたってはいけません。なぜなら、突如として骨格性の受け口に移行するケースがあるからです。
そのため、お子さんの受け口が歯槽性のタイプであったとしても、口の中の様子を定期的にチェックすることが非常に重要なのです。そして、万が一にも歯槽性の受け口に移行する様子があれば、急いで受け口治療を開始する必要があるのです。
まとめ
お子さんに受け口の噛み合わせ異常がある場合、できるだけ早期に専門家の診断を受けることが大切です。
なぜなら、お子さんの受け口が骨格性の場合、早期に治療開始することが望ましいと判断できるからです。また、そのまま放置するすると、極端に悪化するケースが心配されるからです。
また、お子さんの受け口が歯槽性の場合でも、定期的に専門家のチェックを受けることが必要です。なぜなら、歯槽性の受け口の中には、突然、骨格性の受け口に移行するものがあるからです。
よって、お子さんの受け口に気づいた方は、一度、専門家の診断を受けることがオススメです。ただし、その際は、子どもの歯並び育成において実績のある歯科医院であることを確認したうえで、相談に行くようにしてください。