最近では、インターネットや雑誌を調べることで、矯正治療についても多くの情報を知ることができます。そのため、自分の歯並びや噛み合わせの状態について、場合によっては治療方法についてまでも、あらかじめ調べたうえで矯正相談にくる方が少なくありません。
ただし、事前に「自分とそっくりな歯並び」もしくは「自分にも、可能な治療」と判断していたものが、実際には検討違いであるというケースが少なくないのです。
なぜ、このような期待外れが発生するのでしょうか?
それは、矯正治療の治療計画を立てる際には、複数の判断基準を、同時に当てはめて診断する必要があるからなのです。ここでは、矯正医が治療計画をたてる際に用いる判断基準について説明します。
矯正治療の目的
矯正治療の目的は、キレイな歯並びにすることだけではありません。口の役割がしっかり機能するようにしたり、また、その状態が長期的に維持できるにしたりすることも重要な目的なのです。
単に歯のデコボコを改善し、すべての歯を整列するだけなのであれば、矯正治療を開始するにあたって治療計画をたてることは、それほど難しいことではないのです。なぜなら、単に歯のデコボコを治すだけの場合、アゴ骨を拡大し、歯を並べるだけで良いからです。
しかし、実際の矯正治療では、歯を並べることだけでなく、噛み合わせについてもしっかり考慮し治療を行ったり、治療後の維持についても考慮したうえで、治療を行ったりする必要があるのです。
単に歯を並べるだけの治療を行っただけでは、当然、見た目のうえでも、機能のうえでも満足できる仕上がりには決してなりません。また、単に歯を並べるだけの治療でつくった噛み合わせは、簡単に壊れてしまうことが心配されるのです。
そのため、矯正治療を開始する前には、必ず、しっかりとした分析を行ったうえで、適切な治療計画をたてる必要があるのです。
矯正治療計画のための判断基準
歯のデコボコの程度
矯正治療の治療計画をたてる際の基準として、最初に挙げられるのが、「歯のデコボコの程度」についてです。歯のデコボコを改善して、キレイに並べるためには、歯とアゴ骨のサイズについて考えることが必要です。
たとえば、アゴ骨のサイズが不足する場合、すべての歯を無理に並べようとしても、前歯が大きく前方に倒れたり、アゴ骨から歯根かはみ出たりする心配があるからです。
そのため、矯正治療を開始する前には、しっかりと模型分析を行って、そのまま全部の歯を並べることができるのか、それとも無理になってしまうのかについて判断する必要があります。このように、矯正治療を開始する前に、歯の大きさとアゴ骨のサイズについてしっかり診断することで、治療を安全に行うことができるようになるのです。
そして、そのまま歯を並べようとすると、無理になってしまうと判断される場合には、別の手段について相談する必要があります。たとえば、歯を抜いたり、全部の奥歯を後方に移動したりするなどする方法です。
このようにして、歯を並べるためのスペースをつくることによって、安全に歯のデコボコを改善することが可能になるのです。
上下アゴ骨のバランス
矯正治療の治療計画をたてる際の基準として、次に挙げられるのが、「上下アゴ骨のバランス」についてです。つまり、上下アゴ骨のサイズや、位置関係について確認します。
たとえば、出っ歯(または、上アゴ前突症)の矯正治療についてです。
最近の出っ歯は、「上アゴのサイズが大きい」または「上アゴが前方に出ている」ことが原因となっているケースは非常に稀(まれ)です。逆に、「下アゴのサイズが小さい」もしくは「下アゴが後ろに引っ込んでいる」ことが原因であることがほとんどです。
そして、その中でも、とくに上下アゴ骨のアンバランスが大きい場合、注意が必要です。なぜなら、上下アゴ骨のアンバランスが大きい状態で、上下の歯を正常に噛ませることは困難だからです。なぜなら、上下アゴ骨の間にアンバランスがあることに伴って、上下の歯の位置関係にも問題が生じてしまっているからです。
そのため、上下の歯をしっかりと噛み合わせるためには、下アゴのサイズを大きくしたり、下アゴの位置を前方に移動したりする必要があるのです。
口元の様子
矯正治療の治療計画をたてる際の基準として、最後に挙げられるのが「口元の様子」についてです。
なぜなら、歯並びや噛み合わせに問題があると、口元の様子にも悪影響を及ぼすからです。また、歯並びや噛み合わせを変えることで、口元の印象も変えることもできるからです。
たとえば、ごぼ口(または、両顎前突症)の矯正治療についてです。ごぼ口とは、上下のアゴ骨のサイズが大きかったり、前方に出ていることが原因で、口元が極端に突出した格好になっている状態のことです。そのため、歯のデコボコもなく、上下アゴ骨のバランスも良好、しかし矯正治療が必要であるというケースがあり得るのです。
そのため、ごぼ口が問題となっているケースでは、積極的に歯を抜いて、前歯を引っ込める治療を計画します。そのようにすることで、口元の印象も大きく改善することができるからです。
このように、しっかりとした診断を行ったうえで矯正治療をすれば、口元の印象も大きく改善することが可能になるのです。
まとめ
矯正治療を行ううえで、適切な治療計画をてることが最も大切です。なぜなら、治療計画が不適切だと、満足できる治療結果には決してならないからです。また、不適切な治療計画でつくった噛み合わせは、長期的に良い状態を維持することが困難だからです。
よって、これから矯正治療を考えている方は、適切な治療計画をしっかりたてることができる歯科医院を選択することが大切です。そして、そのような安心して治療を受けることができる歯科医院を見つけたうえで、矯正相談に行くようにしてください。